ホーム > 資料・出版物 > プレスリリース・要請文>ビルマ・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業>住民無視のJICA海外投融資決定に抗議
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2014年4月25日
4月23日、国際協力機構(JICA)はビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)Class A区域(早期開発区域、約400 ha)事業に対して、海外投融資【1】による支援を決定しました。
この決定は、以下の理由で、JICA環境社会配慮ガイドライン(以下、ガイドライン)の規定に違反するものであるとともに、住民の声を無視するものです。私たちは強く遺憾の意を表明します。
1.私たちは、外務省・JICAに対し、会合や意見書等を通じて、同SEZ事業・早期開発区域による立退きなどの影響を受ける住民の生活状況の悪化や、移転・補償プロセスにおける人権侵害など、ガイドラインの規定違反の疑いを指摘し、問題解決のための適切な対応を求めてきました。それにもかかわらず、移転・補償措置の改善が不十分なまま、つまり、移転住民の生活状況が改善されることも、今後改善される保障も示されていません。
2.現地の住民も、たびたびJICAにレターを提出し、住民の生計が悪化していることを指摘し、問題解決のための会合を要請してきました。直近では、住民グループは4月23〜25日のいずれかの日取りで会合を申し込んでいましたが、JICAはその会合の申し込みにも一切回答せぬまま【2】、出資を決定しました。これは、「JICAは、現場に即した環境社会配慮の実施と適切な合意の形成のために、ステークホルダーの意味ある参加を確保し、ステークホルダーの意見を意思決定に十分反映する。なお、ステークホルダーからの指摘があった場合は回答する。」というガイドラインの規定に明らかに違反しています。
3.現在、早期開発区域から移転を強いられた68世帯(約300人)が暮らす移転地では、農地や日雇いの仕事などを失ったまま、代替の生計手段を見つけることができない住民が困窮しています。受け取った補償金を使い切り、借金を余儀なくされている世帯、また、家屋を売却して移転地を後にする世帯も出ており、現地政府やJICAが繰り返し示してきた「国際的な水準に則った措置」がとられているとは到底言い難い状況です。
参照:2014年4月7日 プレスリリース「移転問題への対処を」住民、日本に再度訴え
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20140409_01.html
同事業はまさに官民を挙げた日本の旗艦事業として推進されています。今後、ティラワSEZ予定地の残り2,000ヘクタールの開発では、さらに1,000家族以上(約4,500人)が移転を強いられることになります。現在の移転・補償措置の改善が、今後の事業実施にとっても大変重要な試金石となることに鑑み、日本政府・JICAは、これ以上、影響住民の生活状況が悪化することのないよう、住民の訴えを真摯に受け止め、早急に適切な対処をとるべきです。
連絡先:特定非営利活動法人メコン・ウォッチ
Tel: 03-3832-5034, Fax: 03-3832-5039
携帯電話:090-6142-1807
【1】民間企業等に対するODA(政府開発援助)による投融資。
【2】JICAから回答がなかったため、住民リーダーがJICAヤンゴン事務所に電話したものの、「確認して電話する」と言われたのみ。その後、連絡はなかった。