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中国上流開発>メコン河に災禍をもたらすだろう

メコン河開発メールニュース 2002年11月2日


11月3日、カンボジアの首都プノンペンで、初めての「大メコン圏」首脳会談が開かれます。1992年にアジア開発銀行(ADB)が始めた「大メコン圏地域経済協力」(GMS)が10年を迎えたことから、初めて首脳が集まって会談を行ないます。流域国の住民組織やNGO、メコン・ウォッチなど海外のNGOなどが現在プノンペンに集結しています。その1つのテーマが、中国による上流開発を、「大メコン圏」など地域的な枠組みによって、何とか食い止められないかという難題です。

以下、「大メコン圏」首脳会談を前に、AP通信が配信した長文の背景記事です。


中国のダムと川底の爆破が、大切なメコン河に災禍をもたらすだろう

2002年11月1日
By Denis Gray、Associated Press

プノンペン(カンボジア)発

開発業者らはメコン河を「アジア最後のフロンティア」と宣伝する。別の人たちは、世界で最も自由な流れを残している川の1つに、中国がダムを築き、川底を爆破すれば、この河に生活を支えられている下流の数百万人の人たちへの流れを変えてしまい、環境・社会面での災禍につながると警告している。

「中国の水力発電ダム、航行のための浚渫、それに商業用の過度な船舶航行は、この河を殺してしまうだろう」、スミソニアン熱帯研究所のタイソン・ロバート氏は話す。「ダムは全ての下流国の生活、財産、生命にとって脅威となるだろう」。

中国の中でさえ、批判的な声があがっている。「国際河川においては、いかなる国も自分本意であるべきではない。他の国々や河川全体への影響を考慮すべきである」、ダムが中国国内の地域社会に与える影響を調査してきた研究者であり環境活動家である、Xu Xioangang氏は述べる。

中国当局の言い分は、メコン河の「整形」は下流に最小限の影響しか与えないし、場合によっては利益にすらなるだろう、というものである。ダムは、毎年やってくる洪水やメコン河流域の水不足を緩和する一方で、航路の掘削は、この地域の貿易を推進し、貧困の削減の助けとなるだろう、中国はそう主張している。「メコン河の開発は、関係する全ての国が共同で決定するものである。被害やマイナスの影響は、より多くの人々にとっての便益と比べて、圧倒的に小さいものである」、メコン河問題を担当する雲南省の中国人官吏であるDeng Jiarong氏の弁である。

11月3日にカンボジアの首都プノンペンに、「大メコン圏」の首脳が集まるのを機に、更なる議論とともに、NGOによる抗議行動が予想されている。「大メコン圏」というのは、10年前にスタートした構想で、カンボジア、ベトナム、ラオス、タイ、ビルマ、それに中国雲南省の開発を推進するものである。

この地域のほとんどの人たちは、大博打であり、開発のペースが加速していることを認める。流域には6000万人が暮らしており、大部分の人たちが、収入は低いが自給的な農民や漁民で、メコン河沿いの耕作を支える豊かな堆砂や有り余る魚に依存している。

ブラジルのアマゾン河に次いで、メコン河は世界でも最も生物多様性の高い内陸の河川で、1245種の魚が確認されている。それが、流域の暮らす人々のたんぱく源の80パーセントを供給している。

戦争と地理的な遠隔性が、全長4880キロのメコン河の大部分を孤立させてきた。チベットの高原地帯の源流が発見されたのは、わずかに1994年のことである。タイとラオスの間がつながったのが、メコン河が初めて橋で結ばれた年である。また、1996年に中国はメコン河本流をまたぐ初めてのダムー漫湾ダムが完成した。今や、400億ドル規模の工業・エネルギー・運輸・観光のプロジェクトが、永遠に数百万人の生活、文化それに環境を変えるべくスタートした。

こうした変化は中国だけから来ているわけではない。ダムはすでに、ラオス、タイ、ベトナムの3つの主要なメコン河支流に建設されている。化学肥料や農薬の集中的な使用、都市部からの汚水の垂れ流し、広範な伐採、それに爆薬や非伝統的な方法による漁業などが、いくつかの国で行なわれ、すでにエコシステムを劣化させている。人口圧−流域人口は2025年には1億人に達すると見られる−はますます多くの損失をもたらすことが予想されている。

