メコン河開発メールサービス 2000年11月20日
世界銀行の支援などで東北タイに建設されたパクムンダムによって被害を受けた数千人の住民たちが、昨年からダム周辺に「メー・ムン・マン・ユン(永遠なるムン川の村)」を作り(第1村〜第7村)抗議の声を強めてきました。そのうちの2つの村が今月19日、女性と老人だけになる時間帯に60人余りの男たちによって襲撃を受けました。
以下はバンコクの土井利幸さんが翻訳して下さったネーション(タイの英字新聞)の記事です。これによれば30人が負傷、少なくとも2人が重傷を負ったということになっていますが、7人が集中治療室に運ばれたという情報もあります。現地では、村人たちが県知事に安全を確保するように求めているようですが、依然として新たな襲撃の恐れがあるなど緊張状態が続いているということです。以下の記事にもありますように、襲撃した男たちはタイ電力公社(EGAT)に雇われている可能性が強いというのが現地からの情報です。
ダムの問題というだけでなく、老人や女性を狙った襲撃事件という人権の視点からも憂慮しがたい事態となっています。ぜひとも国際的な人権団体のネットワークを持っていらっしゃるNGOにもタイ政府に向けたアラートを発信して頂けると幸いです。パクムンダムをめぐる問題については以下のページをご覧ください。
ザ・ネイション
11月20日(月)一面署名記事(タニン・キットナンタクン&ペンナパ・ホントン)
目撃者によると、昨朝、ウボンラチャタニ県で、棒を振り回した多数の男たちがパクムンダムに反対する住民たちをダム現場から強制的に排除、木製の仮設小屋に放火し、住民約30名が負傷、うち少なくとも2名が重傷を負った模様である。
襲撃を行ったのは、現場を常態復帰させるためにタイ発電公社(EGAT)が雇ったと言われる男たちで、「永遠なるムン川の村」のうち第七村と第一村を、それぞれ午前5時と7時ごろに襲った。村民たちを強制的に排除した後、男たちは家屋を取り壊し、火を付け始めた。学校の仮設校舎も破壊された。
何百組にもおよぶ家族が、論争の的となっているダムに対して反対の意思表示を行うために、現場を占拠していた。EGATによれば、住民たちによる占拠が保安上の問題となっていた。
襲撃は昨日、現場に女性と高齢者しかいない時に行われた。男性たちは農作物の収穫のために現場を離れていた。村民たちは正午前、襲撃現場からほど遠くない場所に集結した。双方が石や火を付けた布を投げつける行為に及んで、現場では緊張が高まったが、ほどなく警察の保安部隊が派遣され、現場を制圧した。
村民によると、排除に抵抗した者は暴力を振るわれ、30名にのぼる者が負傷した。ニラン・ピタクワットチャラ上院議員(ウボンラチャタニ県選出)のもとに複数の村民から寄せられた情報によると、襲撃した男たちは銃やナイフを使用した。「70歳になる村人が荷物をまとめて逃げようとしてたんだ。手を貸そうとしたら、ナイフと棒で武装した男たちにやられた」と、負傷したドゥサディー・チャントン氏は語った。「刺されて重傷を負った村人もいるって聞いた。」
同じく村民のブンペン(姓不詳)氏は、頭部を殴られ重傷と伝えられる。「抵抗しようとした者は殴られた。奴らは目に入るものには何でも火を付け、学校も見逃してくれなかった」と、ダム反対運動を主導する貧民フォーラムのメンバー、ソンパン・クンディー氏は語った。同じく貧民フォーラムのメンバーのジャリン・ワットワリン氏は、襲撃の裏でEGATが糸を引いていると語った。EGATはこれまで何度を住民を現場から追い出そうとした。「奴らがEGATに雇われたのは明らかだ。今回のようなことは、初めてじゃない」ワットワリン氏は語った。六月にも村民を追い出そうとして失敗した事件が起こっており、反対派はEGATが真の首謀者であると主張していた。
EGATは保安上の理由から若者を雇い、現場を警備する警察官の補助をさせていたと伝えられる。EGATは現場を立ち入り禁止としていたが、反対派の排除には成功していなかった。
ウボンラチャタニ県警察署長のバムルン・スクパニット陸軍少将は、今回の事件について調査を行うように指示を出したと語った。貧民フォーラムは、本日メディア関係者に対して現場を案内して回る予定である。「民衆主義をめざす運動」は声明を発し、襲撃を非難した。声明は、また、チュアン政権は平和的に活動する住民たちに対する「野蛮な」行為の責任を負うべきだとしている。
昨日の時点では、EGATから公式の反論は出されていない。ダムに勤務する複数のEGAT職員は、匿名を条件で、現場は立ち入り禁止になっており、村民たちは繰り返し立ち退くよう警告を受けていたと語った。