ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ADB>メコン送電網への批判
マニラに本部を置く地域金融機関のアジア開発銀行(ADB)が、メコン河流域のダム開発と送電網に関する膨大な報告書をやっとのことで公表しました。Mekong Grid(メコン送電網)と呼ばれるこの計画、流域国や欧米のNGOからすでに激しい批判が出ています。なお報告書(CD-ROM)はメコン・ウォッチでも閲覧・コピーできます。
以下はアメリカ・バークレーのNGOである国際河川ネットワーク(IRN)が出したプレスリリースです。ボランティアの岩田まりさんが翻訳してくれました。
2003年8月5日
国際河川ネットワーク(IRN)
アジア開発銀行の新しい報告書は、東南アジア大陸部に専ら水力発電でまかなわれる、地域電力送電網の建設を提唱した。ビルマ、中国、ラオスの12のダムが、タイとベトナムの消費者のために発電するよう提案されている。
長い間待たされた報告書は、ADBによって先月公開され、ノルウェーの水力電力コンサルティング会社Norconsult社によって実施されたものであるが、電力発電網の開発と電力の協力についての様々なシナリオを検証している。報告書は430億ドルの発電と送電システムを提案している。とりわけそこには、論争を呼んでいるラオスのナムトゥン2ダム、中国メコン河上流の糯扎渡(Nuozhadu)ダムと景洪(Jinghong)ダム、ミャンマー(ビルマ)のタサンダム、カンボジアのメコン河本流のサンボーダムが含まれている。
カンボジアのNGOであるFisheries Action Coalition TeamのコーディネーターMak Sithirith氏は言う。「ADBの水力発電ダムを建設するという壮大な計画は、メコン河流域の人々に一層の損害と搾取をもたらすだろう。中国とラオスのダムは、川の漁民と水文現象に害を与え、下流に住む何百万もの人々の暮らしを破壊するだろう」
電力送電網は、お粗末な開発プロセスを通じてADBによって進められている。影響住民との協議がない、エネルギー源の選択肢に関する完全な評価がない、更にADBが支援する送電網や水力発電プロジェクトの影響に関する累積的な評価がない、という有様である。
プロジェクトの経済的な見積もりも、また疑わしい。提言されたシナリオは約9億ドルの節約になると見積もっている一方で、Norconsult社は節約分は「相対的に見れば料金の1〜2%程度」にすぎない、つまり送電網の開発は消費者の電気料金に最小の効果しかあげないことを認めている。
国際河川ネットワーク(IRN)のSusanne Wong氏は言う。「このようにぎりぎりの経済的効果しかあげず、しかも多大な害を与えるのに、ADBがこのようなハイリスクな計画を続行しているというのはショックなことです。Norconsult社とADBは1960年代のメンタリティーにはまっており、地域のために唯一実現可能なエネルギーの選択しは、水力と化石燃料だと信じています。再生可能なもの、需要サイド重視のマネジメントや分散型システムといった、より持続可能な選択しを検討することなく、ADBとそのコンサルタントは水力発電を執拗に遂行し続けています」
今後数ヶ月、IRNは他のNGOと共に700ページのマスタープランをより詳細に技術面から検討していく。
(本プレスリリースの英語版はこちら)