「メコン河沿いに住む村人一人一人が今では同じことを言うんです。『捕まえられる魚がどんどん少なくなっている』と」、タイにある環境グループであるTERRAで活動しているDavid Hubbel氏はそう語る。

「流域を通して人々に食べ物を与えてくれるのは、水位の上下変動であり、魚の移動なんです」、最近の取材でHubbel氏はそう述べた。雨季の高水位によって、魚が産卵場所に向かって支流を上って行くことができ、乾季の低水位が、河川の沈泥で新たに肥沃さをもらった土地で、村人たちが農業をすることを可能にしている。

多くの専門家が警告しているのは、この漠としたしかしデリケートな年間の周期を、再設計し調整しようとする試みは、災禍をもたらしかねないという点である。中国のダムが、流域の複数国において、今年の深刻な洪水を更に悪くしたのかもしれないと専門家は話している。貯水池が雨で増水したため、中国はいつもより多くの水を、すでにひどい土砂降りに見舞われていたメコン河に放流したのである。死者や、穀物や居住地への広範な被害は、カンボジア、タイ、雲南省、それに流域の他の場所で報告されている。

もう1つ論議を呼んでいるのは、より大型の船舶がメコン河を往来できるように、中国が主導権を握って、メコン河の早瀬、浅瀬、岩礁を爆破するプロジェクトである。すでに始まっている最初のフェーズでは、中国ービルマ国境から300キロほどラオスに入ったあたりまでの浚渫である。中国人官吏のDeng氏は、爆破の影響は短期間であり、ダム建設は下流国の漁業を促進し、水位の平準化で洪水被害を軽減するだろうと語った。

プノンペンに事務局を置く流域管理の権限を持ったメコン河委員会(MRC)が資金提供した評価は、このプロジェクトの環境影響調査を「根本的な誤り」で、調査の結果は単なる「推測」にすぎないと批判した。わずか6か月で完成させた調査は、中国、ラオス、ビルマ、タイの共同専門家グループによって実施された。MRCはオーストラリアのモナシュ環境研究所に評価を依頼した。

爆破プロジェクトを批判する人たちは、水の流れが速まると、河岸の浸食を引き起こし、岩礁の破壊は、魚の主要な生息場所を失わせることになるだろうと述べている。「中国は、メコン河を、生物学的に荒廃させ、汚染し、揚子江や中国の他の川のように干上がらせるだろう」、ワシントンを拠点にする研究所の専門家であるタイソン氏の話である。「中国はメコン河を決して制御できないだろう。それは中国が揚子江を、ヨーロッパがドナウ川を、アメリカがミシシッピ−川を治められないのと同じである」。

下流国の学者や村人による批判にもかかわらず、この地域の政府関係者は、中国に対して押し黙っている。東南アジアの国々は、中国とことを構えたくないのである。しかし、少なくともタイは一時的にメコン河の自国領内の爆破を中断した。

ラオス政府も懐疑的である。在タイ・ラオス国大使館のHiem Phommachanh大使は「数百万のラオス人はメコン河に依存している。人々の生活はメコン河の非常に多くの変化によって影響を受けるであろう」と語っている。

グリーン・ウォーターシェッドという中国のNGOで代表をしているYu氏は、中国はすでに隣国との相談も、下流への影響評価もなく始めているダム建設を止めることはありそうもないと信じている。中国は、雲南省のメコン河に8つ程度のダムのカスケード(連続ダム)を建設するだろう。2番目となる大朝山ダムは完成しており、3番目の小湾ダムが2012年に操業を始める予定である。100階建てに相当する(堤体の)高さを持つ、世界でも最も高いダムとなるはずである。

それ以外に2つのダムについて実施可能性調査が進行中で、更に3つのダムについて議論が行なわれている。Yu氏が言うのは、国内政治と同様に中国にとっては質問の余地がないような水や水力発電へのニーズが、メコン河や他の地域でのダム建設プロジェクトを推進させているということだ。

中国は経済目標に達するために、2020年までに電力生産を毎年5〜6パーセント増加しなければならない。そして、雲南省のように比較的貧しい省を豊かにすることは、中国の「西行」政策、すなわち急激に発展した中国東部と何もない西部地域との間の潜在的に不安定なギャップを埋めるための努力と、密接につながっているのである。

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