メコン河開発メールサービス 2001年6月23日
日本政府とADBの融資で建設が進められるタイのサムットプラカン汚水処理プロジェクトについて、様々な動きが出ています。ADBとタイ政府が中心になって行ってきた専門家による見直しが終了しました。かねてから独立性や透明性に問題が指摘されていた見直しチームですが、最終段階で最も重要な漁業を担当しているピチャイ氏を蔑ろにするなど、独立見直しチームの正当性に決定的な疑念をもたらす結果になったようです。
以下バンコクポストの記事をメコン・ウォッチの福田健治が翻訳しました。
Bangkok Post, 17 June 2000
アジア開発銀行(ADB)は、サムットプラカン汚水処理プロジェクトへの融資を継続する。独立専門家が、プロジェクトが「技術的に適切」としたためだ。
ADBとタイ政府によって雇われた独立見直しチームは、このプロジェクトがタイで最も汚染のひどいサムットプラカン県の汚水処理問題を解決できるという公害管理局の主張に同意した。
ADB農業・社会セクター西局長の関あきらは、「私たちはこの報告書に大変勇気付けられました。これが、関係者、特に市民社会の間でのプロジェクトのよりよい理解につながることを期待します」と述べた。
国際協力銀行も融資しているこのプロジェクトは、下水管網整備・ポンプ設置・海岸沿いの処理施設建設を含む。
7億2000万ドルの費用の3分の1を供与するADBは、「報告書は、プロジェクトが採用する集中処理法が、地域の汚染を解決する唯一の実行可能な選択肢であると結論付けた」としている。
独立見直しチームは、デザインと操業について、26の改善策を勧告した。「私たちは独立見直しチームの成果を真剣に受け取り、慎重に検討します。可能な限り改善策を実施する予定です」と、タイ政府公害管理局長のSirithanPairoj-Boriboonは述べた。
報告書には、(訳注:チームの一員であり)プロジェクトに反対していたブラパー大学海洋研究所長のPichai Sonchaengの見解が含まれなかった。
5月3日に行われた最初の説明会でPichai氏は、処理施設からの排水による塩分濃度の低下によって、沿岸での貝養殖業がダメになる危険性があると警告した。彼は、貝養殖の年間生産量は、公害管理局による推定の10倍である5万トンに達するのではないかという。
独立見直しチームの漁業報告書の責任者であったPichai氏は、金曜日の記者会見に現れなかった。
プロジェクトに2年以上反対を続けている地元反対派は、チームの所見に不満を示している。
「チームの結論には驚いていません。独立見直しチームには元からそれほど期待をしていなかったのです。チームは地域住民の同意なしに、ADBによって設立され、資金もADBから来ているのです」と、地元活動家のリーダーであるDawanChatarahassadiは言う。
ダワン氏は、地元の抗議者たちは、マニラのADBがプロジェクトの調査を行う「インスペクション委員会」を設立するよう働きかけつづけていくと語った。
「インスペクション委員会の調査は、はるかに詳細であり、透明性や市民社会との対話に応じてくれるはずです」と彼女は述べた。
ダワン氏は、ADBが透明性・誠実性・地域住民の利益を含むADB自身の規範に沿って行動するよう希望している。