メコン河開発メールニュース 2002年9月1日
最近、タイにおける人権侵害のニュースが多く流れています。きょうは、ビルマの民主化を支援しているグループに対するタイ政府の脅迫や嫌がらせについてのニュースです。
軍事政権下のビルマ(ミャンマー)で何が起きているかを知る1つの重要なチャンネルが、今回迫害を受けているタイにいるビルマ民主化支援グループです。例えば、日本が最近ODAの供与をしたバルーチャン第2水力発電所周辺で何が起きているか、あるいは特殊法人の電源開発が調査したサルウィン川の巨大ダム(タサンダム)がどんな環境社会影響を引き起こすか、といった情報は、ビルマからタイ国境に命からがら逃げてきた人たちによって明らかにされています。
その意味では、最近のタイ政府によるビルマ民主化支援グループ弾圧は、看過しえない問題です。以下、タイの英字新聞The Nationの報道です。
2002年8月26日、ネーション
Subhatra Bhumiprabhas記者&Nantiya Tangwisutijit記者
「タクシン政権は自らの政策に反対する人たちを威嚇している」と活動家たちは言う。
タクシン首相のもとで、タイは警察国家になる瀬戸際だと、活動家リーダーたちは昨日警告を発した。
活動家たちは、政権の外交政策に反対する人権グループ、特にビルマ関連の団体に対する政府による迫害をその証拠として挙げた。
「フォーラム・アジア」のソムチャイ・ホムラー事務局長は、自らの団体のスタッフが、先週当局が、タイにいる31人のビルマ人反政府活動家の取り締りを行なったことに対して強く抗議の声を挙げた後、数日間にわたって脅迫電話を受け取ったと語った。
ソムチャイ氏は、誰によるかははっきりしていないが、脅迫は治安当局のために働いている人からのものだと確信している。
ソムチャイ氏は名前を明らかにしていないが、フォーラム・アジアのスタッフが、もしビルマの民主化活動家の逮捕に対して政府を批判し続けるならば、奥さんが危険な目に合うだろうと忠告されたという。同じ人が、このスタッフの自宅に電話をし、奥さんに対して、この夫婦がどこに住んでいるかを知っていることを告げた。
電話の主はまた、フォーラム・アジアが国益を傷つけるようなことを活動課題として抱えていることを非難した。
「タイ政府はこの事件を徹底的に調査すべきである。なぜなら、こうした行為はタイをマレーシアやシンガポールのような(表現の自由や市民運動が抑圧されている)国にしてしまうからだ」
「タクシンはこの2か国の指導者から多くの賞賛を受けているようだ」
ソムチャイ氏は、タイにおける人権侵害は、タクシンが政権についてから悪化していると述べた。
昨年から、6人の活動家や地域の指導者が殺された。理由は政府のプロジェクトに反対しているからのようだ。
それ以外にも当局によって嫌がらせを受けたと思っている人たちは数えきれないほどいる、とソムチャイ氏は言う。
昨日ソムチャイ氏の話の際に、2001年の人権活動家に対する嫌がらせに関する報告について詳細が発表された。
この報告書は、人権グループ、法律家、学生、それに環境保護グループの連合体によって書かれたものである。フォーラム・アジア以外にも、ビルマの民主化を支援するために活動している多くの人権グループもまた、国家権力によって嫌がらせを受けているとソムチャイ氏は語った。例えば、ビルマのシャン州の女性の人権を守る活動をしているグループは、最近政府機関から警告を受けたあと、事務所を閉鎖せざるをえなくなった。
「タクシン首相は人権について理解と敬意を持っている人たちに囲まれているので、彼のリーダーシップがあるうちは、人権活動家としてあまり忙しく活動することはないだろうという最初に持っていた私の思いとは全く違う結果になった。私は間違っていたようだ。状況は、前の政権よりもずっと悪くなっている」とソムチャイ氏は語った。
貧民フォーラムのアドバイザーであるワニダ氏は、タクシン政権で働いている元活動家たちに失望したと話している。
特に、彼女(ワニダ氏)はKriengkamol Laohapairoj氏を非難した。Kriengkamol氏は、タクシン首相の側近だが、1970年代には、政府の権力濫用と貧困層の搾取に抗議してタイ共産党に参加することを宣言した人物である。
「その同じKriengkamol氏が、今日では、政策決定に関して地域社会には権利がないと言っている。彼は、私たちにとって何が最善かを決めるのは政府の仕事だと言っているのだ」
著名な人権活動家であるワニダ氏は、「陰の権力者」による嫌がらせや迫害には慣れっこになっていると話している。
一昔前は、政府に反対する人たちは共産主義者のレッテルを貼られた。今や、「テロリスト」や「麻薬の売人」がそれだ、ワニダ氏はそう語った。