メコン河開発メールサービス 2002年5月5日
アジア開発銀行(ADB)と日本の国際協力銀行(JBIC)が援助(融資)しているタイのサムットプラカン汚水処理プロジェクト問題の続報です。2日のタクシン首相の現地訪問は大きな論議を呼んでいます。4日に首相はラジオ番組に出演し、今回の現地訪問の印象や、今後の対応について述べています。
タクシン首相が汚職の可能性を公式に強調したことで、今後はこの点についても大きな焦点になりそうです。このプロジェクトに70億円もの円借款援助をしながら、適切に対応してこなかった国際協力銀行や外務省の責任も問われることになるでしょう。
以下、タクシン首相のラジオ番組での発言を、5月5日のバンコクポストが報じた内容です。
バンコクポスト、5月5日
タクシン首相は昨日、国家委員会はクロンダンの汚水処理プロジェクトをめぐる論争のポイントを調査することになるだろうと述べた。
この事案は火曜日の閣議で取り上げられる。起こりうる環境影響、引き続きかかる費用、それにプロジェクトの入札に懸念があると、タクシン首相は週に1度のラジオ番組で述べた。
処理場はほとんど完成している。
委員会はプロジェクトが効果的に運営されるのか、処理のための料金はどのように地域住民から徴収されるのか、起こりうる環境影響、それに今後更にどのくらいのお金が必要なのか、といった点を調査することになる。
タクシン首相は、先週木曜日にサムットプラカン県バーンボー郡クロンダン村(タンボン)にある公害防止局のプロジェクト地を訪問した。ソンタヤ科学技術環境大臣や地元選出の上下院議員が首相に同行した。
「私はクロンダンに今まで来たことがありませんでした。魚、カニ、貝やえびなどの海洋生物の豊かさを目のあたりにしました。運河の水はきれいでした」、タクシン首相は話す。
「もし汚水が放出されたら、結果的に運河が汚染されることになるのではと心配しています。たくさんの住民たちが貝や魚やえびを育てていました。住民たちが懸念しているのは、海に放出される50万立方メートルもの処理後の水や、巨大な汚水池です」
「住民たちは、生態システムや住民の生計が影響を受けるのではと恐れています」、タクシン首相は述べた。
住民たちはプロジェクトに反対する請願を行なってきた。処理場は非常に巨大なのに、環境影響評価調査は行なわれなかった。公害防止局は、このプラントは汚水を単に処理するだけなので調査は必要なかったと反論した。
タクシン首相は、「これほどの大規模な汚水処理プロジェクトが自分たちの地域にやってきたことを住民たちは好ましく思っていません」と述べた。
元々は、5箇所の別々の汚水処理場が検討された。それが、用地取得の入札が行なわれた際には、たった1箇所だけが残り、別の地域からの汚水はその1箇所にポンプで送られることになった。
タクシン首相は、地域の住民がどうやったら運営コストを支払う余裕ができるのか懸念していると述べた。
「このプロジェクトは200億バーツ(約600億円)を越える費用がかかり、運営コストも恐らく非常に高いでしょう。国は費用の75パーセントを負担し、残りはアジア開発銀行(ADB)の融資です」とタクシン首相は語った。
「運営コストは非常に高いでしょうから、人々が利用料金を支払うことができるのか心配です」
「海に放出された処理水や処理後の残留物が更なる問題を引き起こすかどうかが懸念の的です」
タクシン首相は、プロジェクトの用地をめぐる入札にも疑念を表明した。最初の入札時には、費用は105億バーツとなっていた。
多くの企業が関心を示したが、最終的にはたった1社の応札しか現れず、その応札封筒は提出された直後には、開封されなかった。
その頃、予算を105億バーツから220億バーツに、2倍以上増やす提案が閣議に挙げられ、承認された。
当局は後になって、応札業者が260億バーツを提示していたことに気がついた。話し合いの結果、220億バーツに落ち着いた。委員会では、こうした入札に関わる問題を調査することになる。
タクシン首相は、こうした根本的な疑問に対する答えが未だに明らかにされていないのに、プロジェクト自体は92.4パーセントが完成していることは残念だと述べた。
「私がサムットプラカンの人々に伝えたいのは、政府は問題を認識しているということです。政府や科学大臣は詳細を調査しなければなりません」、首相はそう語った。
工事にあたっているNPVSGK合同企業体は、Northwest Water International、Prayoonvisava Engineering、Vichitbhan Construction、Si Saeng Kan Yotha、Krung Thon Engineers、それにGateway Developmentから構成されており、1997年に契約を成立させた。