メコン河開発メールサービス 2000年7月5日
アジア開発銀行(ADB)と日本の円借款が融資して建設が進められているタイのクロンダン区汚水処理施設問題に関して、約束どおりADBの担当者が現地を訪問しました。漁民の懸念に理解を示す半面、融資の中止は現状では難しいという立場を繰り返すに留まりました。以下、タイの英字新聞The Nationの記事です。
The Nation 23 June 2000
サムットプラカンーアジア開発銀行(ADB)は昨日、2人の高官をクロンダン汚水処理管理施設を囲む地域に派遣した。千野忠男総裁は、先月チェンマイで開かれた総会で、タイで最も議論のあるADB融資のプロジェクトへの訪問を約束した。
千野総裁は大規模な抗議活動により、プロジェクトの見直しを約束した。クロンダンの村のリーダー、Chalao Thimthongが昨日、ADBの2人の高官を、村人がプロジェクトによって影響を受けるとしている海岸へボートで案内した。高官は、海岸の10km以上を占める大きなムラサキガイの養殖場を見せられた。
現場視察の後、ADBバンコク事務所の技術者のCraig Steffensonは、「村人がなぜプロジェクトに反対しているか疑いの余地はない」と述べ、「もしも私が彼らの立場だったら、同じ事をするだろう」と語った。「彼らはプロジェクト反対の立場に正直であると信じるし、納得のいく理由をたくさん挙げた」とSteffensonは述べた。
ボートでの視察の後、高官らは、300人以上の人がプロジェクトについて話し合おうと待っていたクロンダンのコミュニティーへ連れていかれた。村人たちは、影響を受けるだろうとされている地域の中心に近い、クロンダンとソンクロンの2つの区からきていた。
高官らは最初は議論に参加する事をためらっていた。
しかし、安全が保証されると、彼らは村人と話すことを了解した。「私たちはほとんど女性で、かつほとんど年寄りよ」とクロンダンのリーダーのうちの一人、DawanJandrahasadiが言った。「どうして私たちがあなた方に害を与えられると思うのですか?入って話しましょう」。村人はプロジェクトと、それが自分たちのコミュニティーに影響をもたらす可能性について非難する横断幕を持っていた。
コミュニティー・リーダーと高官がプロジェクトについてクロンダン区長NarongYordsirajinaの家で話し合っている間、村人は外で寝ずの番をして待っていた。何人かは野外会合を提案し、プロジェクトへの懸念を伝えた。
屋内では高官は、融資の取りやめは不可能であるというADBの公式な立場を伝えた。「融資をやめるには2通りある。ひとつはタイ政府がその中止を提案するか、もうひとつはタイ政府が契約違反を犯したことをADBが見つけた場合である」。「チェンマイでの抗議の後、我々はこの両方の可能性を打診したが、両方とも不可能であるとの結論に達した」とSteffensonは述べた。Dawan は、タイ政府に渡った後だとしても、銀行には自分のお金の使い道に権利と権限があると反論した。
しかし、DawanはADBの高官を追いつめることはしないと述べた。もしも代表が意思決定の能力を欠くのならば、彼らにADBまで汚水処理施設の見直しを行ってくれというメッセージを届けてもらいたいと述べた。
Dawanはさらに、プロジェクトの公聴会を開くようタイ政府に促し、一時的に建設をやめるなどの、見直しに対する銀行の誠実さを見せてほしいと訴えた。「建設が進むのなら、この話し合いの意味は無い」「一般の人に私たちがプロジェクトに反対する理由をわかってもらうためにも、公聴会はテレビで放映されるべきだ」と述べた。
(翻訳:後藤歩/メコン・ウォッチ)