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ラオスのナムトゥン2ダム(当初は690MW、現在の計画では1070MW)は、かつて「東洋のガラパゴス」とまで言われたラオス中部のナカイ高原の450平方キロを水没させる巨大プロジェクトです。
環境社会被害をもたらす巨大ダムから手を引いていたかに見えた世界銀行は、このプロジェクトの支援に一方ならぬ関心を持ち続けました。それに気をよくしたフランスやオーストラリアなどの開発企業体は、資金のあてもないナムトゥン2ダムのために、1994年以来水没地の伐採を急ピッチで行ったため、現地の住民と森との関係は壊されてしまいました。
森との生活を失った住民たちは、森がなくなった以上はダムによる補償頼みで、プロジェクトに賛成をしています。住民が賛成しているのは生活の補償+保障であって、本当はそれはダムでなくともいいのです。しかも、ダム計画の存在が、この地域での住民支援のための他の開発プロジェクトを寄せ付けない原因となっているのは明らかです。
もし、これをもって住民がダムに賛成していると認めてしまえば、ダムを作る資金がないうちから水没予定地を伐採し、被害住民がどうしてもダムによる補償を必要とする状況に追い込めば、ラオスにいくらでも巨大ダムを建設できることになります。
ナムトゥン2ダムは、世界銀行のダム支援への回帰という視点からも、補償を使った「住民が熱烈に賛成するダム」という視点からも、目が離せない計画です。
以下、少し古いニュースですが、ボランティアの和田佳代子さんの翻訳です。
2003年2月25日(午後4時5分)
シンガポール(ダウ・ジョーンズ)--2月25日火曜日、開発企業体メンバーの一人が、ナムトゥン2電力会社はかねてから提案していたラオスでの水力発電所建設を今年末に開始することを望んでいる、と語った。「事を始めるなら乾期が望ましいという暗黙の要望がある。乾期になるのは10月から11月であろうから、そういう意味で今年末の建設が予想される」
彼は「これには建設地へのアクセス道路の建設も含まれるだろう」とつけ加えた。中心となるダム、発電所、調整用ダム建設についての主要な契約はいまだ定められていない。
「(建前上は資金調達が終わるまでは)何も始められない、しかしダム建設は季節的な要素に左右される。私たちは乾期のいつが良い時期なのか見きわめなければならない。」また、「資金調達が終わるのは電力売買に関する合意がまとまってから18か月後になると予想されている。その道のりの長いことを考えると、私たちはそれまで待てないので、それ以前に何らかの事前作業をするつもりでいる。」ナムトゥンダムによって生産される電力のほとんどはタイが買い上げるだろう。
先週、タイ発電公社(EGAT)は、四月にはナムトゥン2電力会社と買電合意を結びたい、と話した。
この合意に基づいて、EGATは995メガワット分の電力を購入し、タイの消費者に送られるだろう。ナムトゥン2から発電された残りの電気は、ラオス国内に供給される予定だ。
建設予定地内や周辺で、不発弾を除去するための準備作業が進行中である。1964年から1974年のインドシナ戦争の際、ラオス領内に200万トンを超える砲弾が落とされた。そしてそのうちの30パーセントはまだ不発のまま残っていると推定される。
ナムトゥン2企業体を率いているのは、12億ドルのこの水力発電プロジェクトの35パーセントのシェアを持っているフランス電力公社である。残りはラオス政府が25パーセント、イタリアン-タイ開発社が15パーセント、エレクトリック・ジェネレイティング社が25パーセントをそれぞれ請け負っている。
ナムトゥン2プロジェクトの発電能力は1070メガワットの予定である。