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WCD報告書報告書発表、
パクムンダムはあらゆる面で失敗作と結論

メコン河開発メールサービス 2000年9月25日


過日タイのパクムンダムについて、独立的なダム見直し機関である世界ダム委員会が批判的な最終報告書を公表したとお伝えしました。ただ、前回ご紹介した記事は、タイ発電公社側の反応が中心でしたので、本日は世界ダム委員会の最終報告書そのものについてのバンコクポストの記事をご紹介します。以下の記事を読むとわかる通り、経済面、社会面、環境面、何をとっても問題ばかりを残したプロジェクトだと言えるでしょう。影響を受けた住民たちは10年以上も戦い続け、今もなおバンコクの首相府前で粘り強い抗議行動を続けています。先日デモ中の女性が病気で死亡し、その一方で新しい命も誕生しました。1991年の世界銀行理事会で、「このダムを反対運動でつぶされたら、二度とメコンにダムを造れなくなる」と発言して、パクムンダムへの融資に賛成を投じたと報道されている当時の日本人理事は、今の事態をどのように考えているのでしょうか。

なお、前回もお伝えしましたが、この報告書は、世界ダム委員会の見解や勧告ではありません。独立した調査の結果と言う位置付けで、世界ダム委員会としての見解は、後日改めて出されることになっています。詳しくは、世界ダム委員会のウェブサイトを参考にして下さい。


パクムンダム:あらゆる面で失敗と報告書、高くついたプロジェクトは犠牲しか残さなかった

バンコクポスト

2000年9月20日

世界ダム委員会(WCD)は、パクムンダムはあらゆる面で失敗作だと宣言した。昨日(19日)発表された報告書では、このダムは経済的に正当化できないし、ムン川の生態系に深刻な悪影響をもたらし、また村人の生活を破壊したと述べている。

報告書は、メコン河流域のこのダムに関する初めての独立した総合的かつ対等な

レベルでの見直し分析という触れ込みである。報道機関にリークされたあとプロジェクト開発者であるタイ発電公社(EGAT)によって反論されたこれまで説明を確認するような内容だった。

パクムンダムは委員会チームによって調査された世界の7つのダムの1つである。この委員会はダムの経済影響、環境への結果、社会的意味、意思決定過程、それにプロジェクトを支えた制度的な構造について調査を行なった。委員会のスポークスマンであるJames Workman氏によれば、この企ては「ひどく競合した資源開発の戦場での共通の基礎を築くもの」であった。

委員会は世界保全連盟(もしくは国際自然保護連盟=IUCN)と世界銀行が共同で設置したものである。

利益、費用それに影響の事前予測と現実との乖離に関する疑問について言えば、事前予測の38億8千万バーツと実際にかかった65億700万バーツとの間の費用超過は、度を過ぎたものとはみなされなかった。

しかしながら、補償や住民移転の費用は、予測された2億3155万バーツから11億1310万バーツにはねあがっている。元々の予測には入っていなかった漁業の損失への補償は、3億9560万バーツにのぼっている。

またパクムンダムプロジェクトが実際に発電している電力量は、1995-98年の日々の電力産出量から計算すると、わずかに20.81メガワットでしかない。予定発電能力は150メガワットなのである。報告書は「プロジェクトは経済的には正当化できないと見なされる」と述べている。

パクムンプロジェクトは、多目的開発プロジェクトとして導入されたが、流し込み方式(run-of-river)のダムが灌漑利益をもたらすというのには疑問がある。60平方キロの貯水池からの漁業生産高は、魚の放流なしで年間ヘクタール当り100キロ、魚を放流するプログラムを導入すれば220キロになると見込まれていた。より現実的な見通しは年間ヘクタール当り10キロだったであろう。パクムンダムによって移転せざるをえなかった人々は、漁獲高の減少の結果、当初予測の241世帯から1700世帯に拡大した。

1994年以前に、ムン川とチー川の集水域で記録された265の魚種のうち、わずか96種しか上流地域で記録されなかった。上流での漁獲高は60-80%も減少したのである。魚の通り道、もしくは魚道は、200万バーツをかけてダムの完成後に建設されたが、魚の上流への回遊を助けることはできなかったと見られる。淡水エビ(Macropachium rosenbergi)の貯水池での放流の費用は、1995-98年にかけて年間3万1920ドルから4万4240ドルの間だった。しかしながら、この種は淡水では養殖できないため、この放流は漁民たちに何ら収入をもたらすことはできないだろう。漁業コミュニティは漁獲が50-100%も減少し、多くの魚種が消滅したと報告している。

50以上の天然の早瀬(rapids)は永遠に水没した。こうした早瀬は多くの魚種の棲み家となっていた。早瀬の消失が漁業に与える影響は、プロジェクトの環境影響調査では評価されなかった。

誰が得をして、誰が損をしたのかという疑問について、報告書は「全てのステークホルダーが失う方の立場になるだろう。それは破壊された生態系だけでなく、実際には失ったものを緩和するのが難しい緩和の努力によって支出が増大したことからも言える」と結論付けている。

報告書は当局を非難している。それは意思決定の早い段階で影響を受ける村人たちと相談しなかっただけでなく、プロジェクトや緩和策の意思決定にこうした人々を巻き込む努力をしなかったことを挙げている。

報告書はまた、プロジェクトは世界銀行のガイドラインと整合していないと述べている。世界銀行のガイドラインは、再設計されたプロジェクトの実施の前に、新しい環境影響評価や適切な影響緩和策を要求している。

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