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タイ環境ODA>住民の声

メコン河開発メールサービス 2000年12月17日


アジア開発銀行(ADB)と日本の国際協力銀行が融資してタイのサムットプラカン県クロンダン区に建設を進めている汚水処理プロジェクトの問題で、バンコクの土井利幸さんが、11月5日のバンコクポストの記事を邦訳して下さいました。執筆者は、プロジェクト反対派住民リーダーのダワンさんで、今月初め、日本を訪れ、国際シンポジウムで講演したり、国会議員や行政との会合に参加していました。


ADBはクロンダン区でおかしている過ちを認めるべきだ

Bangkok Post, Nov 5, 2000

ダワン・チャントラハサディー

クロンダン区の住民の一人として、本紙2000年9月24日の「論点」に掲載された「汚染の危機は断固とした行動を必要とする」と題する記事に対して私見を述べたい。

記事の中でイアン・ギルADB(アジア開発銀行)上級広報部員は、サムットプラカン県には5000の工場があり公水域に汚水を排出していると述べている。これらの工場の中には処理施設を持ちながら、その施設が法的基準を満たしていないものがあり、国の検査官はしばしば見て見ぬふりをする。経費節減のために処理施設を稼動させない工場も多い。

クロンダン区に現在建設中の汚水集中処理施設については、すでに公害管理局がカドミウム・鉛・水銀のような重金属は処理できないと回答している。理屈の上では工場で汚水を一定程度処理してから集中処理施設に送り、そこでさらに処理を加えることになっている。法律も工場に対して処理施設の整備を義務付けている。汚水を処理せずに公水域に排出することは法律違反である。こうした基準を無視するようないい加減な責任者たちは処罰されてしかるべきである。

汚染問題は、経済的にすら無理のある大規模な処理施設を建設して税金の無駄使いをするよりも、規制を厳しくして根本的な解決を図るべきである。イアン・ギル氏は建設中の処理施設が「運転・管理において技術面の効率性と経済面での適性」をそなえていると述べている。しかし、事実はと言えば、シリタン・パイローテボリブーン公害管理局局長が住民に対してすでに認めているように、建設中の処理施設は重金属を処理できない。公害局はこの他にも悪臭や健康を害するおそれのある残滓について質問を受け、いまだ明確に回答できていない。

運転の経済効率が高いというのも嘘である。チュラロンコン大学で環境工学を研究するマンシン・タントゥバス教授は、建設中の処理施設に使われている技術は時代遅れで高額であると述べている。処理施設を運転するのに大量の電力が必要だからだ。誰が責任を持って施設の維持・管理をするのかすらはっきりしていない。

さらに『バンコクポスト』紙によれば、工場所有者の多くがすでに新しい処理施設を使わないことを表明している。現在より費用がかさむからである。

イアン・ギル氏はまた、住民が悪臭と湾内の生態系を破壊するおそれのある汚水の二点について特に反対の声をあげていると述べている。その上で氏は、悪臭については100%タイ資本からなる企業体NVPSKG社が最小限にとどめる手段を考案中であると言い、汚水については水質管理部が再利用の道を調査中であるとしている。

いったいこの処理施設建設にどれだけの費用をつぎ込むつもりなのだろうか。所轄官庁は重金属を含んだ残滓をどのように最終処理するつもりなのかを説明すべきである。

悪臭対策、残滓処理、汚水再利用などの対策が公害管理局を弄するための甘言ではないことをどうやって信じればいいのだろうか。工事を受注する者たちは費用に対する責任を負っていないのである。

問題はまだある。記事の中でイアン・ギル氏は影響を最小限にとどめるために緩衝地帯を設けると述べている。本件のような大規模なプロジェクトの責任者たちが、ともかく処理施設の建設を決めてしまい住民が騒げば問題を解決する努力をするといった短絡的な態度をとることはまったく信じがたい。

これはADBの政策をないがしろにする深刻な問題である。クロンダン区では処理施設の建設前に環境影響評価が行われていないのである。

イアン・ギル氏はクロンダンの状況について十分に理解されていないのかも知れないが、住民は自分たちが住んでいるところに処理施設を建設することは公正を欠くと思っている。実際、本件は二つの県にまたがる二つの区に住む40000人以上の住民に影響を及ぼすだろう。イアン・ギル氏が言うような20人から40人程度ではない。

私たちの主張や態度は当初から明確なはずである。クロンダンの住民は処理施設の建設自体に反対したことはない。処理施設と建設場所と具体的仕様に賛成できないのである。現在建設中の処理施設は重金属や有害物質すら除去できない。他にも悪影響が懸念され、環境、生物多様性、そして漁業に依存する住民の生計の破壊につながる可能性がある。

私たちはこれまで多くの政府機関やADBにプロジェクトの中止を申し入れてきた。しかし、建設工事が始まって以来何らの説明も受けてはいない。住民には意志決定に加わることを許されていない。ADBは透明性の確保、不正行為の防止、環境影響への配慮、ガバナンス(良い統治)の保持などの課題に目もくれず耳も貸さないつもりなのだろうか。

私は強く言っておきたい。クロンダンの住民は自分の頭で考えることができる。環境保全の名の下に行われるプロジェクトが起こす環境破壊にビクビクしながら生活したくないのである。

本プロジェクトに融資を行っているADBに現地の様子をもっと理解していただきたい。宣伝文句に踊らされないでほしい。指摘されてきた問題点に関して独自の調査を行うべきである。ADBは一貫してガバナンスの保持を主張してきた。主張を実行に移すべきである。

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