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カンボジアNGO法案>日本政府に緊急要請書提出

2015年6月24日

今、カンボジアの人びとの暮らしに大きな影響を及ぼす恐れのある法案が、同国国会常任委員会に上程されています。「結社およびNGOに関する法(Law on Associations and Non-Governmental Organizations: LANGO)」と呼ばれるこの法案は、内容を公開し、関心のある人々が詳しく吟味できる機会を与えるよう、市民グループが再三の要請をしてきたにもかかわらず、非公開のまま国会に提出されてしまいました。法案はあいまいな表現が多く、当局により恣意的に使われる可能性をはらんでいます。このまま施行されれば、現在カンボジア各地で大問題となっている土地の収奪や強制移転を伴う開発事業に異議を申し立てる市民やNGOが、同法を根拠に活動を停止させられ、法的な処罰を受ける恐れがあります。

実際同国では過去に、アジア開発銀行(ADB)へ事業の改善を求めただけで、政府の処罰の対象になったNGOがあります。

ADBに移転問題の改善を求めたNGOに対し、カンボジア政府が警告・活動停止処分
こちらをご覧ください

法案全体の問題については、下記を合わせてご参照ください。

カンボジア「結社及びNGOに関する法案」の抜本的修正を求める声明(ヒューマンライツ・ナウの情報)。
こちらをご覧ください(ヒューマンライツ・ナウのページへ)

今回国会に提出されたのは、草案の第5版ですが、2011年に第4版が国会に提出されそうになった時には大きな反対の声が上がり、提出が見送られた経緯があります(ヒューマン・ライツ・ウォッチの情報)。
こちらに(ヒューマン・ライツ・ウォッチのページへ)

日本はカンボジア最大援助国(累計ベース)です。メコン・ウォッチでは現地NGOの懸念を受け、カンボジア政府が今回の法案提出を一旦取り下げ、市民社会と国際援助機関との協議を経た上で新たな法案を作成し国会に再提出するよう働きかけることを、先週、日本の外務省に要請しました。

2015年6月18日

外務大臣
岸田 文雄 様

カンボジア「結社およびNGOに関する法案」に関する緊急要請書

特定非営利活動法人メコン・ウォッチ
代表理事 福田健治

カンボジアでは閣僚評議会において、「結社およびNGOに関する法(Law on Associations and Non-Governmental Organizations: LANGO)案」が議論されていた模様ですが、6月16日に国会常任委員会に第5版のドラフトが提出されております(プノンペンポスト6/17報道)。LANGO案は、未登録の団体による活動を処罰する規定を設けている点において、カンボジア憲法42条や自由権規約22条が保障する結社の自由を侵害する疑いがあります。さらに、現在カンボジア国内を揺るがしている土地の収奪や強制移転を伴う開発事業に異議を申し立てる市民やNGOが、法案を理由に活動を停止させられ、法的な処罰を受ける恐れが強まります。

カンボジアで活動する現地NGOや国際NGOの間では、現在提出された法案が、正当な意思表明や抗議活動を抑圧されるために濫用される現実的な危険性が存在すると受け止められています。

たとえば、2010年5月、アジア開発銀行(ADB)が支援した「GMSカンボジア鉄道修復事業」によって移転させられた住民の子ども2名が水汲みに行った先で溺死する事件が起きました。この事態を重く見たカンボジアのNGO4団体(カンボジアNGOフォーラム、Bridges Across Borders Cambodia、Sahmakum Teang Tnaut(STT)、Housing Rights Taskforce)は同年10月、ADBの非自発的住民移転政策で約束されている移転地の条件整備を早急に実施するよう要請する書簡をADBに提出しました。その10カ月後の2011年8月中旬、カンボジア外務省は、これら4団体に対して、このような働きかけはカンボジア政府の威信を損ない民衆を扇動する行為にあたるなどと指摘し、文書による警告を発し、うちSTTについては、内務省が5カ月間の活動停止処分を下しました。STTの処分に関して、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは、法的な根拠がなかったと分析しています。

LANGO案は、結社・NGOの登録拒否・解除事由として「国家の安全、統一、文化、伝統を損なう場合」を規定し、国内外のNGOに対し「政治的中立」を義務づけています。これらの規定は、開発に伴う負の影響を軽減しようとするNGOや住民の活動を著しく阻害する根拠となり得ます。また、法案には多くのあいまいな文言が用いられており、恣意的な適用を乱発させる危険をはらんでいます。

日本政府は、カンボジアにとっての重要な開発パートナーです。1996年からの国際協力機構による支援の結果、2007年に制定された新民法には、非営利法人に関する包括的な規定が設けられています。ところが、今回のLANGO案は、新民法との関係における位置づけも、法人の設立・運営に関する基本的な事項も定められておらず、新民法との間に矛盾・抵触を生じさせ、非営利法人制度全体を混乱させるものです。

日本政府としては、このような点を十分吟味され、カンボジア政府に今回の法案提出を一旦取り下げ、市民社会と国際援助機関との協議を経た上で新たな法案を作成し国会に再提出するよう、緊急に働きかけていただけますよう要請いたします。

 

(文責 メコン・ウォッチ)

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