ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > 【ナムトゥン2ダム・キャンペーン】谷垣財務大臣への手紙のフォーマット
2005年○月○日
財務大臣 谷垣 禎一 様
ラオスのナムトゥン2水力発電プロジェクトに関する要請書
ラオスのナムトゥン2ダム計画は、多大な環境社会影響や経済的なリスクが懸念されるプロジェクトで、日本が第二の出資国となっている世界銀行が支援をするかどうかで、過去十年以上にわたって、国際的に論議を呼んできました。
【この部分に、ウェブサイトやセミナーを通じてご自身が問題だと感じた点をご記入下さい。グループなどで話し合った結果を皆さんのことばで書いて頂ければと思います。もし書き方が思いつかない方は下記の例文を参考にしてみてください】
それにも関わらず、世界銀行グループは、IDAによる部分リスク保証(5000万ドル)及び融資(2000万ドル)、MIGAによる保証(1億ドル)の供与を検討しており、2005年1月28日には融資審査を開始しました。近く、理事会での決定が行われると見られています。一方、日本がアメリカと並んで最大の出資国であるアジア開発銀行は、公共セクター融資2000万ドル、民間セクター融資5000万ドル及びで政治的リスク保証5000万ドルの供与を検討しています。
私は、ラオスの人々の生計手段を奪い、環境破壊を進めるナムトゥン2ダム計画に、世界銀行やアジア開発銀行が支援を行うべきでないと考えます。
したがって、日本政府として、近く行われる世界銀行とアジア開発の理事会において、日本の理事が同計画に対する反対の意思を表明するよう要請します。
以上の要請をご考慮いただいた上で、適切な対応をよろしくお願い申し上げます。
以上
【氏名/団体名・代表者名】
【連絡先】
ナムトゥン2ダム計画の水没予定地では、ダム計画を前提とした大規模な森林伐採が行われました。プロジェクトの環境・社会影響評価は、こういった森林伐採のあとに行われ、この地域の森林劣化の原因は村人の焼畑だと結論付けています。さらに、村人は伐採によって生活の糧を失った上、地域の開発もすべてダムを前提にしているため、村人はダムの補償に期待せざるを得ない状況におかれています。ナムトゥン2ダム計画は「貧困削減」を目標に掲げていますが、ラオスの人々をより貧しくするプロジェクトなのではないでしょうか。
ナムトゥン2ダム計画については、その開発プロセスの問題が指摘されています。1993年から行われた大規模な伐採の後に、環境影響評価や住民の合意形成が行われました。また、1995年に、伐採会社による住民移転が行われました。世界銀行がこのようなプロジェクトに融資することになれば、自らの政策違反を問われることになります。
ナムトゥン2ダムが建設され、ナカイ高原の450平方メートルが水没すれば、アジア象やハジロモリガモなど、絶滅が危惧されている希少な動植物の生息地が破壊されます。これらの貴重な生態系への悪影響は、一度ダムが建設されてしまえば、回復は不可能です。
ナムトゥン2ダムはナムトゥン川の水を堰き止めて貯水池を作り、発電後の水はセバンファイ川に転流されます。水位が低下するナムトゥン川と上昇するセバンファイ川では、魚の生息地が破壊され、回遊パターンが妨害されるため、多くの在来種の絶滅が危惧されています。
ナムトゥン2ダム計画によって、もともとナカイ高原に住んでいた約6200人の人々が移転を強いられます。 現在、実施企業であるナムトゥン2電力会社が進めている住民移転計画のパイロット村では、焼畑農業と水田耕作を行っていた人々が商品作物の栽培や漁業など慣れない生業を営まなければならないという状況が報告されており、移転後の生活再建は適切に行われていません。
ナムトゥン2ダムの発電後の水が転流されるセバンファイ川とその支流で生活を営む12〜15万人の人々が、転流による増水によって、漁業被害、乾季に耕作する河岸の畑の通年水没などの影響を受けることになります。これらの被害に対する補償は、ダムによって利益を得るラオス政府や出資企業が負うべきですが、ダムの収益からではなく、世界銀行による新たな融資で補償しようとしています。そうなれば、ラオスの国民は更なる債務を背負うことになります。
世界銀行はダムからの電力をタイに売った収入はラオスの貧困削減につながると謳っています。しかし、世界銀行が同じ謳い文句で石油開発を支援しているチャドでは、現地政府のガバナンスの問題から、プロジェクトの利益を貧困削減につながる分野に配分することに失敗しています。ナムトゥン2ダムに限っては成功するとどうして言えるのでしょうか。また、ラオス国営電力公社も出資しているナムトゥン2電力会社が民間銀行などからの8億5000万ドル以上の借金を抱え込むことで、重債務貧困国のラオスの財政リスクは高まることになります。
ナムトゥン2ダムで発電される電力は主にタイに輸出されますが、タイでは発電能力全体の3分の1にあたる7500メガワットが余剰電力です。タイ発電公社がナムトゥン2ダムから購入する電力料金は、タイ国内の独立発電事業体に支払っている額よりも10%程度高く、タイの国民は無駄な電気料金を負担することになります。また、ナムトゥン2ダムの電力を買うことになれば、タイ国内での環境への負荷が小さい再生エネルギーや自然エネルギーの開発が妨げられることになります。
過去10年間に、ラオスではナムソン導水プロジェクト(ADB融資)、トゥンヒンブンダム(ADB融資)、ナムルックダム(日本の円借款とADB融資)、ホアイホーダム(韓国企業の投資)といったダムが建設されてきました。これらのダムが引き起こした環境社会問題はいまだに解決に至っていません。ラオス政府の大規模水力発電プロジェクトの管理能力に疑問がある中で、ナムトゥン2だけは成功するとは言えないのではないでしょうか。
ナムトゥン2ダムは、「社会の支持」や「代替案の調査」など、世界ダム委員会の7つの戦略的優先事項のうち6つに違反しています。