タイ汚水処理＞タイ英字紙社説

メコン河開発メールサービス　2001年1月3日

昨年末から、タイのサムットプラカン県の汚水処理問題（アジア開発銀行と日本政府が融資して建設中）に関するニュースが多くなっています。問題が未解決のまま、建設工事だけが進められている現状を憂える声は日増しに強まっています。新年早々、バンコクポストが社説でこの問題を取り上げました。以下はその邦訳です。

社説：クロンダンが悪しき先例を作る

2001年1月3日、バンコクポスト

サムットプラカン県バンボー郡に建設中のクロンダン汚水処理は、透明性と人々からの参加なしに実施された政府プロジェクトの新たな例になってしまっている。そしてだからこそ、30%が完成したプロジェクトが近隣の住民から強硬な抵抗に直面していることは全く驚くことではなかった。

このプロジェクトは、元々バンプー郡に計画されたいたわけだが、1995年に第1次チュアン内閣によって、また翌年バンハーン政権によっても承認された。当初の費用は130億バーツと推計されたが、計画していた場所で土地が不足していたことと経済危機の結果、建設予定地がクロンダンに移された際には300億バーツに跳ね上がった。

プロジェクトが地域住民の抵抗に直面し始めたのはクロンダンにおいてである。そこの人々は数十年にわたって貝の養殖と漁業によって生計を成り立たせてきた。人々はプロジェクトによって生活が壊されるだろうと考えている。もう1年以上にわたって、しばしばプロジェクトへの抗議行動が起こされた。請願がプロジェクトへ資金を出している政府やアジア開発銀行（ADB）に提出されたが、ほとんど成功していない。土地の売買価格が非常に高額だったため、プロジェクトへの土地売却に絡む汚職の可能性を調査するように国家反汚職委員会に要求した。しかしまたしても人々の声は耳を傾けてもらえなかった。その一方で、何も問題がないかのように建設だけが続いている。

汚水処理プロジェクトは基本的に咎められるべきことではない。またそうした施設の必要性は、サムットプラカン県のような工業県では一層大きいし、それは近隣の人々の生活の質に寄与するだけでなく、全ての生活排水と工業放出物の最終到着地点である湾の水質のためでもある。サムットプラカン県には1万以上の様々な規模や種類の工場があり、最も汚染された県の1つというありがたくない評判をもらってきた。

クロンダンプロジェクトの問題は、プロジェクトそれ自体が悪いとか、潰すべきだとかいうものではない。問題は、プロジェクトが普通ではない状況の下で行なわれ、公の協議に開かれていなかったことである。建設予定地が移された時に、環境影響評価は行なわれなかったし、土地の価格の高さが、権力にある誰かが取引から非常にいい儲けをした疑いにつながっている。

費用超過にはチャオプラヤ川の下を導管を敷設したり、中央処理場とこのサービスを利用する工場とを結んだりするための非常に高い費用が含まれているが、それによってプロジェクトを実施不可能にする恐れがある。最終的には、高い運営コストという重荷を課せられた初期の水処理施設のように廃棄されるかもしれない。あるいは、県内のほとんどの工場がすでに自前の処理施設を持っている（古いものだが、依然として稼動する状況にある）ことを考えれば極めて現実的な可能性があることだが、せいぜい能力以下で運転することで終わるかもしれない。

そしてそれゆえに国は処理施設の運転に補助金を払わなければならない結末になるかもしれない。

しかし、このプロジェクトの最も気にかかる部分は、プロジェクト所有者である汚染防止局（Pollution Control Department）の行動のようである。この局は環境問題に関する国家レベルの規制機関だが、環境影響評価すら実行させようとしたことがなかった。これは弁解の余地はない。愕然とするような事例を作り上げている。

プロジェクトを取り巻く論争からすれば、クロンダンの人々は、当然の権利として、プロジェクトに関する難しい疑問を投げかけ、その答えを求める立場にある。汚染防止局は、住民たちの懸念を晴らそうとするべきである。それは、プロジェクトが住民の生活の脅威ではなく、実際には住民生活の改善に効果があるという確証や証拠を提示することに違いない。汚染防止局の今現在の緊急の責任は、自らが奉仕すべき住民たちの信頼と信任を取り戻すことである。