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ホーム > 資料・出版物 > プレスリリース・要請文>【要請】ビルマ(ミャンマー)へのODA に関する要請書

【要請】ビルマ(ミャンマー)へのODA に関する要請書

メコン・ウォッチは2012年7月20日及び25日、ビルマ(ミャンマー)への長期円借款 及び本格的な開発協力の再開に関して、下記の要請書を外務大臣及び財務大臣宛てに 提出いたしました。

 

>> 要請書本文(PDF)


2012 年7 月20 日

外務大臣 玄葉 光一郎 殿
財務大臣 安住 淳 殿

ビルマ(ミャンマー)へのODA に関する要請書

 本年4 月21 日の両国の首脳会談において、日本から本格的な開発協力の再開と、円借款供与に道筋をつける延滞債務問題への対応に関して合意に達したと理解しております。具体的には、期限が過ぎた約2,000 億円の延滞債務を事実上借り換えにして、日本政府は新たに長期の円借款をプログラム・ローンとして供与し、この円借款の下で、両国はビルマ(ミャンマー)がとる政策や改革について共同でモニタリングする方向で最終的な調整を進めていると聞いております。また、本格的な開発協力再開にあたっては3 つの分野、すなわち「国民の生活向上のための支援」(少数民族や貧困層支援、農業開発、地域開発を含む)、「経済・社会を支える人材の能力向上や制度の整備のための支援」(民主化推進のための支援を含む)、「持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援」を中心に進めることを日本政府は発表しています。

 こうした開発協力の拡大は、舵取りをあやまればビルマ(ミャンマー)国内の貧富の差の拡大、汚職の拡大、民族間の対立の助長、環境の破壊、少数民族(ロヒンギャを含む)の人権侵害、などにつながる恐れもあります。今後進められるビルマ(ミャンマー)に対するODA が、こうした負の影響を社会に引き起こさないため、そして最も支援を必要とした人々に裨益する援助となるよう、現在検討中のプログラム・ローンを通した政策・改革のモニタリング、及び3 つの分野での開発協力の方針について、以下の点を要請致します。

1.プログラム・ローンを通じてモニタリングすべき点や現地の状況

(1)国民和解と少数民族への対応
・ カチン州やアラカン州を含む少数民族地域における国軍・警察等による人権侵害状況
・ 少数民族に対する文化・言語その他の平等な権利の保障状況
・ 少数民族と対立するあらゆる問題について、武力や弾圧ではなく、話し合いによる解決が進められるような制度になっているかどうか
・ 少数民族との停戦合意および和平合意が結ばれた地域での難民・避難民の帰還・再定住など、平和の定着に向けた取り組みの進展状況
・ 1982 年の法改正で剥奪されたロヒンギャの市民権の法的な回復状況

(2)民主化の後押し
・ 国内で拘束されている政治囚の釈放状況
・ すべての住民に対する言論、表現、集会、結社の自由の完全な保障状況
・ 政治囚の長期的拘禁の根拠となってきた国家緊急事態法等の弾圧立法の廃止に向けた状況
・ ビルマ(ミャンマー)政府のガバナンス、透明性、アカウンタビリティの向上の状況
・ 市民社会組織(CSO)が新しい国作りに積極的に参画できるような法律面、制度面、税制面での活動環境整備の状況
・ 豊富な資源(とくに天然ガス)そして日本政府の支援が人々の利益となることを確保するための収入と予算の透明性、及び汚職や機会の不平等への対策の実施状況
・ 軍の統制下にあるビジネスネットワークの解消状況、及び、国家予算に占める軍関連予算の見直し状況
・ 土地の収用や不適切な補償が特に小規模農民たちの生活を脅かさないよう、国際的な専門家や農民団体など関連するCSO と協議を行い、国際人権基準にのっとった形での所有権や利用権を保証する土地関連法の制定が進められているかどうか
・ 国民が、法律にのっとった権利の保護を受けられるよう、司法アクセスを実現するための司法改革の実施状況

(3)社会セクター(教育、保健、環境など)
・ 基礎的社会サービス分野(保健・栄養、教育、水供給、衛生など)に関連するMDGs(MDG2,4,5,6,7 など)の達成状況
・ 基礎的社会サービスへのアクセス向上に向けた取り組み状況
・ 基礎的社会サービスへのアクセスに関する都市部と地方部の格差の是正の状況
・ 基礎的社会サービス提供における少数民族、貧困層、障害者など周縁化された人々のアクセス状況
・ 国家予算に占める基礎的社会サービスへの配分割合
‐GDP に占める教育支出、政府支出に占める教育支出の比率が、2000 年以降発表されていないので、これを発表するようにすること(その能力をJICA が技術協力で強化すべき)
‐ユネスコのEFA Global Monitoring Report 2011 によると、最も新しいデータである2000 年のGDP に占める教育支出は0.6%、政府支出に占める教育支出の比率は8.7%だった。東アジアおよび太平洋地域の平均は2008 年データで前者が3.3%、後者が14%だった。2013 年から2017 年までの5 年間で前者を3%、後者を14%にするといった数値目標を設定し、その状況をモニタリングすること
‐WHO のGlobal Health Observatory の2009 年のデータによると、GDP に占める
保健支出は2%、国民一人あたりの政府による年間保健支出は2 PPP ドルであった。
2013年から2017 年までの5 年間で前者を5%、後者を基礎保健サービス提供のためのWHO推奨の35 ドルとするといった数値目標を設定し、その状況をモニタリングすること

