2002年9月3日、南アフリカ・ヨハネスブルグ
リオ宣言の第10原則は、持続可能な開発における不可欠な要素として、情報公開と市民参加の推進を各国に求めています。リオの成果を実施に移すためのヨハネスブルグサミットでは、実施計画案第151項として「情報公開と住民参加に関する世界的なガイドライン策定」が提案されていましたが、混沌とした実施計画第10章の議論の結果、この段落は途上国やアメリカなどの反対により最終的に削除されてしまいました。
日本のODAは一昨年まで世界一の規模を誇り、「小泉構想」においてもその役割が強調されています。しかし一方で、巨額の円借款による大規模インフラ整備に代表される日本のODAは、アジア地域のみならず世界各国で環境破壊や住民への被害を引き起こしてきました。バリの第4回準備会合で行われた日本のODAに関するワークショップでは、タイの汚水処理プロジェクトやインドネシアの水力発電など、多くの環境被害が指摘されました。中でもインドネシアのコトパンジャンダムの被害住民は9月5日に、適切な補償を求めて日本政府等を提訴します。
ODAによる環境社会被害の原因の一つとして、現地住民がプロジェクトについて情報を受け取り意思決定に参加することができないことにあります。ODAの受け取り国での公開と参加の問題に目を向けない限り、ODAによって被害を受ける人々は増えつづけるばかりです。しかしこれまで日本政府は、「情報公開や住民との合意形成は途上国政府の責任」とし続けてきました。情報公開と住民参加について、援助する側の責任として取り組むことが求められています。
実施計画第151項は最終的に削除されてしまいました。しかしリオ宣言の第10原則にもうたわれている公開と参加を実施に移す必要性は高まる一方です。アジア地域では国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が、オーフス条約のアジア版作成に向けた取り組みを進めています。日本政府は、援助や投資を通じてアジア地域の環境と社会に大きな影響を及ぼしている責任を認識し、情報公開と市民参加に関する国際的な枠組み作りに積極的に参加するべきです。
メコン・ウォッチ(担当:福田・松本)
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