メコン河開発メールサービス 2001年8月30日
日本の企業(トーメン、中部電力、豊田通商)が出資する合弁企業が、タイ南部 のプラチュアップキリカン県にヒンクルート石炭火力発電所を建設しようとして います。環境への懸念や現地住民の強い反対にも関わらず、日本の外務省(現地 大使館)は、「日本企業の利益を守る」ために、慎重な姿勢のタイ政府にプロジ ェクトの推進を働きかけています。更に、資金源としては特殊法人の国際協力銀 行が最有力視されています。また、近くのボーノックという別の石炭火力発電所 も計画されていまして、こちらは三井物産が関わっているようです。
最近、発電所予定地の沿岸でクジラが確認されました。これまでの環境影響評価 では、クジラへの影響等は調査の対象になっていませんでした。以下は、この件 に関するタイのバンコクポストの記事を、メコン・ウォッチの福田健治が翻訳し ました。
Bangkok
Post, Aug. 29th, 2001
Ploenpote Atthakor
ボーノックの環境活動家は、プラチュアップキリカン県の海は石炭火力発電所を 建設するには豊か過ぎると語っている。 活動家はタクシン首相に、プロジェクトを見直すよう求めていく。
ボーノック環境保護クラブのリーダーであるCharoen Wat-aksornは、区の沿岸に 現れた5匹にクジラは、この地域の豊かさを示していると述べた。クジラのほか にも、この海にはイルカの群れが生息している。
彼は、国家環境理事会(NEB)が承認した環境影響調査はこうした希少な海洋生 物を見落としているとして批判する。 「調査は海域には海洋動物や希少な魚は存在しないとしている。調査チームはク ジラやイルカについて知っていたのだろうか?」
NEBの承認は無効とされるべきだと彼は言う。
プーケットの海洋生物学者は、シナウスイロイルカは在来種だが、クジラはおそ らく移ってきたものだという。 科学技術環境省付きのスタッフは、バンクルート石炭火力発電所の環境影響調査 もまた問題であるという。 両方のプロジェクトとも、新たなEIAが必要だ、と彼は述べた。
「バンクルートの海は極めて豊かだ」 「この海域は小エビやサバの繁殖地である。発電所は、一旦操業に入れば、大量 の海水を海洋生物と共に冷却システムに取り込むことになる。これは大きな損失 だ」
漁業専門家のChavalit Vithayanondは、バンクルートの生物多様性は見過ごされ るべきではないと指摘する。以前は小規模な重要でない海岸と考えられてきたこ の海には、約450種の魚が存在するであろう。
しかし、EIAを精査した専門家パネルのメンバーであるParichart Siwaraksaは、 EIAが見直される可能性は低いだろうという。
彼女は、石炭火力発電所が地域の漁民に対して悪影響を及ぼすことはよく知られ ているという。パネルは損失を緩和するための基金設立を提案した。
彼女は、ヒンクルートの手付かずの自然を考えれば、発電所がヒンクルートに建 設されるべきとは思わないと語った。
漁業資源保護課長のRewat Ritthapornは、イルカやクジラはその希少性にもかか わらず、タイの法律下では何の保護も受けていないとしている。 漁業局が保護措置を避けている主要な理由は、漁民への影響を恐れているから だ。
「こうした哺乳動物がしばしば訪れる場所は豊かであり、基本的に原状を維持す るべきだ」