メコン河開発メールサービス 2000年12月27日
タイのサムットプラカン汚水処理プロジェクト(アジア開発銀行と日本政府が融資して建設中)において、ついに負傷者が出ました。24日から抗議住民グループ500人ほどが、施設に通じる唯一の道路を封鎖し、環境への悪影響と土地買収をめぐる汚職の疑いが解決するまで、工事の中断を求めていました。タイの新聞によりますと、これに対して、施設の労働者は道路封鎖によって食料や水の供給が絶たれたことや、抗議住民による言われなき罵倒に反発して、26日昼、約100人が鉄棒などで抗議住民を襲撃し、住民側に10人の負傷者を出したということです。抗議住民にとって、道路占拠の目的は労働者への抗議ではないだけに、こうした事態になったことには胸が痛みます。一方で、労働者は建設現場と外を自由に往来できていたという情報もあり、新聞報道がどこまで正確なものか、独自に調査をしたいと思っています。またこれを機にした警察などの当局の介入による抗議住民の強制排除も懸念されます。
労働者との衝突の真相や当局の対応などが続報として流れてきましたら、またお伝えします。
以下はバンコクポストの記事をメコン・ウォッチの福田健治が翻訳しました。
Sunthorn Pongpao and Anchalee Kongrut
Bangkok Post Dec. 27, 2000
昨日(26日)、汚水処理施設の抗議者と労働者が衝突し、10人が傷を負った。衝突は、(サムットプラカン県)バン・ブー郡クロンダン区の建設現場前で起こった。
怪我をした人の大部分が、日曜日(24日)から座り込みを行ってきた抗議者である。このグループは、環境影響や汚職の疑いなどの疑問が解決するまで、230億バーツのプロジェクトを一時中止するよう求めていた。
抗議者は、正午前、棒や鉄棒で武装した約100人の労働者に攻撃されたと語っている。
プロジェクトの反対者は、建設現場を守っている警察は攻撃を止めるための努力を何もしなかったと言っている。衝突は約10分間続き、けが人は近くの公立の保健所へと運ばれた。
傷を負った人の中には次のような人がいる。Somsak Charnsa-morn(55)は頭部に5針の傷、Sorapong Jaemchan(24)はあごに3針の傷、Renu Saenrak(56)は頭部に4針の傷、Somsak Paisri(30)はあごに4針の傷、Prayat Panthapは左眼近くに4針の傷。
抗議者は苦情をクロンダン警察に持ち込み、労働者への措置を要求した。証拠として、乱闘の中で奪った50本の鉄棒と硬い物体を提出した。労働者や現場監督者は、彼らが攻撃を始めたという事実に反論しなかったが、(建設地への道路の)封鎖の結果、極端なプレッシャーを受けてきたと語っている。
労働者の多くが、2日間食料と水へのアクセスを拒否されたため、空腹と疲れを訴えている。抗議者は労働者を現場に閉じ込め、罵り続けていた。カムペンペットから来たSasithorn Malai(35)は、彼女と二人の子どもは2日間の間ほとんど何も食べず、入浴もしていないと話した。
「私たちは惨めです。連中は(現場を)封鎖すると警告しませんでした。私たちは食べ物もお金もありません。抗議者は私たちを外に出してくれません」。
先だって、抗議者は50台の水を載せたトラックが封鎖を通ろうとするのを止めた。抗議者は、水が飲用ではなく建設用であり、またトラックが建設現場にさらに人を連れて行くのではないかと疑っていたという。抗議者は、労働者たちは食料を得るために自由に通行できると語っている。
警察は、攻撃を見逃したことを否定した。Pol Maj Nirand Pitakatは、攻撃がシフト交代時に始まったため、警察の注意を引かなかったと説明した。彼は、30人の警官が現場に居合わせ、近隣県から増援が駆けつけたと語っている。
県知事のSomboon Suksamranは、当局は暴力を防ぐべく最善を尽くしたと言っている。Somboon知事は、抗議している村人と問題を話し合い、要求を検討するために様々な努力を行うと約束した。
首相は忙しいスケジュールのため来れないが、政府高官が村人と話し合うだろう。(タイ政府科学技術環境省の)公害管理局がプロジェクトを監督している。局長のSirithan Pairojboriboonは、事態を調査したが、コメントは拒否した。しかし、水質管理課長のYuwaree Innaは、建設を停止せよとの要求について、まだ何の決定もなされていないと話した。彼女は、1000人以上の労働者が強いストレスの中現場に残されており、更なる暴力がふるわれるのではないかと懸念していると述べた。
Yuwaree氏は、抗議者が封鎖を撤去するよう求めた。「他者の権利を侵害するのは止めてください。そうしたら対話を行うことができます」