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先月中国雲南省の景勝地の大理で開催された第12回大メコン圏地域経済協力閣僚会議に関するニュースの第2弾です。
きのうまでインドネシアのバリで開催されていた一連のASEAN首脳会談をめぐっては、中国とASEANの関係強化が報道されていました。実は中国とASEANを結ぶスキームの1つが、この大メコン圏地域経済協力、なかんずく交通網の整備です。
日本の新聞は、こうした状況に対して「乗り遅れた日本」という側面ばかりを強調しているように感じますが、中国の南下政策がメコン河流域国の人々の生活に与えるマイナスの側面を危惧する声も根強くあります。
以下、South China Morning Postの記事を、ボランティアの栗林健太さんが翻訳して下さいました。
South China Morning Post
2003年9月19日
Allen T. Cheng記者(雲南省大理)
アジア開発銀行(ADB)は4億ドルの貸付けを雲南省に行う。これは中国の南西部がメコン河流域の近隣諸国との関係育成の助けとなる鉄道や道路の建設を目的としたものである。
その内訳は雲南省からミャンマー(ビルマ)まで伸びる西部雲南高速道路(Western Yunnan Expressway)建設に2億5000万ドル、大理と麗江のリゾート地を繋ぐ鉄道建設に1億5000万ドルを拠出するというもの。昨日発表された貸付けを合わせると、ADBはこれまでにのべ10億ドル以上の借款を雲南省に行っていることになる。
ADBのRajat Nagメコン局長は「確かにADBは資金の大半を提供しているが、民間の参加も期待している。国際的な競争入札は大歓迎だ」と語った。
ADBは今週、大メコン圏地域経済協力(通称GMS)に参加する中国、タイ、ベトナム、ミャンマー(ビルマ)、ラオス、カンボジアの6か国閣僚会議を大理で開催した。
この会議では国境を越えた貿易協定を完成させ、本日閉会する見通しだ。6か国の中で最も遅く加わったミャンマー(ビルマ)も、この更なる国境の開放に向けた協定に加わり、税関手続きの簡素化、道路や通信網の整備に努めていくと見られる。
ADBはこれまで10年以上に渡って橋や道路の建設といったインフラ整備計画に30億ドルの融資を行い、6か国の経済関係の強化に努めてきた。そして、メコン地域を一体化する中核的なプロジェクトが、昆明とシンガポールを結ぶ高速道路の建設だ。9億ドルを要したラオスの230キロ部分の完成をもって、早ければ来年末までに開通する予定だ。
タイ国家経済社会開発委員会(NESDB)の上級顧問アーコム・テームピッタヤパイシット(Arkhom Termpittayapaisith)氏は、「閣僚会議では昆明ーシンガポール間の高速道路を移動する製品に関しては通関手続きを一度とするという案が検討された」と話した。
つづけて、テームピッタヤパイシット氏は「通関手続きを一度だけにすることは我々の間での貿易を促進する。その一方で懸念される密売、特に麻薬の密売問題についてももちろん話し合った。この問題は今後我々が取り組んでいかねばならない」と語った。
また、閣僚会議ではメコン地域を訪れる外国人観光客への統一ビザ発給制度の導入が議題に上がった。「このビザはGMSに参加する6か国への入国を可能とし、地域内を自由に旅行できるというものだ」とナグADBメコン局長は話した。
しかし、このビザはGMS参加国の市民が取得することはできない。その理由として、この地域の人々の大半が貧しく、そのため大規模な国家間の移民の発生によりメコン地域の政治、社会的な不安定を生み出す恐れがあることが上げられた。
中国の台頭は今週行われた閣僚会議でも避けられない話題である。例えば、昆明とシンガポールを結ぶ高速道路の開通は、中国を最大とするメコン河流域の国々の経済的な統合がより一層進むことになるだろう。
「中国との一層の経済統合がカンボジアのような小さな国に損害をもたらすという不安はない。もし私が小さな存在でも恐れはしない。中国の求めるものを売るだけだ。そして私は中国から利益を得られる」とカンボジア開発評議会の事務局長、ソック・チェンダ(Sok Chenda)氏は語った。