ブーラパー・パワー発電所は、タイ東部チャチュンサオ県で計画されている、ガスを燃料とするコンバインドサイクル発電所です。建設予定地の周辺住民は、環境影響や水利用の競合を懸念しています。また、長期にわたり発電可能量が過剰なタイで、化石燃料であるガスを使う新たな発電事業の必要性にも、市民から疑問が投げかけられています。2026年1月時点で融資先は不明ですが、これまで日本企業がタイでの火力発電所事業に数多く関与していることから、タイの市民は日本の民間銀行などが関与することを懸念しています。
化石燃料であるガスを主燃料とするコンバインドサイクル発電所。2018年電力開発計画(PDP2018改訂版)で認められた計画で、チャチュンサオ県パノムサラカム郡に建設予定です。
そもそもの計画は、PDP2007に基づく独立系発電事業者(IPP)の石炭火力発電所として落札されました。しかし、10年にわたる住民の粘り強い反対運動により建設されず、企業側は燃料をガスに転換し事業を継続した形です。
環境影響評価(EIA)では、発電所から半径5km圏内が影響を受けやすい区域とされ、ここには3つの行政区にまたがる12万ライ(1ライ0.16ヘクタール)超の農地が含まれています。米、キャッサバ、ゴムといった主要作物に加え、県の特産のマンゴーや、有機農業・キノコ栽培など高付加価値農業が展開されています。住民は、火力発電所から排出される酸性のガスの農作物の影響を懸念しています。
また、大量の水使用からくる、既存の水利用者との競合も心配されています。チャチュンサオ県はすでに慢性的な水不足に直面しています。EIA報告書によれば、ブラパー発電事業は稼働段階において1日あたり12,000立方メートルの水を使用します。事業に水を供給する企業が取水許可されている水路は、すでに複数の大規模産業や地域の水道事業体に利用されています。
発電所を近隣の変電所に接続するためには、高圧送電線の建設も必要です。送電線の建設は、少なくとも51世帯の農地の土地利用等に影響を与えると見込まれています。地権者グループは、このプロジェクトが公聴会や影響を受ける地域住民の意味ある参加に関する法的要件に違反している、として行政訴訟を提起し、訴えはタイ行政裁判所により受理されています(2026年1月時点の状況)。
タイの電力システムは、ここ数十年にわたり慢性的な発電過剰と高い予備率に直面しています。予備率は約36%で推移しており、ピーク時の電力需要に対してタイで推奨される15%という水準を大幅に上回っています。既存のIPP事業(ガス火力)も契約容量を十分に稼働できておらず、新設の合理性は乏しいとの指摘も出ています。
2025年に発表された民間の財務分析によれば、再生可能エネルギーへの完全移行シナリオの下では、タイの化石燃料発電設備のうち、容量ベースで最大67%が2040年までに座礁資産となると予想されています。
タイ・タクソノミーでは、新規のガス発電所(2023年12月31日以降に建設許可を取得したプロジェクト)を「赤」に分類しています。この分類は、こうしたプロジェクトが環境に配慮したものではなく、段階的に廃止していくべき対象であることを示しています。
ブルームバーグNEFの 最新調査によれば、新規の大規模太陽光発電設備の均等化発電原価(LCOE)は、2022年以降、新規のガスタービン・コンバインドサイクル発電所や石炭火力発電所をすでに下回っています。タイでは、再生可能エネルギーの発電コストが低下し、化石燃料を用いた発電所は不要かつ採算性も低いものになっていくと見るのが妥当でしょう。
タイは、2025年11月に温室効果ガス(GHG)の排出削減目標である「国が決定する貢献(NDC)3.0」において、ネットゼロを15年前倒しすることを 閣議で承認しています。この事業は、環境社会影響、財務面での不確実性、タイのネットゼロ目標との整合性への疑問など、さまざまな問題を抱えています。
キャンペーン
#ブラパーガス火力発電所の建設中止 #国民の電気料金負担の増加を止めよう(タイ語)
https://justpow.co/article-burapa-power/