メコン河開発メールサービス 2001年9月20日
タイ南部のプラチュアップキリカン県に日本企業の投資で計画されている石炭火力発電所に関するニュースです。地域住民の激しい反対にも関わらず、在バンコク日本大使館が「日本人の経済的な利益を守るため」に、タイ政府に推進を働きかけているプロジェクトです。
その一方で、信頼できる情報筋によれば、国際協力銀行(JBIC)は内々に環境社会開発室が融資の検討を始めているようです。公式には白紙の状態だと言い続けているJBICが、内々に環境審査(のようなこと)を始めていることには疑念が持たれます。
時あたかも、9月19日にJBICは環境ガイドラインの統合に向けて、外部研究委員会からの提言を受けたばかりです。内部に詳しい情報筋によれば、激しい現地の反対にも関わらず、JBICの旧輸銀セクションは、このプロジェクトの融資に前向きだと言うことです。環境ガイドラインの統合に向けて透明なプロセスを貫いたJBICがこの問題プロジェクトにどのように対応するか、いわば試金石として極めて注目されます。
以下、タイの電力当局が、反対運動で目処が立たない本プロジェクトの代わりに、古い発電所の改築を検討しているというニュースを、ADB福岡NGOフォーラムの土井利幸さん(タイ在住)が翻訳ました。これを受けて、バンコクの日本大使館が、トーメンなどの日本の投資家と共に、再び担当大臣を訪問して、推進を訴えるのではないかと懸念されます。
バンコクポスト2001年9月19日
関係者の話によると、タイ発電公社(EGAT)は、論争となっている二つの石炭発電所計画がこれ以上延期されたり中止になるようであれば、当初の計画を二年早めて2004年に老朽化した三つの発電所を改築する。
バンコク南部・北部とバン・パコン地区の発電所を改築して確保できる電力で、長く建設が遅れているプラチュアップ・キリカン県の二つの発電所から送電する予定の電力をカバーすることは可能だ、とEGATのChanapun Kridakorn副理事は語った。
二つの火力発電所計画の行く末はタクシン・チナワット首相が議長をつとめるエネルギー専門家のためのワークショップが9月27日に開催された後で明らかになると考えられている。
EGATが所有する三つの老朽化した発電所の総発電量は1300メガワットである。プラチュアップ・キリカン県のボー・ノックとヒン・クルットで計画されている二つの発電所は、地元住民と環境団体の激しい反対運動のために宙に浮いたままである。
ヒン・クルット発電所の事業主体であるユニオン・パワー・デベロプメント社は、今のままでは送電は2006年まで開始できないとし、ガルフ・エレクトリック社もボー・ノック発電所からの送電を2005年まで延期するとしている。両発電所は当初2001年から2002年の間に発電を開始する予定であった。
現在タイは国内発電の71.3%を天然ガスに依存している。政策担当者の中では、供給に支障が生じる可能性を考えると、一つのエネルギー源にこれほど依存するのは危険であると指摘する声も上がっている。他の発電源としては、石炭・水力・石油などが使われている。
天然ガスは石炭よりはるかにクリーンなエネルギーだが、価格が石油と連動しており不安定である。一方石炭の価格は安定している。2010年には発電に使われる天然ガスの割合が現在の71.3%から60%に減り、一方で石炭が15%から24%に増えると観測されている。
ガルフ・パワー社のSarat Rattanvadee管理課長は、政府はエネルギー消費計画をもっと慎重に立てるべきである、と語った。世界市場での石油価格が不安定なためである。同課長はまた、政府が同社に石炭から天然ガスへの転換を要請した場合は、最終決定を下す前にまず補償金を支払うべきであると述べた。