メコン河開発メールサービス 2000年7月26日
世界銀行が融資し5000世帯以上の人々が予想以上の社会環境影響を訴えていたタイのパクムンダムについて、25日の閣議でタイ政府は先に内務大臣が設置した中立委員会の勧告を一部受け入れましたが、抗議住民たちは政府の解決先はあまりに小さい譲歩だとして、100人近くがハンガーストライキに突入しました。
閣議決定の最終発表を入手していませんが、東南アジア河川ネットワークによりますと、パクムンダムについては、雨季の間(5-8月)の水門の開放による魚の回遊の回復と環境調査の実施という中立委員会の勧告に対して、閣議決定は、水門開放を今年の雨季に限定するとしたそうです。パクムンダムの水門は現在洪水緩和のために開放されており、これをあと1か月続けるというに過ぎません。これから1か月だけの水門開放では魚の回遊がどの程度回復するのかなどの調査ができるとは思えませんので、かなり後退した勧告を骨抜きにした結論と言わざるをえません。
内務大臣が設置した中立委員会は、パクムンダムを含め、ダムや森林・土地問題など16の社会環境問題について勧告を提出しました。しかし、既存のダムで影響を受けた人たちへの補償の再検討や、土地・森林関連の紛争解決への勧告には一切応じませんでした。したがって、バンコクの首相府前でデモを続けている影響住民は、閣議決定に対して「余りにも小さすぎる、余りにも遅すぎる」というコメントを出し、闘争を継続する決定をしました。すでに100人ほどがハンガーストライキに入っています。
パクムンダムについては、これまで水門の開放が閣議決定に入らないのではと言われていましたので、日本を含め、国際世論がタイ政府に要望を出したことで、一応の成果があったと考えることはできそうです。しかし、先に書きました通り、水門開放の目的は、魚がどの程度回遊するのかを調査すると共に、ダム建設前のベースラインのないこの地域の社会影響を推計することにありますので、来月までの水門開放では、不十分であることは疑いのないところです。
閣議決定の最終文面を入手し次第、改めてご報告致します。