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北タイ農民デモ>農民射殺される

メコン河開発メールサービス6月29日


今年の4月9日と29日に、本メールニュースで、北タイの農民や山岳民族が中心になった大規模なデモの背景と経緯について報告しました。その続報です。

土地・森林や開発プロジェクトの関わる問題の解決を目指した4月の大規模なデモによって、政府は解決に向けた合意をしました。その一方で、経済的な利益を失うことを危惧している人たちによるものと思われる農民への嫌がらせや暴力的な事件が相次いでいます。

先日、ついに農民の1人が射殺される事態になりました。

以下、メコン・ウォッチの飯沼佐代子(チェンマイ在住)の現地報告です。


去る6月23日、北タイで農民が抱える5つの問題の政治的な解決を要求して活動している北タイ小農民連合のメンバーである農民が、射殺されました。

警察は、個人的なトラブルが原因として、きちんと調査をしていません。しかし、北タイ小農民連合のメンバーに対する暴力は、今回が初めてではありません。3月下旬にチェンライ県で農地改革問題に関わる農民リーダーの家に発砲があり(けが人はなし)、6月16日にもチェンマイ県内で農地改革と森林問題に関わっている小農民連合の委員が撃たれてけがをしたばかりです。これらの他にも、運動に関わる農民の出作り小屋が焼き討ちにあい、畑の作物が荒らされたり、果樹が傷つけられる、などの被害が続いています。

小農民連合は、政府との交渉、デモなどの平和的な方法で、問題解決に向けて活動し、政府もその問題の存在を認めて問題解決の委員会が設置され、交渉が始まっています。しかし、その一方で農民や農民リーダーが攻撃され、活動の維持が困難になってきています。

こうしたグループを攻撃しているのは、農民運動によって損害を受ける(不当に得ている利益が減るおそれのある)バンコクなどの投資家やそれと結びついている警察権力だと考えられています。一連の暴力には、機関銃などの一般には手に入りにくい銃器が使用されています。

現在の東南アジアの国の中では、政情が安定しすっかり民主的な国と思われているタイですが、実際にはまださまざまな問題を抱えています。昨年1年間だけで国内で環境問題に関わっていた活動家5人が殺されています。

以下に、今回の問題の背景をお送りしますので、ご一読下さい。なお、今回の事件に対して、現在小農民連合では7月始めに内務省や研究者等を呼んで、会合を持つと共に政府に対し早急な農民の問題解決と農民リーダーの安全確保を求める声明を用意しているところです。

*北タイ小農民連合The Northern Peasants Federation(NPF)とは*

1999年10月農民団体間の協力や団結、統一性を高めるためのコーディネート団体として設立された。農民の問題の根源である政策や構造的なレベルでの変革と、農民が抱える5つの中心的な問題について地域レベルから政策レベルまで問題解決のためのキャンペーンを行う。北タイ農民の5つの問題とは、農地改革、水資源、森林、農民の借金、農産物価格である。

【事件の背景】

3月10日〜4月9日農民・山岳民族団体によるデモ

 チェンマイ県庁舎前で、北タイ農民と山岳民族による農民・山岳民族の問題解決を目指すデモが行われた。デモでは、北タイ小農民連合が掲げる5つの問題に、山岳民族の市民権、住民の酒造権、政府の問題プロジェクトの3つの問題を加えた8項目の問題解決のために、政府との話し合いが行われました。1ヶ月に及ぶ交渉の結果、それぞれの項目毎に一定の合意がなされ、問題解決のための委員会と各項毎の小委員会を設置することを決定。

 この時、農地問題に関しては、1)農民の使用している土地に政府が後から土地権利書を作っている場所の調査、2)外国企業等が99年間借地出来る法律の影響調査、3)土地税への累進化税制の導入、4)農業適地の工業への用途転換の規制、5)農地改革法の見なおし、6)ランプーン県とチェンマイ県で農地問題の起きている23ヶ村で土地再分配のパイロットプロジェクトを行うこと、などが合意されこの合意は閣議決定された。

3月23日農民リーダーへの発砲

 村の公共地を不正に使用していた投資家の問題を、上記デモでの政府との交渉で取り上げたチェンライ県の農民リーダーが、自宅に発砲された。

4月23日農地問題関係者逮捕の許可

 首相の発言と閣議により、特に農地問題に関しては県知事に全権を委任、農地争い(*注)をしている農民逮捕の許可が下りた。

4月29日農民逮捕

 ランプーン県で農地問題に関わっている農民2人を逮捕。

5月21日農民・農民リーダー逮捕

 同じくランプーン県で農地問題に関わる農民6人と活動のリーダー1人を逮捕。逮捕状が出ている農民・活動家は80人に及ぶ。

5月22日農地に被害

 ランプーン県の3村で、農地問題に関わっていた農民の使用している果樹園を、投資家に雇われた村人と警察が襲撃、小屋を焼き、果樹を切り倒すなどの被害を与えた。

6月14・15日農民の小屋焼き討ち

 6月23日に殺されたケーオ氏の小屋2ヶ所が焼き討ちされた。犯人は不明。

6月16日農民リーダーへの発砲

チェンマイ県で、村の共有林での郡役人による違法伐採を指摘し、農地改革に取り組んできた北タイ小農民連合の委員が発砲され軽傷。

6月20日上院議員のランプーン訪問

タイ上院議員住民参加委員会メンバー8名がランプーンの農地問題現場を視察、農民リーダー、NGOと意見交換をした。

6月23日農民射殺

チェンライ県ドイロー副郡において、北タイ小農民連合で活動していたケーオ・ピンパンマー氏が射殺された。犯人は不明。

*注 ランプーン県とチェンマイ県での農地問題

ランプーン県とチェンマイ県の23ヶ村において、投資家が不正に土地証を手に入れたと思われる公共地・農民の土地に対し、農民への再分配を求めている問題。対象農地面積は13,000ライ(1ライ=0.16ha)、関係農民は約3,000人に及ぶ。1996年に最初の2ヶ村、2000年〜2001年にかけて23ヶ村で、資本家が土地証を持っているものの使用されていない土地に農民が入り、果樹などの作付けを始めた。現在は政府に対し、土地証の正当性の調査を行うこと、地域住民の参加の上での農地改革を求めている。

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