2008年2月27日
このプレスリリースは、カンボジアNGOフォーラムが本日発行予定のものをメコン・ウォッチが和訳したものです。
カンボジアでは援助国・機関の支援によって幹線道路が次々に修復・拡幅され、道路周辺に住む人々の移転や貧困化が深刻な問題になっている。現在、日本政府のODA(無償資金協力)によって進められる国道1号線改修事業も例外ではない。本事業によって移転を余議なくされた住民は、不十分な補償や生計手段の喪失などに苦しんでいることが現地NGOの調査で明らかになった。NGOは、住民が抱える問題を放置することは国際協力機構(JICA)のガイドライン違反であると指摘する。
近年、カンボジアでは数々の道路修復事業が開発援助によって行われてきた。これら幹線道路網の構築は、メコン川流域国の経済統合と開発を目的とした「大メコン地域経済協力」(GMS)のもと進められている。GMSの基幹事業の一つである「南部経済回廊」は、タイの首都バンコクからカンボジアを抜けて、ベトナム南部のホーチミン市までをつなぐ。国道1号線はこのルートの一部である。
国道1号線改修事業において移転の対象となる人々は1800世帯以上にも及ぶ。本事業は、移転手続きおよび補償内容が不十分であるとNGOによって批判され続けてきた。過去の道路事業では、不適切な移転手続により地域社会の生活は多大な影響を被ってきた。カンボジアNGOフォーラム事務局長のチット・サムアット氏は、「開発事業は歓迎している。しかし同時に、事業が引き起こす環境社会影響に十分対処するためのメカニズムが導入されているべきだ。このようなメカニズムがなければ、国道1号線の改修事業は、カンボジアの過去の道路事業と同じ過ちを繰り返してしまうと懸念している」と述べた。
「家と店の引っ越しで借金を背負ってしまった」と、2007年8月に事業のために移転した女性は語った。彼女は政府が用意した移転地に住んでいる。「その上、(道路から離れた場所に移転した後は)誰も店に立ち寄らない。子どもたちは家族を支えるために学校をあきらめたよ。」
移転行動ネットワーク(RAN)が本日発表した調査報告書によると、国道1号線事業はJICAのガイドラインに違反している。日本の援助機関であるJICAは、当事業においてカンボジア政府に実施支援を行っている。JICAの環境社会配慮ガイドラインは、JICAが支援する事業において、被影響住民が適切な時期に十分な支援を受け、最低でも事業前と同水準の生活レベルを回復すべきことを定めている。
調査を行った現地NGOのひとつ、CD Camのカイ・レアック氏は、「カンボジアと日本政府、JICAが、周辺住民の直面する深刻な問題を解決することに調査結果が役立つことを願っている」と述べた。報告書は、被影響住民に対する公正な補償を支払い、事業においてJICAガイドラインを遵守するようカンボジア政府と日本政府に求め、具体的な対策を提言している。
「国道1号線改修事業の住民移転による影響に関する現地調査報告書」は、カンボジアNGOフォーラムのウェブサイト(www.ngoforum.org.kh)からダウンロードすることができる。
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