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メコン河開発メールニュース2026年1月21日
ミャンマーの活動家グループ、ジャスティス・フォー・ミャンマー(JFM)は、2025年にイギリスの年に海外領土であるケイマン諸島とバミューダの両政府に、意見書を提出していました。MOGEはイギリスの制裁対象であるにも関わらず、タイのエネルギー企業PTTEPがケイマン諸島で子会社を設立し、さらにその会社がケイマン諸島とバミューダで子会社を設立し、MOGEとの合弁ビジネスを続けているためです。
以下にこの件についてのJFMのプレスリリースを翻訳で紹介します。
ミャンマーのガス採掘では、日本の官民も2023年4月まで、海上のイェタグン・ガス田に関与していました。ミャンマーでの中国の資源確保が注目されがちですが、ガスに関しては、採掘された半分以上が隣国タイに輸出され火力発電所の燃料となっています。そこでは、J-Powerなどの日本企業がタイの独立系発電者(IPP)の一角を占めるなど、日本企業も関係しています。
今回、JFMは、英国の領土内の問題を指摘していますが、PTTEPは日本からも多くの投資を受けています。例えば、私たちの年金の投資を管理する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2025年3月末時点で、PTTEPの株式を約40億円分以上保有しています。PTTEPは2022年末に、ミャンマーへの投資が理由でノルウェー年金基金の投資除外対象となっています。2025年12月8日にはスウェーデンの年金基金AP7も、PTTEPを除外対象にしました。また、ケイマン諸島とバミューダはいわゆるタックスヘイブン(租税回避地)で、こういった場所での企業活動は、リークがない限り、本来公開されるべき情報が隠されるといった問題も抱えています。
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バミューダ諸島とケイマン諸島は、JFMの法的意見書提出を受け、対ミャンマー制裁違反が疑われる石油会社に対して行動をとるべき
2025年11月3日
イギリスの海外領土に拠点を置く複数の石油会社が、2021年のミャンマー軍による未遂クーデター以降、違法な軍政に数億ドルもの収益をもたらしており、ミャンマーに対するイギリスの制裁措置に違反している疑いがある。
これらには、軍政支配下にあるミャンマー石油ガス公社(MOGE)とタイのエネルギー大手PTTEPとの間の2つの合弁事業が含まれる。これらの事業は、ジャスティス・フォー・ミャンマーが当局に情報提供してから18カ月経った今もイギリスの海外領土を拠点に続いている。
MOGEはミャンマー軍政にとって最大の外貨収入源 [*1]であり、ミャンマーの人びとに対する戦争犯罪作戦の継続に必要な航空燃料や武器を入手するための資金を軍政に提供している。
バミューダとケイマン諸島の当局は、これらの石油会社を捜査し、制裁違反について責任を追及し、領土内におけるミャンマー軍政の関わる事業を終わらせることで、イギリスの制裁を全面的に実行するべきである。
ジャスティス・フォー・ミャンマーは2024年4月にケイマン諸島とバミューダの両政府に法に基づく意見書を提出し、これらの石油会社が Myanmar (Sanctions) (Overseas Territories) Order 2021 のもとの UK Myanmar (Sanctions) Regulations 2021 (the UK Regulations) に違反している疑いがあることを詳述した。
ジャスティス・フォー・ミャンマーはこの意見書で、規模も利益もミャンマーで最大級のいくつかの沖合ガス田からガスを採掘、輸送する以下の企業が制裁に違反している疑いがあると述べた。
* PTTEP Offshore Investment Company Limited (PTTEPO) は、タイの上場企業でタイ国が一部を所有するPTTEPの子会社である。PTTEPOはケイマン諸島で設立され、イギリスの海外領土でMOGEとの少なくとも2つの合弁事業に多額の投資をしている(下記参照)。
* PTTEPOの合弁事業の1つが Andaman Transportation Limited (ATL) である。これはケイマン諸島で設立された会社で、ゾーティカ田(沖合のブロックM9およびM11)からガスをタイに輸送するパイプラインを運営している。ATLはPTTEPOが80%、MOGEが20%を所有する。ATLの取締役のうち2人がMOGEから来ており、1人はMOGEの財務部長、もう1人は計画部長である。
