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パクムンダム>水門開放をめぐる闘い

メコン河開発メールサービス 2001年8月31日


1994年に世界銀行の融資で完成し、その後も被影響住民が魚の回復を求めて、ダムの水門開放を求めているタイのパクムンダムについてのニュースです。住民運動の力で、今年の6月に世界的にも稀な水力発電ダムの水門開放が実現しました。その後、魚が戻り、ダム周辺は出漁ラッシュに沸きました。しかし、水門開放の目的である、魚の調査が政府の予算措置の遅れでほとんどできていない中、水門を閉じる動きがタイ発電公社側に出ています。

以下、バンコクの邦字紙である「バンコク週報」の記事を、許可を得て転載します。最初の記事が最近のもので、後者が6月の水門開放時の記事です。


魚が戻ったパクムンダム水門再閉鎖の不安高まる
電力公社と漁民が依然対立

バンコク週報972号(2001年8月24日)

東北部ウボンラチャタニ県にあるタイ電力公社(EGAT)所有のパクムンダムは、その完成後八年間も地域漁民らから激しい抗議を受けている。

タクシン政権はこの問題の解決に向けて、住民の要求していた魚の回遊回復のための水門開放を実現。地元ウボンラチャタニ大学に、水門開放の影響や、地域の環境・社会機能回復に関する調査を委託した。

しかし「水門開放に反対する住民がいる」とするEGATは、先に政府の求めた五月十五日からの開放を六月二日まで引き伸ばした。調査自体も、予算額の決定が遅れたため、開始が水門の開放に間に合わないという事態となった。現在、水門は開かれているが、地元では「EGATが水門を九月一日に閉める」という噂が飛び交い、水門閉鎖の日程を巡って再び緊張が高まっている。

地元の漁師の話によると六月に水門が開いてから、たくさんの魚が川に戻ってきたという。生鮮市場でも、養殖魚の横に並んでたくさんの川魚が売られている。市場を歩くと「ムン川の魚だよ」と声がかかる。

NGOと住民の調べによると、百種類以上の魚がメコン川からムン川に戻ってきているという。これらの魚は、メコン川から回遊しムン川で産卵しているものと見られる。

ダム上流のシリントーン郡カムノックホー村の漁師は、「今年は水門が開いたおかげで収入が増えた。ずっと水門が開いていれば、もっとたくさんの魚が帰ってくるはず。水門をこのまま開けておいて欲しい」と訴える。ウボンラチャタニ大学の調査チームも、水門開放の延長を求めている。

結局のところ水門閉鎖のスケジュールは政府の指示次第のようだが、政府がどのような指示をEGATに出すかは、現時点で明らかにされていない。関係者からは、「首相が現地訪問してもまだ水門を開かなかったEGATが、各方面の要求を聞き入れるのか」と、政府指示の効力に対する疑問の声もあがっている。

EGATの広報部に問い合わせたところ、「政府の指示があるまで、水門を閉じることはない」との回答。しかし地元の情報によれば、EGATからの通達として「九月一日に水門を閉める」という内容の文書が村長らに配られているという。


パクムンダム 水門開き、川は出漁ラッシュ
貧民フォーラムはダム敷地占拠を継続

バンコク週報961号(2001年6月8日)

タイ電力公社(EGAT)とダム反対住民の対立が続くパクムンダムで今月二日夜(注:2001年6月2日)、水門が開きダム貯水池の水が完全に抜かれた。翌日はダム周辺で水門開放のニュースを聞きつけた二百から三百人の村人が集まり、メコン川から遡上する魚を狙って漁を行なった。この水門開放は、貧民フォーラムが政府に対しダムによって破壊された環境を回復するための調査を要求した結果行なわれたもの。住民らはダムによって地元漁業が破壊されたと訴え、ダム完成後八年間も反対運動を続けいてる。

最近まで、ダムのあるファヘゥ村の一部住民が「水門開放反対」を叫んでダムの下流の早瀬に座り込み、EGATはそれを口実に閣議決定で決まった水門開放に応じていなかった。しかし、これら住民に対し、EGATが補償として村落開発基金に五百万バーツを上乗せすることが決まり、住民らは座り込みを中止、水門が開かれる運びとなった。水門開放を求めていた貧民フォーラムによると、これらの住民は水門を開けたくないEGATから雇われ、影響住民を装って座り込みをしていたという。この話しを裏付けるかのように、EGATから高額な補償が決まっているが、真相は明らかにされていない。水の抜けたダム上流部では、ムン川に特有の地形である早瀬が水の中から顔をだし、付近の村人たちは周辺に集まって漁をしている。川岸には魚を買い付けに来る人もあり、ダム周辺は賑わいを見せている。

今後、政府に委託されたウボンラチャタニ大学の教授陣による調査チームが、現地の自然環境の回復に向けた基礎データの収集にあたることになっている。現在、ダムの水門は完全には上がっておらず、水面から数メートルのところで止められている。貧民フォーラム顧問のワニダー・タンティウィタヤーピタックさんは「閣議決定に従うのであれば、水門はダム本体より上の位置で固定されるはず。EGATは夜中に水門を下ろして魚の遡上を妨害するのでは」と語り、正しい調査が行なえない可能性がある、と懸念を表明した。

貧民フォーラムは来週、政府の定めた四ヶ月間の水門開放が確実に実施されるよう世論に訴えるため、占拠を続ける抗議村で伝統にのっとった儀式をを行なうという。これには上院議員などが招待される予定。また、EGATは貧民フォーラムが占拠している抗議村の敷地を返還するよう求めているが、フォーラム側は調査が終わるまでは現在の場所にとどまり監視する、として立ち退きを拒否している。

[パクムンダム]一九九四年に完成した水力発電ダム。メコン川とムン川の合流点近くでムン川を横断する同ダムは、建設前から漁業への影響を懸念する人々から反対を受けていた。しかしダムは世界銀行の融資を受けて完成、メコン川から回遊する魚のそ上を妨げ、地域漁業に壊滅的な影響をもたらした。ダム完成後も反対運動は続き、昨年は首相府前で二百人以上が逮捕される騒ぎとなった。ダムに反対する住民組織・貧民フォーラムは九九年からダムの敷地の一部を占拠して抗議活動を続けている。

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