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パクムンダム>政府の委員会が一方的「決定」

メコン河開発メールサービス2002年9月28日


住民運動の力でパクムンダムの水門開放を実現し、再び魚が戻ってきたムン川。今、新たな危機が押し寄せています。場合によっては、住民と政府の衝突につながることも予想されます。是非、注意深く見守って下さい。

以下、メコン・ウォッチ(バンコク)の土井利幸・木口由香の報告と翻訳です。


パクムンダム問題解決への道がまた複雑化の様相を呈しています。

ポンポン・アディレークサン副首相が委員長をつとめる貧民フォーラム問題解決委員会(ポンポン委員会)はこれまで全く機能しておらず、そのため住民の突き上げで、数ヶ月前にチャワリット・ヨンチャイユット副首相が委員長をつとめる貧民フォーラム問題統括解決委員会(チャワリット委員会)が新たに結成されました。パクムンダムの被影響住民たちはこのチャワリット委員会と話し合いを重ねており、またチャワリット委員会は各方面から出された調査結果をまとめる部会まで設けて作業を進行させてきました。

ところが、この作業部会が被影響住民側に同情的な人々で固められていることなどから、これまで幽霊のような存在であったポンポン委員会がにわかに活動を活発化してきました。そして、こともあろうか、政府が委託し一年半の時間をかけて行なわれた地元ウボンラチャタニー大学の調査結果を悪用して、被影響住民欠席の場で一方的に「水門4ヵ月開放」を「決定し」記者発表を行なってしまいました。

ウボン大学の調査については過程の段階で住民側から結果に対する懸念も出されていましたが、結局のところ「5年間の水門開放」を最善の手段として提案している模様です。ところがポンポン委員会はウボン大学の調査が選択肢の一つとして触れている「5ヵ月水門開放」だけを取り上げ、しかもその期間を4ヵ月に短縮して「解決策」として発表したわけです。これでは調査結果を悪用していると言われても仕方がありません。調査を引き合いに出している意味が全くないからです。

こうした動きに対抗するため、被影響住民・貧民フォーラム側は、ウボン大学の調査も含めた全ての調査結果が出そろうのを待って解決策を検討する、つまりポンポン委員会の今回の一方的「決定」を無効にするよう、政府に強く求めています。

以下、こうした状況を新聞記事の翻訳でご紹介します。


政府、パクムンダムの年4ヶ月開放を決定

カオソット紙2002年9月24日(原文タイ語)

9月23日午後2時頃、パクムンダム問題の被影響住民と貧民フォーラムのメンバー約80名は、問題解決の行方を見守るため首相府前に集まった。そして、貧民フォーラム問題解決委員会委員長であるポンポン・アディレークサン副首相に文書を手渡し、パクムンダム問題解決の審議を延期するよう要請した。これは、この日の問題解決委員会の会合に被影響住民や貧民フォーラムの代表が出席していないためであり、また、貧民フォーラムが提起している問題の解決についてはすでに副首相のチャワリット・ヨンチャイユット大将を委員長とし、関係閣僚と貧民フォーラムの代表が出席する貧民フォーラム問題統括解決委員会が存在し、効率的に問題を解決するには関係者が全員協力する必要があるからだ。

貧民フォーラム問題統括解決委員会は、パクムンダム問題に関わる調査の結果を精査する作業部会を設置しており、解決に向けた決定をする際の参考とするため、全ての調査結果をまとめることになっている。現在この部会の作業が進行中であり、予定通りであれば11月中にも作業が完了する。そこでパクムンダム問題に十分な形で解決策を出すためには、この部会の作業が終わるのを待つべきである。首相府前に集結した人々は、政府が明確な解決策を示すまでその場に腰を落ち着ける模様である。

午後6時にはポンポン副首相が会合後の記者会見を行い、この日パクムンダム問題に関してはウボンラチャタニー大学が提出した4つの選択肢について検討が行なわれたと述べた。これらの選択肢とは、(一)年間を通した水門開放、(二)年間を通した水門閉鎖、(三)5ヶ月間の開放、(四)8ヶ月間の開放であるが、会合では(三)の5ヶ月間開放を検討し、議論を重ね妥協点を見出し4ヶ月だけ水門を開放し、魚に対する影響についてはEGAT(タイ発電公社)が漁業局と(解決策を)協議することとした。

ラーシーサライダム問題に関しては、影響を受けた住民に対して1200万バーツ(約3600万円)の補償金を支払うとの結論を出した。これについては航空写真によって権利の有無と、他人の土地と重なり合っていないことを確かめる。ラムタコン揚水発電所については、被影響住民に土地を支給する前に森林局と土地改良事務所の合意が必要であるとした。

記者が、パクムンの件に関して住民は満足すると思うか、と尋ねたところ、ポンポン副首相は、委員会としては理由のある決定を行ったし、理屈の通ることには対処するが、ない袖は振れないのであって、なぜ政府がすでに実行してきたことを理解して感謝せずに、できないことを取り上げて文句を言ってくるのだろうか。これでは仕事をしている方も気分を害する、と語った。

この日の会合に貧民フォーラム代表の出席を許可しなかった点についてもポンポン副首相は、小委員会の段階ですでに貧民フォーラム代表が出席しており、もう一度会合に出席して発言する必要はないので委員会の段階での出席を許可しなかったのだ、と述べた。


パクムンダム問題
委員会、水門開放の影響についての「調査をないがしろに」
住民・NGO側は首相との会談を求める

バンコクポスト紙2002年9月25日(原文英語)

Yuwadee Tunyasiri、Kultida Samabuddhi署名記事

貧民フォーラムは政府に対して、パクムンダム水門開放の影響を調べた大学の調査結果がないがしろにされ、現地住民の要請が無視されている、と非難の声をあげた。

昨日、貧民フォーラムのメンバーは首相府前で、パクムンダムの水門を4ヶ月のみ開放するとの決定に対する抗議行動を行なった。貧民フォーラムによれば、この措置ではウボンラチャタニー県を流れるムン川の破壊された環境を回復することは無理である。

抗議に参加した人々は、ポンポン・アディレークサン副首相を名指しで非難した。ポンポン副首相は、タイ発電公社(EGAT)に有利な決定を下したと住民側が主張する委員会の委員長をつとめている。EGATは、パクムンダムの建設・運転主体である。

「委員会は、住民が提出した水門恒久開放の請願を一顧だにしていない」と貧民フォーラム相談役のNantachote Chairat氏は語った。

また同氏は、ポンポン副首相が一年掛けて水門開放の影響を調べたウボンラチャタニー大学の調査結果をないがしろにした、と語った。

「調査によれば、ムン川を回復させるためには水門を恒久開放するしか手段がないのだ」と同氏は付け加えた。

ポンポン副首相によれば、ウボン大学の調査チームは4つの選択肢を検討した。その選択肢とは、全水門の恒久閉鎖、恒久開放、7月から11月の雨季のみ(5ヵ月)の開放、年間8ヶ月の開放である。

委員会は、地元漁民とEGATの双方が受け入れる妥協点であると信じて、水門の年間4ヶ月開放の決定を下した、とNantachote貧民フォーラム相談役は語った。委員会は、決定を下した会議に同席させるようにと住民と貧民フォーラムが提出していた要請を受け付けなかった。

住民側はこの決定を再検討するよう求めるためタクシン・チナワット首相との会談を要求した。

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