メコン河開発メールサービス 2001年1月18日
相変わらずタイのサムットプラカン県汚水処理プロジェクト問題についてです。
タイの超党派の上院議員102人が、このプロジェクトを融資したアジア開発銀行(本部マニラ)に対して、見直しを求める請願書を提出しました。上院議員は200人ですので、過半数を超えています。バンコクポストの記事を、メコン・ウォッチの福田健治が翻訳しました。
Bangkok Post, Jan. 18, 2001
Ploenpote Atthakor and Wut Nontarit
複数の上院議員が、サムットプラカン県のクロンダン汚水処理プロジェクトを糾弾した。上院議員は、プロジェクトが自給自足のコミュニティの生計を破壊するだろうと述べている。
102人の上院議員が署名した請願書は、昨日、プロジェクトへの融資者であるアジア開発銀行(ADB)に提出された。請願書は、プロジェクトの見直しを強く求めている。
署名の中には、上院環境委員会委員長のPanat Tasneeyanondや、Jon Ungphakorn、Kaewsan Atibodhiなどが含まれている。
上院議員たちはADBに対し、ADBの反汚職・グッドガバナンスといった政策に従って、このプロジェクトへの99億バーツの融資を再考するよう求めている。
ADBは、汚職疑惑、特に有力者や政治家を潤したと考えられている土地購入疑惑に悩まされているようなプロジェクトを支援するべきではない、と上院議員たちは述べている。
上院議員はまた、新政権に対し、汚水処理施設を再検討するよう要求していくと誓った。
ウボン・ラチャタニ県選出のNirand Pitakwatchara上院議員は、プロジェクトはADBが支持している「人間中心の開発」に反して行われていると語った。融資をすることで、ADBは地域住民、生計、そして地域経済の破壊に寄与している、と彼は言っている。
バンコク選出のChirmsak Pinthong上院議員は、処理施設からの大量の処理水が、漁業、特に貝の養殖を脅かすだろうと語った。
汚染は、大部分が工業から発生している。工業が生み出した問題を地域住民に押し付けるのはフェアでない、と彼は述べた。
彼は言う。「汚染者負担原則は、ここでは広まっていない。タイ当局は各工場に対して、汚染の発生源において排水を垂れ流しにしないよう法律を守らせることができていない。だからこのプロジェクトが計画されたのだ。」
処理システムは、汚水中の重金属の内95%しか処理できず、残る5%は放出され、農業地帯であるクロンダンを廃棄物処分場に変えてしまうだろう。
「このシステムが採用している好気性消化法(aerobic digestion)は、家庭排水に適したものだ。(工場からの)重金属の処理は大問題となるだろう」と、ナコン・ラーチャシーマ選出のKraisak Choonhavan上院議員は言う。
公害管理局(PCD)の役人たちは、上院議員は偏見を持っていると述べている。PCD水質管理課課長のYuwaree Innaは、議員の大部分はPCD当局とこの件について議論したことがないと言った。
「私たちは、全ての契約や関連文書を公開する用意がある」と彼女は言っている。
バンコクポストからの問い合わせに対するメールでの回答で、ADBの現地事務所アドバイザーであるCraig Steffensenは、プロジェクトが環境を改善することに自信を見せている。
「このプロジェクトでは、汚水の発生源・最終処理地点の双方で、汚染を最小化する統合的なアプローチが取られている。私たちは有機汚染、有毒廃棄物、重金属のレベルが格段に減少することを期待している」。彼は、ADBがプロジェクトへの融資において反汚職及びグッドガバナンスの政策に従っていないという非難を否定した。
「私たちは政策と業務手続を守っている。何ヶ月前、クロンダンの村人から同様の苦情を受けたとき、私たちは全体的なレビューを行い、そのような違反はないとの結論に至った」と彼は述べた。