メコン河開発メールニュース 2002年12月2日
昨日もお送りしましたラオスのナムトゥン2ダム計画についてです。事実関係としては前後してしまいますが、今年の10月にラオス政府が営業許可を出し、開発企業体も25年後のラオス政府への譲渡について合意したというニュースをお伝えしておきます。
ナムトゥン2ダムは「東南アジアのバッテリー」と呼ばれるラオスにあって、最大の水力発電ダムプロジェクトです。環境社会影響への配慮や、タイの電力供給過剰下での経済分析などが不充分なまま、見切り発車的に水没予定地の伐採が10年前に始まり、国際的な批判を浴びています。
以下、タイの英字新聞The Nationの記事をメコン・ウォッチの福田健治が翻訳しました。
Supalak Ganjanakhundee署名記事
ザ・ネイション紙
2002年10月4日
ラオス政府は昨日、事業主であるナムトゥン2電力社(NTPC)の営業許可に署名し、議論を呼んでいるナムトゥン2水力発電ダムの実現に向けて一歩踏み出した。タイの電力消費のために発電を行うこのプロジェクトの実施は、経済危機及び環境への懸念などの問題のため、1997年以降遅れが出ている。
昨日締結された協定によって、ナムトゥン2電力社はラオス政府からダムの建設・所有・25年間の操業について許可を取得した。
プロジェクトのディレクターであるMaydom Chanthanasinh氏は、同社は政府に対し25年間で20億米ドル(866億バーツ)の許可料を支払い、その後許可期限が切れた段階でダムを政府に移譲すると語った。
「この協定への署名はプロジェクトの大きな前進であり、投資企業はダム建設費用の準備を整えることができる」と、Maydom氏は電話でのインタビューで述べた。ナムトゥン2電力社はフランス電力公社(35%)、電力発電公社(EGCO)(35%)、ラオス電力公社(25%)及びイタリアン・タイ社(15%)からなる企業連合で、公称の資本金は4億ドルである。
ラオス政府とナムトゥン2電力社は、ビエンチャンから250キロメートル東のナカイ高原に1070メガワットの水力発電ダムを建設する予定で、そのうち995メガワットの電力はタイへと売られる。
タイ発電公社(EGAT)と投資企業は、今年2月に初期買電契約に調印し、最終的な買電契約は11月に署名される、とMaydom氏は述べている。
ナムトゥン2プロジェクトは、大規模な森林伐採を引き起こしナカイ高原から約5000人の人々を立ち退かせたとして多方面から批判を浴びてきた。
1995年、ラオス政府と投資企業は投資額のうち1億ドルへの部分的リスク保証を行なうことで計画を援助するよう世界銀行に求めた。
世界銀行は7月、プロジェクトが援助国・国際援助機関及び環境・社会団体からのより幅広い支援を受けない限り、プロジェクトへの部分的リスク保証の適用を検討しないと発表した。
ラオスへの大口援助機関である世界銀行は、貧困削減と環境保護を目的とする開発の枠組みの中にプロジェクトを位置付けるよう義務付けている。
事業者は、プロジェクトによって地元住民に環境・社会上の便益がもたらされるとしている。
ナムトゥン2電力社の声明によれば、ラオス政府はこのプロジェクトを、内陸国である同国の貧困を削減し、海外からの援助への依存度を減らす重要な試みとして考えている。