メコン河開発メールサービス 2001年6月22日
東南アジア最大の汚水処理施設のよる社会環境影響や開発のプロセスが問題になっている、タイのサムットプラカン汚水処理プロジェクトについて、被影響住民の提訴を受けたアジア開発銀行(ADB)理事会のインスペクション委員会は、本件についてインスペクションを実施するように理事会に対して勧告しました。インスペクションでは、プロジェクトをめぐってADBの政策違反について調査が行なわれます。
ADBが2億3千万ドル、日本政府が70億円の円借款を拠出している本プロジェクトの建設は新たな局面に入りました。以下は、メコン・ウォッチ福田健治の報告です。
ADB理事会のメンバーで構成されるインスペクション委員会は20日、問題となっているサムットプラカン汚水処理プロジェクトについてインスペクションを行うよう理事会に勧告しました。インスペクションでは、委員会が選定する3人の専門家が、本プロジェクトにおけるADBの政策違反を調査し、理事会に報告することになります。
委員会の報告を受け、理事会は7月11日にインスペクションを行うかどうか決定します。インスペクション実施が決定されれば、インスペクション委員会は調査メンバーの選定などのプロセスに入ることになります。
海外からの情報や日本政府筋によると、インスペクション委員会がインスペクション実施を勧告した以上、理事会でもこれに沿った決定が行われるであろうとのことです。また、日本のADB理事もインスペクション実施を支持するものと予想されます。
インスペクションが行われればADBにとって初のケースとなり、ADBのアカウンタビリティメカニズムに関する議論の進展が期待されます。しかし、実際にどのようにインスペクションが行われるのか、結論を受けてどのような措置が取られるのか、調査中のプロジェクト停止はありえるのかなど、まだまだ課題は山積みです。
今後は、理事会でインスペクションが決定されるよう監視すると同時に、今後のインスペクションのプロセスについて地域住民やNGOと協議しながら働きかけていく必要があります。