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2009年12月11日
駆け込みODA!
「大規模インフラは無償資金協力では支援せず」の事業仕分け結果はどこへ
カンボジア・第2メコン架橋建設事業 無償資金協力供与の可能性高まる
カンボジア・第2メコン架橋建設事業に対して、日本の無償資金協力が供与される可能性が高まっています。先月実施された事業仕分けでは、民主党の国会議員が「ハコモノ無償は、要求額の3分の1減、経済インフラについては円借款で」というとりまとめ結果を発表したばかり。もし、これだけ多額の無償資金協力を東南アジアの主要幹線道路を結ぶ橋梁という大規模経済インフラに投じれば、何のための事業仕分けだったのかと言わざるを得ません。民主党政権自らが仕分けの結果を骨抜きにする「駆け込みODA」であり、事業仕分けに対する国民の評価を裏切る行為と言わざるをえません。
第2メコン架橋建設事業は、カンボジアの国道1号線のメコン河渡河地点における全長5,420メートルの橋梁建設事業で、総事業費7,400万USドル(開発調査最終報告書(2006)、約65億円)です。無償資金協力は、通常数億円規模で、「基本的には収益性が低く、医療・保健、衛生、水供給、初等・中等教育、農村・農業開発等の基礎生活分野(Basic Human Needs: BHN)、環境および人造り分野であり、当該国の生活水準の向上を目指すもの」(外務省)です。
本事業に対する無償資金協力の供与は下記の点で疑問視されてきました。
・有償資金協力(円借款)でも、十分実施できる収益性がある:2006年の開発調査 最終報告書でも、借款による財務分析および提言がなされている。
・総事業費7,400万USドル(約65億円は、通常の無償資金協力の額をはるかに上回る(注1)。
・関連する国道1号線で、住民の生計回復等の立ち退き問題が解決しないうち、新たな無償資金協力を行うことは問題(注2)。
一方、内閣府の行政刷新会議が先月実施した事業仕分けでは、外務省が有償・無償を判断する基準があいまいな点、「タイド」であること(「紐付き」=日本企業が受注する)でコストを押し上げている点が大きな議論となり、結果、「ハコモノ無償資金協力は3分の1減」、「ハードからソフトへ」、「経済インフラについては円借款で」という明確な結論が取りまとめ役の民主党国会議員によって打ち出されました。
今回の第2メコン架橋への無償資金協力供与は、仕分けの結果で縛られる来年度予算にならないうちの駆け込み措置となります。来年度の予算が厳しければ今年度のうちに実施というのでは、危機的財政状況に対応するために事業仕分けという大ナタを振るった行政刷新会議や事業仕分けに関わった多くの人々の努力を無にする暴挙だと言えるでしょう。
「政治主導」を掲げる鳩山内閣の真価が問われています。
(注1)2007年度一般プロジェクト無償の一件あたりの平均額は4.7億円、最高額は22.73億円(カンボジア国道1号線第2期)。
(注2)さらに、カンボジア国内において激化する暴力的な立ち退きや言論統制の強化が生じている中、日本が大型のインフラ案件に無償資金協力を行うことが問題視されています。
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