 なお、上記のモニタリング結果につきましては、可能な限り透明性を確保して頂くことが不可欠であると考えます。情報を公開した上で、NGO などの市民社会組織との継続した議論の実施を日本政府に強く求めます。

2.今後の日本政府によるビルマ(ミャンマー)支援に望むこと
(1)国民和解と少数民族への対応
・ 少数民族や難民、帰還民に対する支援の拡充および支援の形成・実施過程におけるビルマ(ミャンマー)および日本のCSO との連携の強化
・ 国民和解や難民・避難民の帰還・再定住に資する取り組みの拡充および事業の形成・実施過程におけるビルマ(ミャンマー)および日本のCSO との連携の強化
・ 紛争や暴力の影響を受けやすい子どもの権利の保障および復興プロセスへの子どもの参加の促進
・ タイに逃れている難民の支援を対ビルマ(ミャンマー)支援の枠組みにおいて開始する。国境では、多くのCSOが活動しており、玄葉外相のスピーチでも触れているようにCSOと協力することで少数民族に裨益した支援が可能である。難民支援は、将来の帰還、再統合を支援するための準備のためにも有効である
・ 開発プロジェクトが、地域住民や少数民族の意向を無視して行われることがないよう開発地域住民との真摯な協議に基づいて行われるようにすること
・ 少数民族が多く居住する地域は交通が不便で通信も悪いことから、情報量が極端に少ないため、意識的に少数民族地域の現状を調査研究し適切な支援を検討すること
・ 特定の民族地域への偏った支援が他の民族の不満をもたらし対立を助長することもあるのでバランスのとれた支援が重要
・ 同じ地区に異なる民族の村が集まっている場合は、民族間で緊張関係にあることも多いので、特に配慮が必要
・ 現地で事業を行う場合に、スタッフの雇用などの面で民族のバランスに配慮する必要がある
・ 日本による経済援助プロジェクトが直接的にであれ間接的にであれ軍・警察等による少数民族地域の人々への迫害及び人権侵害を間接的に助長することがないよう、日本政府として徹底した事前調査を行い、現地住民との協議を行うこと、その結果、人権侵害等の危険が確認された場合はプロジェクトを実施しないこと

(2)民主化の後押し
・ ビルマ(ミャンマー)政府のガバナンス、透明性、アカウンタビリティの向上のための能力強化支援。1.で挙げたプログラム・ローンのモニタリングができるような能力強化支援も含む
・ ビルマ(ミャンマー)政府のガバナンス、透明性、アカウンタビリティの向上における市民社会の役割への認識とビルマ(ミャンマー)のCSO に対する支援
・ 豊富な天然資源の便益を国民生活の向上につなげることが重要であり、国際通貨基金(IMF)の「財政透明性に関する模範的実践コード」や「資源収入透明性ガイド」に示された国際基準や採掘産業透明性イニシアティブ(EITI)、及びその他の国際的な公的なアカウンタビリティ推進の枠組みへの参加を促し、そのプロセスをCSOなどとともにモニタリングすること
・ 日本からの援助の現地社会における透明性と説明責任を担保するための具体的な方策についてビルマ(ミャンマー)政府と協議し、明確な方針を確立すること

(3)社会セクター(教育、保健など)
・ 基礎的社会サービス分野(保健・栄養、教育、水供給、衛生など)に対する十分かつ包括的な支援の実施
・ 基礎的社会サービス分野の支援の形成・実施過程におけるビルマ(ミャンマー)および日本のCSOとの連携の強化と連携メカニズム(CSOとの対話の継続、スキームの拡充、政策及び事業の合同評価の実施など)の確立
・ 基礎的社会サービス分野の支援実施における少数民族や貧困層、障害者、子ども、女性など周縁化された人々のアクセス向上と人権重視
・ 地域開発に必要な人材の育成のための十分な技術・技能教育機会の提供と定着、及びそうした技術を生かした地元での雇用創出と生計の維持
・ 村落の小規模な基礎的インフラは重要であり、地元の人たちの技能向上と雇用創出の観点から進めること

 プログラム・ローンを活用した政策・改革モニタリングや拡大しつつある日本からの開発協力が、真にビルマ(ミャンマー)の人々のためになるよう、人権や環境分野のアドボカシー活動及び現場での草の根協力活動の双方の分野において、CSO との真摯な対話と協力が必要であると考えます。

 少数民族地域の人権状況や開発に伴う悪影響に関するモニタリングには、国際NGOからの情報が不可欠であり、極めて信頼性の高いものとなっています。そうした外部の情報や訴えにこれまで以上に真摯に耳を傾け、具体的な政策・改革モニタリングや援助プログラムに活かしていくことを強く求めます。さらに国別援助政策の策定においてもCSO との充分な協議を行って頂くよう求めます。

 また、ビルマ(ミャンマー)の開発協力の現場で活動しているCSO との連携強化をより具体的なものとし、あらゆるODA の実施に際して協働の強化を検討して頂きたいと思います。従来の政府間の技術協力だけでなく、両国の市民社会組織間(J-CSO とM-CSO)の技術協力などより複層的な連携の強化も重要であると考えます。

以上、日本政府に要請致します。

要請団体名

公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会
公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター
ビルマ市民フォーラム
特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ
認定特定非営利活動法人 ブリッジ エーシア ジャパン
特定非営利活動法人 メコン・ウォッチ

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