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【連名依頼】ベトナム原発建設に関する要請書  

2010年12月6日

日本政府は、アメリカ、タイ、ベトナム、カザフスタン、ヨルダンといった国々に対する日本企業による原発輸出を実現するため、トップ外交、技術協力、実現可能性調査など様々な側面からの公的支援を実施しています。たとえば、ベトナムの原発建設にあたっては、経済産業省の資金を使い、約20億円をかけた実現可能性調査(フィージビリティ・スタディ)が実施されようとしています。

私たちは、現在の原発輸出促進政策は、原発が抱える核拡散、事故、放射性廃棄物、労働者被爆、その他の環境社会リスク、また財務リスクを過小評価した結果であると考えており、その観点から日本政府の原発輸出政策に関して、情報収集や働きかけを行ってきています。

このたび、私たちは、海外における原発建設のフィージビリティ・スタディの情報公開および事業が与えるリスク評価を調査に含めるべきであるという内容の要請書を作成しました。要請書は下記をご覧ください(要請書のPDF版はこちら)。

現在、この趣旨に賛同し、連名していただける団体・個人の方を募集しています。連名いただける団体・個人の方は、12月13日(月)までに、(1)団体としての賛同か、個人としての賛同か、(2)団体名・個人名(個人の場合は、併記可能な所属先・肩書きなど)、(3)連絡先のE-mail――を、finance@foejapan.orgまでご連絡いただけますようお願いいたします。(基本的に連名していただいた団体・および個人方々のお名前は公開させていただきます。)

多くの皆さま方と、こうした声を経済産業省に届けて参りたいと考えております。皆様のご協力がいただければ幸いです。

(メコン・ウォッチ)

連名呼びかけ団体:
原子力資料情報室、 グリーンアクション、 「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、 国際環境NGO FoE Japan、
メコン・ウォッチ


2010年12月XXX日

経済産業大臣 大畠 章宏 殿

ベトナム原子力発電所建設のためのフィージィビリティ・スタディに関する要請書
〜原発輸出に関する日本政府支援について〜(案)

 私たちは、日本政府の公的資金による原発輸出の安易な推進が、核の拡散および原子力の安全性上大きなリスクをもたらすこと、原発建設の地元社会に甚大な環境社会上の影響を与える可能性があること、また日本の税金が限られた企業の利益をもたらすために利用されることについて、重大な懸念を抱いています。このような懸念から、本要請書を提出させていただきます。

I.背景
 現在、日本政府は、アメリカ、タイ、ベトナム、カザフスタン、ヨルダンといった国々に対する日本企業による原発輸出を実現するため、トップ外交、技術協力、実現可能性調査など様々な側面からの公的支援を実施しています。
 たとえば、2010年10月末には、日越首脳会談において、ベトナム政府が原発2基の建設の協力パートナーに日本を選ぶことを決定したという発表がなされましたが(注1)、合意の中には、日本の資金を使った実現可能性調査(フィージビリティ・スタディ)の実施、事業に対する低利貸付なども含まれています。
 一方、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課は、昨年、「低炭素発電産業国際展開調査事業」を公募にかけ、公募期間中得た2件の応募のうち日本原子力発電株式会社を採択しています(注2)。 原子力政策課によれば、ベトナムにおける原子力発電所の建設計画に関するフィージィビリティ・スタディ実施費用は、19.99億円。ベトナム側のパートナー選択が遅れたため調査事業が22年度に繰り越されましたが、前述の「平成21年度低炭素発電産業国際展開調査事業」は、このプロジェクトを念頭において公募したと考えられます。
  なお、原発輸出に当たっては、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)などの公的融資・付保が想定されていますが、両機関は原発輸出支援の審査に関する指針を策定する予定です(注3)。

II. 認識
 私たちは、現在の原発輸出促進政策は、原発が抱える核拡散、事故、放射性廃棄物、労働者被ばく、その他の環境社会リスク、また財務リスクを過小評価した結果であると考えています。また、原発が日本国内ですら多くの問題をはらんでいることに鑑みて、原発輸出を公的資金により推進することに関して疑問を感じています。とりわけ、ガバナンスや技術面、民主的な参加プロセス等において更なる課題を抱える発展途上国で原発事業を進めることは地元社会にとって大きなリスクを伴います。さらに「経済対策」としての税金の使途を考えた時、極めて限定的な数の日本企業しか裨益しない原発輸出促進に税金を費やすことに関する疑問もあります。
 以上の理由から、私たちは、原発輸出促進に過大な公的資金を投入しようとしている日本政府の方針は適切ではないと考えます。
 しかしながら、すでに原発輸出が推進されている現状を踏まえ、私たちは、日本政府が原発輸出に関連した調査支援を実施する際、また、原発輸出への公的信用の付与を行う場合には、少なくとも、十分な透明性を担保し、上記のような原発のリスクを十分見極める必要があると考えています。

III.要請
 私たちは、海外における原発建設のフィージビリティ・スタディの実施につい
て下記のように要請します。

1. 本フィージィビリティ・スタディは日本の税金が投入されて実施されるものであるため、入札情報以外については、調査報告書はすべて公開されるべきである(注4)。
2. フィージビリティ・スタディの調査項目に関しては、NGOも含めたステークホルダーの意見を踏まえ、決定するべきである。
3. 原発建設の決定プロセスにおいて、プロジェクト全体における情報公開および住民との協議が確保されるかどうかについて、フィージィビリティ・スタディの調査項目に含めるべきである。
4. 原発の運転において、安全等に関する情報公開および住民との協議が確保されるかどうかをフィージィビリティ・スタディの調査項目に含めるべきである。
5. 放射性廃棄物の管理体制、事故時の対応、事故に対する保証、労働被ばくの防御、その他の安全性の確保、その他環境社会リスクなど、事業が与えるリスク評価を、フィージビリティ・スタディに含めるべきである。

以 上

 

注1) 平成22年10月31日の日越共同声明に「ベトナム政府がニントゥアン省の原子力発電所第2サイトにおける2基の建設の協力パートナーに日本を選ぶことを決定した旨確認した」と記された。
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_kan/vietnam_1010_ksk.html)

注2)経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課「平成21年度低炭素発電産業国際展開調査事業の公募結果について」(平成21年10月16日付)

(http://www.enecho.meti.go.jp/info/tender/tenddata/0910/091016c/091016c.htm)

注3)JBIC/NEXIの原発指針の策定に関しては、NGOグループは、2009年7月、下記の内容を含む指針の策定を求める要請書を提出した。
http://www.foejapan.org/aid/jbic03/090727.html
 ・テロ多発地域、紛争地域など、政治情勢が不安定な国の原発事業に公的信用を付与するべきではない。
 ・安全確保に関する配慮の確認に関しては、日本と同程度の基準を求めるべき。
 ・使用済み核燃料等の放射性廃棄物の管理・処分計画の内容と実効性を確認するべき。
 ・労働被曝の適切な基準が設置されているべき。
 ・十分な情報公開と住民協議が実施されていること。
 ・支援の検討にあたり、第三者機関を設置すべき。

注4)経済産業省の予算によりJETROが実施する日本企業支援のためのフィージビリティ・スタディは、JETROが有する環境社会配慮ガイドラインにもとづき、 調査結果は基本的に公開されている。
(http://www.jetro.go.jp/disclosure/environment/)

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