メコン河開発メールサービス 2001年7月17日
国際的に論議を呼び続けているラオスのナムトゥン2ダム計画をめぐる動きが急になっています。
タイのタクシン首相が6月にラオスを訪問した際に、このダムからの電力を購入する契約(PPA)に賛同しました。契約自体は非常に細部までつめるので、首相が合意したからといってスムースにいくかどうかはわかりませんが、前進したことは事実でしょう。PPAが結ばれると、次はラオス政府の出資分に対する融資と、企業のリスクを回避するための保証を、世界銀行から受けるための交渉が活発化することになります。ご承知の通り、日本は世界銀行第2の出資国で、本プロジェクトの調査費用の一部もODAで援助しています。
ナムトゥン2ダム計画は、93年から本格化したプロジェクト準備によって、森林やそれに依存した村人の生活を破壊してきました。今は荒廃した森林と、生活手段を失いかけている村人がダム予定地に残されています。環境影響調査は、森林伐採や一部住民の移転などが始まったあとに行なわれ、プロジェクトを支持する結果が出されています。ダムの準備によって環境・社会状況を大きく悪化させた上で調査が行なわれ、それに基づいてプロジェクト審査をするというやり方を世界銀行が認めるのかどうか、ワシントンの動きを含めてウォッチする必要が高まっています。
以下、タクシン首相がラオスを訪問した際の新聞記事です。
2001年6月15日
The Nation
タイは、ラオスのナムトゥン2水力発電ダムからの将来の電力を購入する買電合意(PPA)に署名することに合意した。これによってダムの投資家は今年の終わりまでに世界銀行からの融資保証を求めることができるようになった。
長く遅れていたPPAは、水曜日(13日)にタイのタクシン首相がラオスを訪問した際に合意された。ラオスのソムサワット副首相が述べたところでは、ラオスのブンニャン首相がタクシン氏に対して国営発電公社(EGAT)が7月中にPPAに署名するように求めた。
ソムサワット副首相は、PPAはそれによってラオス政府や他の投資家が、年末までに世界銀行からの融資を求めるのをサポートする文書として使えるようになると語った。
「もしEGATが7月までに署名しなければ、今年中に融資を求めることができなくなり、2006年12月までにプロジェクトを完成させることもできない」とソムサワット氏は述べた。
スラキアート外務大臣は、「我々はまずPPAに署名することに合意したのだから、投資家は銀行から融資を求めることができる。我々はお互いサポートできることは何でもする」と述べた。
12億ドルにのぼるナムトゥン2ダムは、35%をフランス電力公社が所有し、もともとは2006年に完成する計画だったが、建設に関わる問題やタイの停滞した電力需要などのため、PPAは遅れていた。ラオス政府関係者によると、EGATに対して、ラオスの変電所の建設コストの半分を負担することと、投資家に対するダム譲渡期間を現状の25年から30年に延長することを求めている。
Bangkok Post, 2001年6月15日
Saritdet Marukatat
タイはラオスから購入する予定だった電力の半分だけ満たし、残りは電力需要と経済成長がその必要性をもたらすまで中断する、タクシン首相は昨日そのように語った。
産業を注視している人たちはこの発表をラオス政府への精神的打撃と見ている。というのも、ラオスは自らの開発資金のための現金収入をタイへの買電にひどく依存しているからである。
タクシン氏がビエンチャンでタイの投資家に語ったところでは、タイ政府は、ナムトゥン2水力発電プロジェクト以外のラオスのプロジェクトから電力を購入する交渉を待ってもらうことになるだろう。
ナムトゥン2プロジェクトはタイに900メガワットの電力を供給し、それによって、ラオスからの3つのプロジェクトから延べで1500メガワットの電力購入につながる。
前政権ではタイは3000メガワット分の電力購入に関与することになっていた。その決定は、タイの投資家に対して、発電した電力を将来タイに売ることができるという望みを持たせ、ラオスにおけるダム建設の許可を求める動きを促進させた。
電力購入の中断にも関わらず、タクシン氏はラオスのカウンターパートに水曜日(13日)に対して、タイ政府は今でもラオスとの全ての合意を尊重していると語った。昨日、彼はそのメッセージを繰り返したが、自分たちの支援は「タイにとっての重荷ではない」と付け加えた。
ナムトゥン2プロジェクトは、投資家連合によって資金を受けており、そこにはタイの発電会社(EGCO)やイタリアンータイ社が含まれている。
タクシン氏の発言は、会議においてEGCOの代表者をほっとさせた一方で、ラオスの他のダムに投資しているタイの企業は険しい表情なった。ナムグム3ダム、ナムトゥン3ダム、それにホンサー褐炭発電プロジェクトはすべてタイの企業が何がしかの出資をしている。
EGCO社のSithiporn Ratanopas社長(managing director)はタクシン政権がラオスの電力投資について対する戦力をはっきりさせたことを賞賛した。彼はタイ発電公社(EGAT)やナムトゥン2プロジェクトの投資家が、来月(7月)中に価格に合意し、今年の12月までに公式に契約に署名できることに期待を表明した。そうしればダムは2007年に発電を始めることができるだろう。
他のプロジェクトに投資しているタイの企業家は、タクシン氏を説得してもっと多くの電力を購入するためラオスとの交渉を継続するよう働きかけた。ラオス人やタイ人の雇用の増大、タイからの建設資材の輸入、それに安い電力料金による利益、などを引き合いに出した。
ホンサー褐炭発電プロジェクトのSukit Ngan-dhavee氏はタクシン氏に対して、ホンサーを含めた他のプロジェクトは「列車に乗り遅れた」のかと尋ねた。「私は率直なので」、タクシン氏は言った、「そうです、あなたがたはもう列車に乗り遅れたのです。しかし、それは必ずしも、将来的に新しい列車がないということではありません」。
タクシン氏は将来について何ら保証をしなかったが、「我々は公正であることでしょう」と述べた。