メコン河開発メールサービス 2001年7月11日
タイで大きな問題となっているサムットプラカン汚水処理プロジェクト(ADB融資2億3千万ドルと70億円の円借款を供与)について、住民たちの訴えを受けたアジア開発銀行(ADB)理事会は、このプロジェクトがADBの政策や手続きを遵守して進められたかどうかを独立した専門家パネルによって審査する手続きに入ることを決定しました。ADBが独立審査を実施するのは、これが初めてです。すでにタイ・アメリカ・日本・オーストラリア・カナダのNGOは独立審査が公正に進められるように、パネルの選出やプロセスの透明化、住民とADBマネージメントの機会均等などについて要望書を準備しています。その一方で、建設工事は着々と進められていますので、こちらの一時差し止めも合わせて求めていくことにしています。
その半面、協調して融資している日本の円借款には、こうした住民の声を直接反映する仕組みがありません。今後、日本のODAの中にどのような紛争解決のメカニズムを作っていくのか、現在進められている国際協力銀行の環境社会ガイドラインの改訂作業でも大きな論点となっています。
以下は、昨日アジア開発銀行が出したプレスリリースの翻訳です。
ADBニュースリリース
No. 069/01 2001年7月10日
マニラ、フィリピン(2001年7月10日)−アジア開発銀行(ADB)の理事会は、タイのサムットプラカン汚水処理プロジェクトの審査(インスペクション)を承認した。インスペクションは外部の専門家からなる独立した委員会(パネル)によって行なわれる。独立パネルはADBがプロジェクトの設計や実施において、自らの施行政策や手続きを遵守していたかどうかを判断する。インスペクションは、1995年12月にADBの理事会で承認されたインスペクション機能政策に沿って実施される。
インスペクションはクロンダン市長を含むクロンダン地区の3人の居住者によって訴えられた書面の要請に従う。そこ中で3人はADBは自らの政策を遵守せず、それによって直接的で物理的な被害をクロンダンの住民にもたらす恐れがあると主張している。
これはADBによって承認された初めてのインスペクションとなる。インスペクション機能は、ADBが支援した公共セクターのプロジェクトによってマイナスの影響を受けると訴えている人々に対して、(ADBから)独立したフォーラムを提供するものである。このフォーラムを通じて、ADBが自らの政策や手続きに沿って事業を行なわなかったという指摘について、独立した調査をするように人々は求めることができる。
理事会がインスペクションを承認したこと自体は、ADBが政策違反や手続き違反をしたという主張を認めるかどうかという判断を意味していない。理事会承認が意味しているのは、要請者から挙げられた問題点が、議論すべきことであり、専門家からなる独立パネルによって調査すべきだということである。
ADBのインスペクション政策では、専門家パネルは訴えられた内容の事実関係を徹底して調査することになり、その中には、訴えの立証も含まれる。その後パネルは確認事項をADB理事会内のインスペクション委員会(Committee)に報告し、同委員会はパネルの報告と、それに対するADBの回答、更に同委員会自身の勧告を合わせて理事会へ提出し、どのような行動をとらなければならないかを決定することになる。