メコン河開発メールニュース 2002年11月5日
新聞・テレビで、連日、プノンペンのASEAN関連会合のニュースが報道されていますが、多くはテロや北朝鮮に関するニュースです。しかし、実際には、現地の住民生活にとっては大きな影響を与えるかもしれない合意もなされています。
その1つが、ロンドンのフィナンシャル・タイムズが報じた、メコン6か国が合意した水力発電ダムを前提にした地域的電力市場の創設です。日本が最大の資金供与国となっているアジア開発銀行(ADB)が、メコンのダム開発を一層支援するのではないかと懸念されています。
2002年11月4日
Financial Times (London)
By AMY KAZMIN
メコン河を共有する6か国は、昨日、この地域的送電システムに合意した。このシステムは、生態学的にセンシティブなこの地域における野心的な水力発電開発プログラムの基礎となるだろう。
昨日の(メコン)首脳会談で中国、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、それにビルマの政府が署名した合意では、調印国は、最終的には電力の国際市場を開くことになる。
第1段階として、6か国は地域的な電力貿易のための規則、議定書、それに法的な枠組みを作るための、高級レベル委員会を設置した。プロジェクトを支援しているアジア開発銀行の職員は、これによって地域的な送電網の「概念的」基盤が提供され、非常に必要とされている発電能力への民間投資を魅了する手助けになると考えている。
「とても重要だ、とても広範なものだ」、アジア開発銀行メコン局のラジャット・ナグ局長は言う。「もし水力発電を開発するなら、ラオスのような供給国とタイやベトナムのような需要国がある。この地域で全体的なアプローチをすることはより合理的だ」
しかし、環境グループは、地域的な電力市場の創設は、メコン河流域のダム建設の新たな高まりに向かう最初のステップだと警戒する。それは、4880キロのメコン河やその支流に住む数百万人の、そして大部分は教育を受けていない人々の生活を破壊するだろうと言う。
環境グループは、ラオスのトゥンヒンブンプロジェクトのような初期の段階で作られたダムや、中国のメコン河上流で建設中のダムプロジェクトは、数千人の人々を住んでいた土地から強制的に切り離し、その一方で、この地域の権威主義的な政府は、希望を失った立ち退き住民たちをほとんど助けていない。環境グループは、更なるダム建設の推進は、問題を悪化させるだけだと主張する。
「生態的、社会的な災禍につながるだろう」、国際河川ネットワークの活動家であるAviva Imhof氏は述べる。アジア開発銀行は、「大メコン圏」と呼ばれる国々の政府と緊密に業務を行なっているが、アジアの中でも最も貧しい地域の1つであるこれらの国々にとって、電源開発を優先事項の1つとして焦点を当ててきたのである。
中国はすでに上流域で、ダム建設路線を緒につかせた。1つ目が完成、2つ目がほぼ完成、3つ目が建設中、更にいくつかが数年後を目指して計画されている現状によって、下流のいくつかの隣国を不安に陥らせている。その一方で、ラオスの共産党政権は、タイへ電力を輸出する11億ドルの水力発電プロジェクト(ナムトゥン2ダム)への資金提供確保に希望を託している。