メコン河開発メールサービス 2001年7月11日
公共事業の監視と住民参加は日本だけでなくタイでも重要な問題です。まあタイの場合は、お金の出所が海外のODAだったり、外国企業の投資だったりするので、そのあたりの意思決定の重層さが難しい点ですが。タイでは1997年憲法で大型の公共事業に対して公聴会が義務付けられていますが、半面、その実効性に対する疑問も多く出されています。
以下、タイの英字新聞の最近の記事を、メコン・ウォッチの福田健治が翻訳しました。
July 6th, 2001
Piyanart Srivalo, The Nation
司法大臣のPongthep Thepkanchanaが昨日語ったところによれば、現在草案段階である公聴会法案は、政府のプロジェクトによって影響を受ける人々が、プロジェクト開始前に意見を述べる一連のフォーラムを作り出すことを目的としている。
法案では、公聴会を開催するか否かについて、関連省庁の裁量権を認めないとPongthepは述べた。
公聴会に関する首相府規定では、プロジェクト開始前に公聴会を開催することが必要かどうかについて、関連省庁が決定権限を有している。
草案は首相府規定に取って代わるものだ。
官僚はしばしばプロジェクト前の公聴会を行わず、意見の対立からくる争いを悪化させる結果となっている、とPongthepは言う。
首相府のPanit Nitithanprapas事務次官が火曜日に閣議に報告したところによれば、1996年から2000年までの間、政府機関は大規模プロジェクトに関して6回の公聴会を開催した。
開催されたのは、ナコンサワン県のダム建設、プラチュアッブキリカン県の2つの石炭火力発電所(*1)、サムットプラカン県の火力発電所、タイマレーシアガスパイプライン、及びバンコクのスカイトレインについてである。
論争が起きているのは、公聴会の手続きについての無理解と、言語上の誤解であるとPanit次官は言う。タイ語の「pracha pijarn」(一般の人々による審査 *2)は誤解を招きやすく、「意見を聞く」を意味するタイ語「rab fang khwamkhid hen」に置き換えることを彼女は提案している。
*1プラチュアップキリカン県の2つの石炭火力発電所には国際協力銀行(JBIC)が融資を検討しているほか、トーメンなどの日本企業が投資しています。
*2「プラチャー・ピチャーン」(以下タイ政治の専門家の解説)
プラチャーは民衆、人々、人民といった意味のパーリ語語源の言葉、ピチャーンは審議するという意味の言葉で、これもパーリ語語源でプラチャー以上に相当固い感じの言葉です。審議といっても、相談というよりは、審査するといったニュアンスが強く、悪い点についてもしっかりと審査するといった感じのある言葉です。ピチャーンにプラチャーをつけると、プラチャーによるピチャーンという意味になります。つまり「一般の人々による審議(または審査)」と言った意味です。タイ語は一般に後ろの語が前の語を修飾するのですが、パーリ語源の語を複数くっつけて合成語を作る場合には、タイ語ではなく、パーリ語の語法に従って、修飾語を被修飾語の前にもってくる場合があります。プラチャー・ピチャーンもその一例で、このような語順にすると、固い専門用語という感じになります。