ホーム > 資料・出版物 > イベント > メコン談話室 > 第50回 「はかる」ことが脅かす人びとの暮らし 〜ラオスの森林政策とタイのダム事業を事例に考える東南アジアの開発問題〜
「開発」の様々な局面では、豊かさや貧しさを「はかる」ことが行われています。しかし、私たちはメコン河流域の国々で住民と活動する中で、「はかる」ことに基づいて行われる開発が、ときに数値化できない人々の生活を破壊する現場を目の当たりにしてきました。
ラオスで建設中のナムトゥン2水力発電事業では、移転住民の生計について「移転から5 年間で所得を倍増する」という目標が掲げられています。しかし、それまで現金がさほど必要でない暮らしを支えた様々な生活手段は、「はかる」ことができないために、重視されず、ダムによって失われようとしています。
私たちはより精巧に調査を行うことで、効率的に資源を管理したり、開発によって生じた問題を解決できると考えがちです。しかし、ラオスのパクベン郡の事例では、土地・森林委譲事業の実施過程で「農地」と「森林」を「はかり」、線引きすることは、政策の本来の目的に反し、森林の劣化や土地不足による住民の貧困化につながりました。パクムンダムの事例では、政治的な力の強い側が主に行う開発の事前調査の精度を上げることだけでは、住民生活に負の影響を及ぼす問題の解決につながりませんでした。
今回の談話室では、ラオス北部で行われた「土地・森林委譲事業」と、タイ東北部に建設されたパクムンダムを事例に、「はかる」ことが人々のくらしにどのような影響を与えてきたのかをご紹介し、「はかる」ことが引き起こす開発の問題を参加者の皆さんと一緒に考えます。
※ 今回の発表は、財団法人トヨタ財団の2006年度研究助成事業『「はかる」ことがくらしに与える影響の研究〜東南アジア農村部を脅かす影の力〜』に基づく ものです。本研究の成果をまとめたブックレットは、メコン・ウォッチのウェブサイトからダウンロード可能です。