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ホーム > メコン河と人々 > メコンの環境を守る > セーブ・ザ・メコン・キャンペーン> 「シーパンドン…メコン漁業の危機」 ステープ・クリッサナワリン写真展報告   

「シーパンドン…メコン漁業の危機」
ステープ・クリッサナワリン写真展報告                         

2009年3月12日〜28日、タイ・バンコクの繁華街にあるセントラル・ワールド・プラザ3階で、写真展「シーパンドン…メコン漁業の危機」が開催された(生態回復と地域連携を目指す(TERRA)、タイ・メコン民衆ネット(TPNM)、インターナショナルリバーズ、シーパンドン・プロジェクト共催)。

「シーパンドン」は、カンボジア国境に近い南ラオス・チャンパサック県に位置するメコン河本流の一地点の名称で、「四千の島」を意味する。その名が示す通り、多くの早瀬のほか、滝や湿地を配した複雑な生態系に恵まれ、広範な回遊をすることで知られるメコン河の魚類にとってきわめて重要な場所である。また、豊富な回遊魚に支えられた伝統的漁業はシーパンドン一帯に住む人びとの経済活動の柱となっている。

しかし、シーパンドンはまた、メコン河本流下流ダムのうちの一つドンサホン水力発電所(240〜360MW)の建設予定地でもある。2008年2月、ラオス政府は事業者であるマレーシア・メガファーストコープ社と事業開発合意書を結び、11ヶ所で計画されている本流下流ダムの中でも最も計画が進んでいることから、メコン河流域で活動する市民団体やNGOは警戒を強めている。シーパンドンにダムが建設されれば、地元の漁業への打撃は言うまでもなく、下流カンボジアに国境を越えた環境問題が生じることは不可避である。また、魚類の回遊が妨げられることからタイなど上流国の漁民への被害も憂慮されている。

タイの写真家ステープ・クリッサナワリンさんは、シーパンドンの漁民たちを3年間にわたって写真に取りつづけ、河とともに生きるラオス南部の人びとの生活と姿を力強くとらえた。「シーパンドン…メコン漁業の危機」はその作品の一部を展示し、メコン河の持つ豊かさや価値を多くの人びとに伝える試みであった。

3月12日の写真展初日には特別イベントが開催され、冒頭でタイのクライサック元上院議員が、「メコン流域国政府はいまだにメコン河を自分たちの勝手で開発できるものと考え、他の国々への悪影響をかえりみていない。このような状態では流域に住む数多くの人びとの生活が危ぶまれる。この写真展を通して、人びとの生活にとってメコン河がいかに重要な意味を持っているかを感じとってほしい」とあいさつした。

続くパネルに登場したステープさんはスクリーンで写真を紹介しながら、「漁業を営む『小さな人びと』の姿に惹かれ、この3年間に100日もシーパンドンに足を運ぶことになった」と語った。

また、主催団体の1つTERRAの共同代表で、2008年6月には東京や大阪でメコン河本流ダム開発について講演したこともあるプレムルディ・ダオルォンさんもパネルに参加し、「メコン河には1200種類以上の魚類が生息し、その生態や価値は解明されていない。ステープさんのとらえたシーパンドンですらそれほど豊かなメコンの一部でしかない。現下の経済危機でタイの電力需要は落ち込んでおり、ドンサホンだけでなくメコン河のダム開発自体を見直す好機になっている。『NGOの問題』ではなく、市民の多くが自分の問題として考えるべきだ」と訴えた。

写真展「シーパンドン…メコン漁業の危機」にはバンコク市民だけではなく、海外からの観光客も含めてたくさんの人びとが来場した。そして、ハガキ署名や寄付も多数集まる中、3月28日に無事終了した。ステープさんの作品の一部は、以下のURLで閲覧可能である。
http://internationalrivers.org/en/node/3348

 

ステープ・クリッサナワリン(Suthep Kritsanavarin)

20年近くにわたって東南アジアの環境・社会・人間をテーマに写真を取り続け、タイで最も精力的に活動する写真家の一人。作品は『ナショナル・ジオグラフィック(タイ)』、『ジャパンタイムズ』、『ニューヨークタイムズ』などで紹介されたことがある。「写真家は社会や文化を見つめ、世界・地域レベルで社会変革に寄与すべき」との強い信念のもとに活動し、撮影にあたっては現地で長い時間を費やし、写し出される人びとと信頼関係を築き、テーマへの理解を深める手法を信条とする。2004年に南・東南アジア一帯を襲ったツナミ被害に際しては、インドネシア・アチェとタイ・パンガーで被災した子どもたちに、写真によって自らの生活を記録する教育プロジェクトを実施。2008年5月にビルマ(ミャンマー)を直撃したサイクロン・ナギスの被害の時には、被害発生1週間後に現地入りし、サイクロンと軍政がもたらした惨状をカメラでとらえた。この時の「ビルマ・サイクロンの爪跡」で第5回Days国際フォトジャーナリズム大賞審査員特別賞を受賞(TERRAのHPなどの解説による)。


開幕のあいさつをするクライサック元上院議員


シーパンドンでの体験を語るステープさん(左端)


写真展開幕にはバンコク市民もたくさん訪れた。


会場に掲示された署名入りハガキ。市民の声は届くか?

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