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パクムンダム>現地報告ー水門閉鎖から1か月

メコン河開発メールニュース 2002年12月4日


日本政府代表理事の強い支持で世界銀行が融資したタイのパクムンダム。

10年にわたる住民運動が昨年水門を開けさせました。

多くの魚、漁との生活が帰ってきました。

1年4か月後の今年11月4日、漁期を前に水門が突然閉じました。

発電能力の7分の1しか稼働しないダム。

1年4か月の水門開放が証明したのは、魚の豊さと、なくても済んだダムの無用さでした。

永久に水門を開放せよ!

世界各国で署名が集められています。

水門が閉まってから約1か月後の12月1日、この3年余り、パクムンダムで苦しむ人たちのために現地で活動しているメコン・ウォッチの木口由香が、現地を訪問しました。以下は、その現地報告です。


水門の閉まったパクムンダム

by 木口由香

12月1日に現地を訪れたので、その報告です。ダムの水門を閉める際、通告がなかったので、漁具などに大きな被害が出ています。また、水の停滞で水質が悪化し始めたという話もあります。

【ダム周辺】

ダムの写真を撮ろうと出かけましたが、水位上昇でダム周辺は水門が開く前のように外来種の植物(Mimosa Pigra)に覆われ、近づけませんでした。この植物は、メコン河一帯に広がって生態系や人々の生業に悪影響を与えています。とげに覆われている上、種の鞘には細かい毛が生えていて、触れるとかゆみをもよおします。ムン川ではパクムンダムが出来てから、川に沿って中流域まで広がっています。

ダムが閉まってすぐは、ダムの上流部は大漁だったそうです。降下できない魚がたまっていたためと見られています。

【漁】

8月後半から2ヶ月ほど、ウボンラチャタニ県はひどい洪水に見舞われていました。その間、ムン川は非常に流れが早く、地元の漁師さんの小さな船では川に出られないほどでした。この時期はもともと流れが早く、刺し網漁や仕掛け漁は出来ないので、魚を取る人は支流や、水田や氾濫原に入り込む魚を取っています。

これから、漁のシーズンが始まるとき、ダムの水門は閉まりました。

ダムから約30キロ離れたサプーヌア村では、降下する魚を狙ったヂップと呼ばれる網を仕掛ける漁が始まったばかりでした。激しい流れを利用するこの漁は、ダムが水を停滞させているために漁獲が下がっています。この村の漁師さんは水門が閉まって、「漁具は無事だったが、漁の機会を奪われた。生活するのに十分なだけの魚が獲れない」と言っています。

ここから15キロほど下流のカムノックホー村の漁師さんの話では、上流の養殖場で死んだ魚が流れてくるといいます。養殖されているのはテラピアなどで、天然魚とは種類が違うためすぐ分かります。彼はダムの閉まった日、10枚ほど刺し網を失いました。

船を出してみましたが、いくらか延縄が流されていますが誰も漁をしていません。案内をしてくれた人は「ダムが水をためると、魚はどこにいくのか分からないが散ってしまい獲れなくなる」と説明します。本来この時期は、洪水が引いて稲刈りも終わるころなので、多くの人が漁をしに川に集まるのですが・・・。

【川の様子】

支流に船を入れて見ました。乾季には歩いてわたれる小川が、ダムの水で今は満水です。ダムの最高水位海抜108mの指標から水位は1mほど下でした。船は30分ほど上流に上がってセー・フアメオと呼ばれている早瀬まで行きました。岸近くの木にロープでつながれている船は岩に乗り上げていました。ダムの水は急に上下します。夕べ泊めたときには水の上にあったのでしょうが、中の漁具は水に落ちかけて、まるで座礁したかのようです。ここには、近くに水田を所有する人たちがリーと呼ばれる簗(やな)を共同でしかける入会がありました。しかし、ダムが水門を閉めてから魚が取れなくなったので放棄されています。

この小川はこの辺りでは珍しく水が澄んでいるので、小魚がたくさんいるのが見えました。草食の魚が早瀬の岩についたコケを食べていたのです。目視しただけでも6種類はいました。ムンの本流はにごっているので、水中を見る機会はめったにありません。20−30cmの水深の岩場を魚が集まって、コケを食べています。案内の漁師さんは「一度口をつけたところにまた戻ってくる」といいます。

こちらの影に驚いて散った魚は、しばらくすると戻ってきます。見ていると、確かに食べ跡のついているところに、律儀に戻ってくるのです。そこがおいしいのでしょうか?魚たちは岩に30−40度の角度をつけて体を寄せ、コケを食べていきます。時々、腹を見せて泳ぐので、体に日が当たってキラリと光ります。

一度、大きな肉食の魚が水を跳ね上げ飛び込んできて、魚たちは散っていきました。腹を見せて岩の上に跳んで、難を逃れた魚もいます。一瞬でまた跳ねて、岩の上から水の中に戻っていきました。「そうか、だから魚は跳ねるんだ」と妙に納得した次第です。

一緒に見ていた漁師さんは「ダムのできる前、川はこうだったんだ」と、魚を驚かさないように小さな声で言っていました。

この瀬は、ダムが満水になると水没してしまいます。

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