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[MekongWatch]メコン河委員会>流域開発計画スタート

メコン河開発メールサービス 2002年3月18日


メコン河流域開発のいわば調整役として1995年に発足したメコン河委員会(MRC)。

設立協定に謳われていた「流域開発計画(BDP)」がようやく動き出します。しかし、MRCのリーダーシップには疑問の声が根強くあります。

上流開発を進める中国とビルマ(ミャンマー)が不参加であること。資金規模が小さく、インフラ開発を進めるアジア開発銀行(ADB)に押されっぱなしであること・・・。

日本政府もADBには多額の資金協力をしていますが、MRCを担当しているのは外務省職員がわずか1人。それも兼務という有様です。

MRCがどこまでメコン河流域開発を環境面で悪影響がなく、流域住民にとって恩恵をもたらすものにできるのか・・・。以下は、MRCのクリスティンセン事務局長(CEO)の投稿です。


【フォーカス】メコンと共に生きる
地域協力が食糧安全保障のカギ:メコン河委員会が流域の開発を主眼とする計画を今日開始

ジョーン・クリスティンセン 

バンコク・ポスト 2002年2月15日

現在メコン河流域は漁業シーズンである。雨季の間に孵化した稚魚の群れは、成長した今、引いていく水の流れに乗ってメコン河本流へ何百キロ・何千キロの降河の旅に出る。

Sok Meanさんは、カンボジア中部のTonle Kraewという小さな村に住む。そこは巨大なサップ湖(トンレサップ)のほとりで、サップ湖はメコン河に流出し流域帯の一部を形成する。40歳の彼女には夫と7人の子どもがいる。彼女はメコン河を愛する。「メコン河は私にとっても皆にとっても、とても大切です。河は私たちに魚と生活の糧をもたらしてくれます。この地域に住む私たちは漁業しか知りません。魚を捕り、燻製や塩漬け、醗酵した魚、そしてプラホック(訳者注:小魚からできる塩辛のようなペースト)をつくります。だからメコン河はかけがえのない大切な河なのです。河は神様のようなものです。河が私たちを支えてくれているのです。そのおかげで私は家族を養うことができます。」

メコン河下流域で生産される米の重要性についてはよく理解されているが、魚が流域に住む人びとの食料安全保障全体の中で果たす役割は必ずしもきちんと認識されているわけはない。この地域では米と魚が村に住む人々の食料安全保障の基盤となっている。村人にとって、魚は最も貴重な動物性蛋白源であり重要な収入源でもある。

メコン河流域全体では人口一人あたりの魚の消費量は年間約20キログラムと推定されているが、ラオス・ルアンパバンの高地(訳者注:北部、メコン河に臨む)では29キログラム、またカンボジアのトンレサップ氾濫原では71キログラムにものぼる。魚のペーストなどの伝統的な生産物は、カルシウムやビタミンAなどの栄養素の貴重な源となっている。

魚と魚からできる食産物は、「アジアの牛乳」と呼んで差し支えない。そしてこの牛乳の源がおおいなるメコン河なのである。

メコン河下流域の人口は2025年までに65%増加し、およそ1億人にのぼる見込みである。これに伴い食料と水の需要の高まりも予想される。したがって、食料安全保障は河下流域四政府の共通の最重要課題なのである。

開発に関わる人々の間では、貧困削減戦略計画が開発援助プログラムの基本となるべきだとの方法論で概ね合意が得られている。そして戦略は一国レベルでの貧困削減を目標とすることが多い。この方法論は一国の文脈の中では非常に有効であるが、河川が数ヶ国にまたがり、河川のもたらす資源への依存度が経済的にも社会的にも高い地域では、開発が国境を越えてもたらす影響を十分に考慮しているとは言い難い。

こうした状況をかんがみるに、本日メコン河委員会が流域開発計画に着手したことで、1995年にカンボジア・ラオス・タイ・ベトナム政府が合意した流域持続的開発協力協定が果たすユニークな役割が際立つのである。メコン河委員会の創設を取り決めたこの協定は、法的根拠に基づいて政治的最高位によって委託されメコン河の総合的開発に取り組む唯一の地域機構である同委員会の基盤になっているからである。

1995年の協定によると、流域開発計画は概括的な計画のための手段であり、メコン河委員会はこれを青写真にして、「流域単位で実施するプログラムやプロジェクトを決め優先順位を付ける」ということである。

この計画は、オーストラリア・デンマーク・日本・スウェーデン・スイスからなるドナー国コンソーシアム(国際借款団)の金銭的援助により、今や現実のものになりつつある。

そして、メコン河下流域の開発を促進するために、流域内での各地の相互依存的成長を加速化するだけでなく、資本投下を促し持続可能な開発の堅固な土台となる新たな環境を作り出す。

また、流域開発計画は、戦略を立てるばかりでなく、合意のもとに立てた戦略を実施するプロジェクトを策定する際の枠組みともなる。これらのプロジェクトは主に国家や国境を越えた意義を持つもので、他の流域国に影響を及ぼさない各国独自の開発計画は扱わない。

鍵を握る重点分野として、灌漑農業、集水域管理、漁業、水力発電、航行・交通・河川整備、河川を利用した観光やレクリエーション、家庭用水・工業用水の供給、洪水制御・管理がある。また計画全体にまたがる課題としては、環境、人材開発、貧困削減とジェンダー関係の公正化を織り込んだ社会経済開発、住民参加がある。

今後は、下流四ヶ国政府が共通して関心を示す特徴を持つ地区が十ヶ所ほど選定される。国境にまたがる集水域、重貧困地区などが含まれるであろう。

利害関係者による対話を通して、流域開発計画はメコン河地域で初めて、情報と分析に基づいた戦略構築のための強力な枠組みを提供することになる。しかも、この枠組みは下流四ヶ国の総意を反映するといった独特の長所を備えている。また、メコン河委員会に参加することで、史上初めて、カンボジア・ラオス・タイ・ベトナム政府が一同に会し、メコン河の開発計画を策定することになる。そのメコン河は、四ヶ国が共有する天然資源の宝庫で、開発がもたらす悪影響を最小限に抑えれば、恵みをもたらすのである。

適切な管理と各国間の協力、賢明な意思決定によって、魚と米と水が今後何世代にも行きわたることになるだろう。そこには、Sok Meanさんの子ども、そのまた子どもも含まれている。

‐ジョーン・クリスティンセン:メコン河委員会事務局長

(翻訳:会津菜穂/サセックス大学アジア・アフリカ研究科)

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