ホーム > 資料・出版物 > プレスリリース・要請文 > メコンオオナマズ、メコン本流ダム建設予定地で捕獲される
2009年11月12日
メコン河本流ダム一つドンサホンダムの建設予定地で、希少生物のメコンオオナマズが確認されました。メコン河流域を回遊しているこの大型魚が建設予定地を通過しているということは、ダムがこの魚の移動を妨げることを意味します。
また、ドンサホンダムの直下はイラワジイルカの生息地でもあり、絶滅が危惧される生物への影響がますます懸念されるところです。
2009年11月12日
世界自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧TA類に分類し、野生動物の取引を規制するワシントン条約で付属書1(注:研究目的での持ち出しに限り許可されるが、原産国・輸入国双方の許可が必要)とされているメコンオオナマズが、ラオスのメコン河本流ダム建設予定地で日本の研究者によって確認されました。メコンオオナマズはジャイアントパンダと同じ希少性とランク付けされており、魚類では最高です。
今回、捕獲されたメコンオオナマズは、全長252cm体重は推定で200kg以上あるものでした。捕獲されたのは10月22日の早朝、ラオス南部チャンパサック県でメコン河が多数の島の間を流れ分流しているシーパンドンと呼ばれる地域です。獲れた魚はこの島のひとつ、ドンサホン(サホン島)脇のフーサホン(サホン水路)で、地元の漁師がリーと呼ぶ大型の簗(やな)にかかりました。メコンオオナマズはメコン流域の各国で捕獲禁止となっています。この簗は特にメコンオオナマズを対象とする漁具ではなく偶然に捕獲され、現地に滞在していた日本の魚類研究者新村安雄氏によって写真撮影と記録されました。
メコンオオナマズは新村氏が現地に到着した時点で既に死んでいましたが、簗から下ろされた時点では生きていた模様です。荷車に乗せられて近くのハンサホン村に運ばれていくところを確認し、撮影を行いDNA分析用のサンプルを採取しています。サンプルはラオス国内に保管してあります。
メコンオオナマズが確認されたフーサホンは、ラオスのコーンの滝瀑布群の中で唯一水の流れが穏やかな場所で、水位の下がる乾季に河川内を大きく回遊するメコン河の魚にとって、非常に重要な移動経路です。しかし、ここにはメコン本流ダムの一つであるドンサホンダムの建設が予定されています。タイやカンボジアの漁業者はこのダムの建設に反対し、国際的な研究者の間でも慎重な検討を求める声が上がっています。今回の確認は、メコン河本流に建設されるドンサホンダムが、下流域カンボジアのトンレサップ湖からミャンマー、ラオス、タイの国境近くの上流まで回遊するメコンオオナマズの移動に障害となり、その生存を大きく脅かす可能性があることを示しています。
○メコンオオナマズとは
メコンオオナマズは大型になると体長3m、体重300kgを越える世界最大級の淡水魚で、メコン河流域を自然分布域としている。生態に関しては不明の点が多いが、メコン河中下流域で成長し、産卵期にはメコン本流を遡って上流に移動、タイ北部、ビルマ(ミャンマー)、ラオス国境付近で産卵を行うと見られている。大型で味覚も良いため漁獲圧が高く、近年は急激に数を減らしている。70年代にタイで数十匹捕獲されていたものが、現在は年に0-2匹程度となっている。2001年はカンボジアで1匹(時期不明)、タイで1匹(5月)に捕獲されている。
・ナショナルジオグラフィックマガジン
「メコンオオナマズ」
http://www.nationalgeographic.co.jp/animals/fish/mekong-giant-catfish.html
「ダムに脅かされる世界最大のナマズ」
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=90007&expand
○メコン本流のダム建設
メコン河本流には11か所にダム建設の計画がある(上流の中国部分を除く)。ダムによって多様な魚類の移動や生息地の破壊が起きることが懸念されている。
・メコン・ウォッチ
ドンサホンダムについて
http://mekongwatch.org/env/tb/lower/Donsahong/index.html
「ラオスのメコン河ダム建設計画に高まる不安」
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20080428_01.html
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