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メコン河下流本流ダム

増加傾向にある流域国の電力需要を満たすため、メコン河下流域において大規模発電ダムを建設する各国政府の意欲が再燃しています。支流で数々の大規模ダムが計画または建設されているだけでなく、2007年からはメコン河下流における本流ダム計画が復活してきました。

プロジェクト名
パクベン、サヤブリ、パクライ、ルアンパバーン、ドンサホン、バーングム、パモン、サンボーの各ダム
(所在地:ラオス、タイ、カンボジアのメコン河下流域)
各事業名と概要       
事業名 設備容量 事業の主要目的 事業主体企業(国名) その他
パクベン(ラオス北部) 1,230MW(メガワット) タイへの売電 大唐国際発電(ダタンインターナショナル)(中国) 2007年8月、実行可能性調査の覚書(MOU)署名。
サヤブリ(ラオス北部) 1,260MW* タイへの売電 チョーカンチャン(タイ) 2007年5月4日、実行可能性調査のMOU署名。調査は署名から30ヶ月以内に完了予定。建設開始は2011年、操業開始は2015年に予定されている。費用は推定17億USドル。
パクライ(ラオス北部) 1,320MW* タイへの売電 中国水利水電建設集団公司(Synohydro)および中国電子進出口総公司(CEIEC)(中国) 2007年6月11日、実行可能性調査のMOU署名。国内への電力供給およびタイへの輸出を予定。費用は推定17億USドル。
ルアンパバーン(ラオス北部) 1,410MW* - PV Power Engineering Consulting Joint Stock Company(ベトナム) 2007年10月14日、実行可能性調査のMOU署名。費用は推定18億USドル。操業開始は2013‐4年を予定
ドンサホン(ラオス南部) 240MW * タイ、カンボジア、またはベトナムへの売電 メガ・ファースト・コーポレーションBhd(MFCB)(マレーシア) ラオスの4つの事業の中で最も検討プロセスが進んでいる。2006年3月に実行可能性調査のMOU署名。費用は推定3億USドル
バーングム(タイ) 2,175MW - - タイのエネルギー省の委託を受けて、現在、Panya Consultants Co. Ltd.およびMahanakhon Consultantsが実行可能性調査を実施中。
パモン(タイ) 1,482MW - -
サンボー(カンボジア) 3,300MW * または 465MW タイまたはベトナムへの売電 中国南方送電網(CSGP) 2006年10月31日、実行可能性調査のMOU署名。調査はCSGPの子会社であるGuangxi Grid社により行われており、2つの設計オプションが検討されているという。
状況
8つの「流し込み式(Run-of-River)」ダム(ラオスのパクベン、サヤブリ、パクライ、ルアンパバーン、ドンサホン、タイのバーンクムとパモン、カンボジアのサンボー)の調査を行う契約が署名されています。
プロジェクトの経緯
1950年代後半から旧メコン委員会(メコン河下流域の水資源開発計画の調査・立案その調整を目的に設立された政府間機関)は、メコン地域における発電および灌漑ダムを推進するため、建設地を特定するための調査を行ってきました。1960年代までに同委員会は、メコン河下流における7つの大規模多目的連続ダムの計画を作成しています。これらは、水資源開発(1970年)プランのなかで提案されたもので、ダムの目的は水力発電・洪水対策・灌漑・航行の向上でした。「メコン・カスケード」と呼ばれるこれらのダムは、合わせて23,300MWの電力供給能力を持ち、メコン河の年間流水量の3分の1以上を貯水することができ、メコン河下流のほとんどを一連の大貯水池に変容させるはずでした。しかし、事業は膨大な社会・環境影響に関する懸念とインドシナ戦争のため中断し、予備計画の段階以上に進んだことはありません。
元の計画に膨大な住民移転に伴う影響が予想されたことから、メコン委員会は修正水資源開発プラン(1987年)で、以前の計画よりも規模が小さい多数の本流ダムを提案しています。総電力供給能力は23,250MWです。
その後、メコン河委員会の再編につながった「メコン協定」署名の数か月前、1994年に暫定メコン委員会事務局は、メコン河下流に最大11基のダムを建設するための報告書を出しました。1970年の水資源開発プランで考えられていたより大きなダムの代替案として、1994年調査は一連の「流れ込み式」ダムを提案しています。これらのダムは高さ30メートルから60メートルで、貯水池は全体でメコン河600キロにわたり、推定57,000人を移転させるという内容でした。1994年報告書は過去の計画の情報を使いながら潜在的なダム建設地を特定、それらに優先順位を付け、総発電能力13,350MWの9つのダムを提案しています。
懸念される問題点
個別事業の詳細な環境社会評価は、未だ実施されていないか、または公表されていません。しかし多くの既存の調査によれば、これらのダムが、メコン河の豊富な資源に依存している数千の流域のコミュニティーに深刻かつ広範な影響を与えることを示しています。
1990年代暫定メコン委員会事務局も、メコン河での漁業に対する本流ダムの潜在的な影響のレビューを研究者に委託しています。報告書は、従来の計画は漁業に関する不十分なデータしかないうえ、事業の優先順位の信頼性が問題、といった点を指摘、ダム建設による総合的な影響は甚大であろうと予測しています。特に、魚の生息地の消失が招く漁獲量の低下、生物多様性の減少、魚の回遊の阻害によるメコン河下流全体における漁獲高減少を懸念しています。
2004年にメコン河委員会が出版した調査報告書(Distribution and Ecology of Some Important Riverine Fish Species of the Mekong River Basin. MRC Technical Paper No. 10. 2004.)も、灌漑、水力発電、洪水対策を目的として建設されたダムを、「魚と漁業の将来への決定的な脅威」としています。また、「ダムの悪影響はきちんと管理すれば緩和できる」という主張に対し、別のレポートでは、「現時点において、漁業に対するダムの悪影響を緩和する効果的な対策の例は、この地域には存在しない」とも言われています。

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