ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > 昆明上水道事業 > 日本のODAと環境社会影響
雲南省の「昆明市上水道整備事業」は日本のODAで進められています。現地から事業に伴う環境社会面での懸念が伝えられたため、今後、メコン・ウォッチのメールニュースでも取り上げていこうと考えています。まず、この事業の概要や懸念されている環境社会影響について、メコン・ウォッチで雲南を担当している大澤香織が報告します。
*****以下、大澤報告*****
昆明市上水道整備事業は、昆明における水需要に対応するため、日本のODAにより2000年から工事が行われているプロジェクトです。現在約70%まで工事が終了しており、2006年の完成(通水)が見込まれています。
この事業の水源確保のために、1999年12月から市の北約100キロに雲龍ダムの建設が進められています。日本のODA資金の直接的な使途にこのダムの建設は含まれていませんが、水源確保のダム建設が上水道整備事業と不可分である以上、ダムの影響についてもODAを出している側として一定の責任があると考えます。
市には現在、昆明湖から取水をしている2つを含め、合計6つの浄水場があります。しかし湖の水質悪化により昆明湖からの取水が限界に近づいていることから、新たな水源が必要となり、この事業が計画されました。日本からの資金は事業資金の約7割を占め、2000年には約209億円の円借款が承認されています。
2001年9月に発表された雲南省水利水電勘測設計研究員、周云氏のレポートによれば、雲龍ダムによる水没は約20.7平方キロメートル、昆明市禄勧県の二つの郷、鎮におよび、2002年末までには約1万2000人の移転が必要とされています。
この移転に伴い、住民生活への様々な悪影響が懸念されます。例えば、移転地における新たな生活環境に速やかに対応できないこと、再定住地に以前から暮らしていた住民たちとの不和、今もダム区に住んでいる親戚、友人らとの連絡が不便であること、従来は土葬であった埋葬方法を、移転先では火葬へ転換せざるをえないことなどの状況が生まれています。
さらに環境面では、雲龍ダムの下流に位置する雲龍(Yunlong)河と石板(Shiban)河の合流点以降、水質の汚染が深刻であるとの報告もなされています。
メコン・ウォッチではこの事業が日本のODAによって行われたこと、地域社会への重大な影響が懸念されることから、今後もモニタリングをしていく必要があると考えており、今後、現地のニュースなどをお伝えしていこうと思います。