* PTTEPOのもう1つの合弁事業はバミューダを拠点とする Moattama Gas Transportation Company Limited
(MGTC) である。MGTCはヤダナ田(沖合のブロックM5とM6)からガスをタイに輸送するパイプラインを運営している。MGTCはPTTEPOが63%、MOGEが37%を所有し、取締役にはMOGEの代表2人が含まれる。
* Unocal Myanmar Offshore Company Limited はバミューダを拠点とし、米国石油大手のシェブロンの子会社である。2024年4月にミャンマーから撤退するまで、同社はヤダナ・ガス事業とそのパイプライン会社MGTCの筆頭株主で、41.1%を保有していた(2022年7月のトタルエナジーズ撤退時の28.26%から増加)。同社は現在もバミューダで登記されている。
イギリスの制裁がMOGEに適用された理由
2021年、イギリスは国家統治評議会(SAC)に制裁を科した [*2]。SACはミャンマー軍による違法未遂クーデターの一環で設立された軍政の行政、立法、司法機関である。
SACはMOGEを所有、支配し、MOGEから利益を得ていた。これは、イギリスの制裁がMOGEにも適用されることを意味する。したがって、イギリス領土内に登記のあるすべての企業はMOGEとの取引を禁じられるべきだった。
2025年7月31日、違法未遂クーデターの一環として、また予定される見せかけの選挙を前に、軍政はSACを解散させ、「国家安全保障平和評議会(SSPC)」に改名した。
SSPCはイギリスの制裁対象である人物 [*3]に支配されている。議長のミンアウンフラインと、副議長のソーウィンである。SSPCの事務局長はアウンリンドウェとイェウィンウーの2人で、同じくイギリスの制裁対象である。
石油とガスは軍政による残虐行為の資金源
2021年2月の違法な未遂クーデター以降、ミャンマー軍は全国で恐怖作戦を展開し、大量殺人、恣意的逮捕、無差別空爆、レイプや性的暴力、拷問、村落の組織的な焼き討ちを行なってきた。子どもが犠牲になることも増えている。
こうした国際犯罪は石油・ガス部門からの収益を資金としてきた。ミャンマーの沖合ガス田からガスを輸出するパイプライン企業は、軍政への資金の流れの継続に中心的な役割を果たしている。2021年から2023年までの3年間で、パイプライン企業であるMGTCとATLは1000兆BTU以上のガスをタイに供給した。
PTTEPの財務諸表をジャスティス・フォー・ミャンマーとイギリスのジャーナリズム組織であるファイナンス・アンカバード(Finance Uncovered)とが分析したところ、MGTCとATLは2021年から2024年までにパイプラインから10億7800万米ドルの収益を上げていた。少数株主であるMOGEの収益は2億3900万米ドルだったはずである。
バミューダとケイマン諸島は守秘法域であるため、ATLとMGTCは会計情報をいっさい公表しない。しかし、リークされた財務諸表に基づいてジャスティス・フォー・ミャンマーとファイナンス・アンカバードが推計したところ、軍政は2021年から2024年にかけて数億ドルの所得税収入も得ていたとみられる。
リークされたMGTCとATLの財務諸表の分析によれば、未遂クーデター前の2018年度と2019年度には、両社はミャンマーに5億7000万米ドル以上の税金と配当金を支払っていた。
ジャスティス・フォー・ミャンマーのヤダナーマウンは次のように述べた。
「ミャンマー軍の違法な未遂クーデターから5年近くが経った今も、ミャンマー軍政と関係する企業がイギリスの海外領土で事業を行なっていることは容認できない」 「これらの企業は、子どもを虐殺し学校や病院を爆撃しながらもまったく罰せられない違法な軍政に資金を提供している」 「私たちがバミューダとケイマン諸島の当局に法的意見書を提出してから18カ月が経った。行動が遅れれば命が奪われる。当局は今こそ行動する必要がある」 「バミューダとケイマン諸島の当局は、イギリスの制裁を実行し、これらの企業を徹底的に捜査し、自国領土内で違法なミャンマー軍政が事業を進めるのを阻止しなければならない」
脚注:
[*3] https://www.gov.uk/government/publications/the-uk-sanctions-list
(文責:メコン・ウォッチ)