メコン河開発メールニュース 2002年10月21日
10月20日の朝日新聞に「ODAダム 住民参加の仕組みを」と題した社説が掲載されていました。ダムに限らず、開発による環境社会被害を防ぐための1つの重要なポイントが、現地の住民が開発プロセスの初期の段階から、意味ある参加をできるかどうかです。
最近のバンコクポストに、メコン河流域国の住民参加の法的位置付けについて書いた記事がありました。以下、山口健介さん(東京大学大学生)の翻訳です。
バンコクポスト、2002年10月6日
SUPRADIT KANWANICH記者
実施状況は不十分であるが,一般の人々に政治的発言力を与える法律は少なくとも存在している。
大規模プロジェクトにおける住民参加に関する法律はメコン流域国により様々である。
住民参加の権利を保障する多くの法律がある。1997年に制定された憲法が特定しているのは、情報に関する権利(58条)、公聴に関する権利(59条)、環境と資源管理に関するコミュニティーの権利(45条)、環境アセスメントの要件と一体となった適切な環境に暮らす権利(56条)や自然資源の管理・維持・利用に関する地方行政の権利(290条)である。
公聴に関する権利は、環境、健康、生活の質その他の重要な利益を損なう可能性のあるプロジェクトの承認・実施に先立って、すべての市民が国の機関や公営企業から情報や説明を受けることを保障するものである。またすべての市民は関連する法案で規定されているように、公聴の過程で自分の見解を表明する権利を持つ。
環境アセスメントにおける住民参加の権利は、初期環境評価(IEE)、社会影響評価(SIA)、プロジェクトの概略、社会影響調査の監視、予備的・ドラフト環境アセスメント報告書から展開されており、環境アセスメントが終了するまでこの権利は保障される。
環境アセスメントのガイドラインは準備中である。ただし1998年2月のESCAPによる戦略的環境計画(Strategic Environmental Planning)に関する背景説明ペーパーでは、環境アセスメントにおける住民参加の推進の必要性を述べた法令の原案が含まれていた。人々が環境に対して持つ知識・知恵が価値あるものであり、ゆえに人々の環境への関心が政策決定の段階で生かされるべきであるとの認識がESCAPによりしめされた。
環境アセスメントのガイドラインは一般的な原則と手続き、実施段階とプロジェクトのカテゴリー分類を扱ったものである。またアセスメントの各段階は影響の評価、代替案の検討、緩和案の勧告、影響管理の方法の作成を含んでいる。しかしながらガイドラインには初期社会分析(SIA)や公聴の手続きに関する条項は含まれていない。
2000年初めに、ベトナム政府は、住民参加を行ないやすくするために地元のNGOが関与することを認める法令に署名した。
1996年の「水及び水資源に関する法律」は、水資源開発に対する住民立ち退きにあたっては、プロジェクト責任者に対して、そうした住民の適切な住居および生計手段を見つけること、あるいは被害に対して補償することを支援するように求めている。
ESCAPやUNDPの主導によって、ラオスにおける住民参加の様々な位置付けの方法を評価するための研究会やワークショップが実施されてきた。環境アセスメントのガイドラインは明確にされていない。しかしながら新規のナム・ニエップ水力発電プロジェクトでは、環境アセスメントの準備に先んじて、プロジェクト形成の初期段階で、住民参加が推奨された。初期環境評価において、国と地方の2つのレベルにおいて、会議とワークショップが開かれた。そこでは案件の概略が示され、ほとんどの国内政府機関や関係国際機関からのオブザーバーが招かれ、質問およびフィードバックを行う機会が与えられた。
住民参加は国内環境行政において法的フレームワークの一部にはなっていない。しかし、公式非公式を問わず、広範な状況において大規模プロジェクト形成の様々な段階で住民参加は奨励されている。環境アセスメント報告書の適格性については雲南省及び各県の環境行政機関により承認され、公けに発表される。環境アセスメントのシステムは大規模なプロジェクトに対しては確立されはじめている。
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