メコン河開発メールサービス 2002年3月29日
このメールニュースで何度もお伝えしています、タイで大きな問題になっているODAプロジェクト=サムットプラカン汚水処理計画についてのニュースです。このプロジェクトは、日本の円借款ODA70億円と、日本が最大の資金供与をしているアジア開発銀行(ADB)が2億3000万ドル融資して建設が進められてきました。
しかし、事前の環境影響評価や住民との協議が行なわれなかったため、被影響住民がADBの異議申し立て機関である「独立審査パネル」に対して、本プロジェクトはADBの政策に違反しており、融資を止めるべきだと訴えました。
審査の結果、ADBは重大な政策違反をしているという調査結果が、ADBの理事会に提出されました。このプロジェクトは、ADBの独立審査パネルが制度化されて初めて調査をした案件で、パネルが政策違反を認定したのも初めてです。
一方のODA供与機関である国際協力銀行(JBIC)は何ら対策を講じていないばかりか、この重要な時期に担当する部長、次長、課長が人事異動するという有様です。
以下、タイの英字新聞のニュースを、メコン・ウォッチの福田健治が翻訳しました。
なお、本件をめぐっては、調査結果を受けて被影響住民がプロジェクトの中止をタイ政府に要請するなど、様々な動きがありますので、引き続き情報をお送りします。ご注視下さい。
The Nation, 27 March 2002
アジア開発銀行(ADB)の独立審査パネルは、ADBが融資したサムットプラカン汚水処理プロジェクトがADBの6つの政策・手続きに違反していると指摘した。
オランダのNGOの代表(訳注1)3人からなるパネルは、ADB融資を監査する初めての調査団である。7月から調査が行われ、結論が発表された。
パネルによれば、違反が指摘された政策は以下の通りである。
クロンダンの住民は昨日、ADBの千野忠雄総裁と12人の理事に対し、ただ誤りを認めるだけでなくプロジェクトそのものを見直すよう求めた。
「ADBはプロジェクトの審査・承認・実施の各段階で大きな過ちを犯したことが今明らかになった」と、地元住民のリーダーであるDawan Chantarahasadiは昨日の記者会見で語った。
反対グループは、明日首相府で、タクシン首相に対しプロジェクトを中止するよう求める予定だ。
「首相はパネルの見解の基づき、補償を払うことなく議論を終わらせるかもしれない」と彼女は言う。
1995年に始まった汚水処理プロジェクトの9億4800万ドルにも上る費用の内、ADBは5億400万ドル(訳注2)を提供している。活動家のPremrudee Daoroungによれば、ADBは1998年の8000万ドルの追加融資時に、ADBの政策で必要とされているプロジェクトの地域環境への影響を検討しなかった。
*訳注1:オランダのNGO代表はパネルの一人。あとの二人はそれぞれオーストラリア・台湾出身。
*訳注2:ADBの融資額は2億3000万ドル。
[2002-03-27-11:10]
NHKニュース速報
アジア開発銀行は日本の円借款などを受けてタイ政府が進めている汚水処理施設の建設事業について、環境への影響の評価を行わないなど融資を決める際の自らの手続きに不備があったとする内部調査をまとめました。
この事業は、タイ政府が日本から七十億円に上る円借款とアジア開発銀行の融資を受けて、バンコク近郊の海岸に大規模な汚水処理施設を建設しているものです。
この事業を巡って地元の住民が「貝の養殖などに影響が出る恐れがあるにも拘わらず、十分な調査が行われていない」と抗議しているのを受けてアジア開発銀行では去年から調査に乗り出していました。
アジア開発銀行の理事会にこのほど提出された調査の報告書によりますと、四年前に追加融資を決めた際に環境への影響など事業全般についての評価を行っていないなど、五つの点で銀行の手続きに不備があったことが明らかになりました。
その上で、報告書は、こうした手続き上の不備が住民の抗議につながっているとして住民との話し合いの場を速やかに設けるよう勧告しており、アジア開発銀行では近く対応策を発表することにしています。