メコン河開発メールサービス 2001年5月6日
たびたび問題にしていますタイの2つのプロジェクト=サムットプラカン県の汚水処理プロジェクトと、プラチュアップ県の石炭火力発電所計画について、タイ上院の環境委員会は、環境や地域住民生活への影響が懸念されるため、中止すべきだという勧告を上院に提出しました。
サムットプラカン県の汚水処理プロジェクトは、日本の円借款とアジア開発銀行(日本が最大の援助国)の融資を受けて事業が進められています。またプラチュアップキリカン県に計画されているヒンクルット石炭火力発電所を進めるUPDC社の最大株主はトーメンで、日本の国際協力銀行(JBIC)が融資を打診されています。
日本の国際協力銀行が深く関与している2つのプロジェクトが、タイでは大きな問題になっています。以下、上院環境委員会の勧告を報じたタイの2つの英字新聞の記事の翻訳です。
Bangkok Post、2001年5月4日
上院の委員会は、タイ-マレーシアガスパイプライン、サムットプラカン県のクロンダン汚水処理、それにプラチュアップキリカン県の石炭火力発電所の3つの巨大プロジェクトの見直しを強く要請した。
(上院)環境委員会は、政府はこれらのプロジェクトが、地元の人々の目から見て甚だしく正当性に欠けている状況の中で、それを実施するかどうかを考えるべきであると述べた。
Panas Thasneeyanond委員長は、もしこれらのプロジェクトが実施されれば、小規模な漁民などの地元の人々が生計を維持する能力を失い、環境が打撃を受けることになるだろうと述べた。人々は自分たちに発言権がなく、プロジェクトは透明性に欠けていると感じている、と委員会は述べている。
これらのプロジェクトは地域の対立を広げてきた。
石炭火力発電所は、賛成派と反対派の間で暴力的な対立につながってきた。公害防止局(PCD)は少なくとも2つの法律に違反して、クロンダンの(汚水処理)プロジェクトを推進した。それはIndustrial Work ActとEnvironmental Quality Enhancement Actである。「汚水処理施設の建設は、Industrial Works Departmentからの許可も、環境影響評価調査もなく始まったと考えられる」「許可証は建設が始まってから発行された」とPanas委員長は語った。
パイプラインの推進では、タイ石油公団とトランス・タイ・マレーシアが新しいルートなどの可能な代替案について言及してきた。
本日上院に提出された委員会の見解は次のようになっている。クロンダン汚水処理施設は小規模な施設に分散させるべきである。石炭火力発電所は、需要の40パーセントを超える余剰電力を考えると実行可能ではない。もしプロジェクトを進めるなら、委員会は燃料を石炭からガスに変更するように提案した。それによって開発業者であるUPDC社とガルフパワー社に新しいプロジェクトサイトを選ぶように促すことになる。パイプラインについては、地元の人々にとってもっと受け入れられるものにする方法が見つかるまでは、凍結すべきである。
委員会は、「希望リスト」を実現させるには限られた力しかないことを認めている。「私たちができることは、閣僚に疑問を投げることである。しかしながら、問題のプロジェクトが最終的に止められるかどうかは、人々の力にかかっている」、Panas委員長はそのように述べたあと、クロンダンの人々は法律違反を行政裁判所に提起できるだろうと付け加えた。
現在問題になっている環境に関わる対立は、誤った法律の構造に起因していると、Panas委員長は述べた。「私たちは環境に関わる不平に攻撃されているときに、この分野でできることはほとんどないのだ」。
しかしながら、彼が委員長を務める委員会は問題解決を決意した。特に地元住民の参加に関する法律についてである。これは住民たちの民主的な権利であるだけでなく、多くのプロジェクトの正当性がよりどころとする要なのである。
The Nation、2001年5月4日
上院の環境委員会は昨日、環境と地域社会に負の影響が出る可能性があるため、政府は論争のある2つのプロジェクトープラチュアップキリカン県の石炭火力発電所とサムットプラカンの汚水処理施設ーを中断するように勧告した。
ヒンクルットの1400メガワットの発電所は、政府によって認可された7つの独立発電事業者(IPP)の1つであるUPDC社によって開発されている。12億ドル(546億バーツ)のこのプロジェクトは、発電用の燃料に石炭を使うことでひどい環境影響が起きるだろうと懸念している周辺地域社会の抗議によって、何年間も遅れている。建設は元々1998年初頭に始まるはずだった。
委員会のPanat Tassaniyanon委員長は、状況の変化が2つのプロジェクトの正当性を無効にしてしまった、と語った。
タイと外国の投資家は、西部海岸県を国のスチールベルトにしようという政府の計画を支持して、発電所をサポートした。しかしながら、経済危機がプロジェクトを不適当なものにし、40パーセント以上の余剰電力を抱えさせることになった。
委員会は、プラチュアップキリカン県をエコツーリズムや漁業、それに小規模農業の持続可能な開発の可能性があるところと見なした。
委員会はまた、政府はバイオマスなど公害問題を生じさせない他の発電のための方法を検討するように提案している。
政府はサムットプラカン県の汚水処理施設の建設は延期すべきであり、そうでなければ、契約業者と地元住民の対立は暴力事件にまでエスカレートしかねない。委員会は、政府は1992年の工場法を執行して、全てのプラントが自前の汚水処理システムを建設するようにさせ、臨海県の人々の生活に悪影響を与えないような小/中規模な汚水処理施設に変更すべきであると述べている。