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ビルマ・バルーチャン第2水力発電所改修プロジェクトへのODA供与
人権と環境面から6か国36団体が事前調査へ要望
日本政府は、軍事政権による圧政が続くビルマに対して、バルーチャン第2水力発電所改修プロジェクトのために35億円の無償資金協力を供与する方針です。事業の伴う強制労働などの人権問題、地元のカレニー族の反対、更にはアウンサンスーチー女史ら民主化グループの懸念がある中で、本プロジェクトがもたらす社会的・政治的影響を、事前にしっかりと調査した上で援助が適切かどうかを慎重に判断する必要があります。メコン・ウォッチでは、のべ9か国の団体・個人(36団体と30個人)の賛同と共に、2001年8月から実施される調査の中に、以下の点を盛り込むように2001年7月26日に外務省無償資金協力課の斎田伸一首席事務官に手渡しました。
本文は英語です。英語版は以下のページをご覧下さい。
○ [要請] ビルマ・バルーチャン第2水力発電所改修プロジェクトの調査に関する外務省への要望(英語版)
以下、日本語の要約版です。
目的:
バルーチャン第2水力発電所周辺の人権や社会・環境状況を把握するために、どのような調査内容と方法をとるべきかを提言する。
調査の範囲:
- バルーチャン周辺での軍による人権侵害(これまでの実状と改修に伴う影響の可能性):
軍隊の存在によって地域住民は搾取されたり、様々な人権侵害を受けたりする。改修工事に伴い治安維持のために軍が増強されることによって現地の人権状況はどう変わるかを予測必要がある。予測のためには、現在の状況と軍の強化の目処を調べる必要がある。
- 強制労働(これまでの実状と改修に伴う影響の可能性):
国際労働機関(ILO)が2000年の11月からビルマに対する制裁措置を実行している。軍をサポートするために強制労働が行われる可能性があるので、その状況と強制労働が使われないように措置を取る必要がある。
- 強制移住(これまでの実状と改修に伴う影響の可能性):1990年にバルーチャン第2水力発電所周辺で、いくつかの村が強制的に移住させられたと報告されている。2000年11月に公表された世界ダム委員会(WCD)の勧告は、まだ解決されていない環境・社会問題もきちんと解決する必要があると勧告している。強制移住の状況も調べて、どのような賠償・措置が必要かを考える必要がある。
- 農業への影響(過去の実態と将来の可能性):1998年に川の水位が激しく低くなったにも関わらず、水を発電所に優先するために、農民に取水の制限を行ったと報告されている。ダムの運用の点から、将来同様の水不足の問題が生じた場合、どのような対処策が考えられるかを調査すべきである。
- 周辺の村への電力供給実態:バルーチャン水力発電所はカレニー州の自然資源と人の労力を搾取し、その利益を全く違うところへ流す仕組みになっている。地域住民の利益とニーズも考慮すべきである。周辺の村には電力が流れていないと報告されているので、それを確認するべきである。
- 地雷:カレニー民族(反軍事政権の組織)からの攻撃を防ぐために軍事政権が地雷を埋めたと報告されている。軍事政権は外務省に対して地雷がないといっているようだが、タイ・ビルマ国境の情報によると地雷は確実にあるということだ。地雷を撤廃する条約の批准国として、日本はこの状況を確認する必要がある。
- この水力発電所の持続可能性:30億円の無償資金協力によって、どの程度修理が出来るかが明確ではない。無償資金で行われる修理の効果が短期的なものに過ぎず、今後も引き続き修理のための援助が必要な状況であれば、プロジェクトの持続性が問われるであろう。その点も調査の対象とすべきである。
- カレニー民族の立場:民主化促進という政治的な観点からみるとカレニー民族の立場も調査する必要がある。この援助に反対しているカレニー民族の懸念を無視すれば、民主化促進を目的としているこの援助は逆効果を持たす可能性もある。民族間の和解ではなく、対立感を高める効果になりうる。カレニー民族のグループから意見や情報を聴取すべきである。
- Alternatives: この援助の目的を果たすために他の代替案?例えば病院など人道上電力供給が欠かせない施設の自家発電機、あるいは電力供給制度の改善などがあるかどうか調査する必要がある。
効果的な調査を行うため、及び人権侵害を防ぐために守る原則:
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軍の関与を防ぐ
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調査団が必要と判断する村・市民にアクセスできる
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通訳は中立な立場にいる。軍事政権に報告義務のない人
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インタービューされる人々の身の安全を保証する
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独立した調査団
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調査を途中で中止する場合を明確にする
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調査中に起こった問題を報告できる制度作り
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情報公開