ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > 対ベトナムODA > こんなに出して大丈夫か?
ベトナム政府は、支援が約束された援助の25〜40パーセントしか執行できていません。この国に対して、今月初め、日本政府は更に917億3800万円(うち円借款は793億3000万円)のODAを供与すると約束しました。財政危機の最中に、です。
ベトナムにこのままの水準でODAを出し続けて大丈夫なのでしょうか?
12月初旬に対ベトナム支援国会合がハノイで開かれました。以下の記事にあるように、日本の服部在ベトナム日本大使は、過去に支援を宣言した援助の支出が進まない状況に対して、その加速化を厳しくベトナム政府に求めたようです。
その一方で、もしこうした忠告によって、準備不足の中でむやみにベトナム政府が援助の執行を行って、大規模なプロジェクトを推進したり、不正が横行したりして、結果として様々な社会問題が生じることも懸念されます。
現在の対ベトナムODAが本当に適正な規模なのか、日本国内でもっと議論が必要なのではないでしょうか。
なお、支援国会合に関する日本の外務省のプレスリリースは
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/15/rls_1203c.html
で読むことができます。この中では、以下の記事にあるようなベトナム政府の援助執行能力の問題には触れられておらず、大規模インフラ推進という日本政府の主張が受け入れられたと誇らしげに書かれています。
AFP
2003年12月3日
国際的なドナー(援助国・機関)は、水曜日(3日)、ベトナムの貧困削減と経済成長努力を手助けするため、004年に28億4000万ドルを支援すると宣言(プレッジ)した。しかし、最大ドナーの日本政府からは、支援が宣言された援助の執行を早めるか、額を減らすかせよという警告を受けた。
世界最大の被援助国の1つであるベトナムへの支援額宣言は、同国への二国間・多国間のドナーが年に一度集まる2日間の会合の最後に行われた。
示された額は、2003年の24億7000万ドルから15パーセント上昇している。しかし、世界銀行ベトナム担当局長のKlausRohland氏は、3億7000万ドルの増加額のうち、1億6000万〜1億8000万ドルは通貨交換レートの変動によるものだと説明した。
EU加盟国は5億2895万ユーロ(6億4000万ドル)の支援を宣言。会合の議長を務めた世界銀行によれば、低利のソフトローンが全体の70パーセントを占め、残りは贈与だった。
東南アジアに対する最大援助国である日本は、過去数年間の海外援助減額の流れにも関わらず、917億4000万円(8億4600万ドル)と2003年の水準を維持した。
しかしながら、服部在ベトナム日本大使は、率直な忠告を行い、もし(援助を約束した)資金の執行のペースが回復しないようであれば、ベトナムへの援助を減らすかもしれないと述べた。
「この点において本質的な改善がなされなければ、日本政府が来年の支援額の宣言を、積極的な姿勢で検討することは難しくなる」、服部大使は記者に述べた。
かつて支援を宣言し支出を待っている累積された資金は、「無駄金であり、無駄な労力である」と服部大使は付け加えた。「このことは、開発プログラムというのはスケジュール通りにいかないことも意味している」。
援助の支出に長い時間がかかることは、ベトナムのドナー社会にとって不満のタネだった。専門家によれば、約束された援助額のうち実際に執行されているのは、わずか25〜40パーセントに過ぎない。
援助国・機関はまた、貧困削減プログラムを加速して行うことをベトナム政府に求める一方、同時に富裕層と貧困層、都市部と農村部で広がっている格差の是正も求めている。
ベトナムにおいて成功した過去10年間の開発協力から、私たちはベトナムの素晴らしい功績を称賛し、自らを称えたくなってしまう」と世界銀行のRohland氏は言う。
しかし高い経済成長は、人口8000万のベトナムにおいて、2300万以上の人々に圧し掛かる貧困を撲滅するには十分ではないだろう、とRohland氏は警告する。
「挑戦しなくてはいけないことは、高い成長を、全ての地域、全ての人々と共有することである」、Rohland氏は付け加えた。
ベトナムの改革の青写真は、包括的貧困削減成長戦略(CPRGS)を中心に動いている。この戦略は、1990年から2000年に達成した貧困層の半減と国内総生産の倍増という離れ業を、2010年までにもう一度起こそうというものである。
援助国・機関はまた、人権面での改善も求めた。火曜日(2日)にはニューヨークに本部があるヒューマン・ライツ・ウォッチがそれを強く求めたものの、ドナーの支援継続と明白に関係づけられなかった。
しかしながら、声明の中でEUは、ベトナム政府の人権面での対応をめぐる懸念を表明し、「人権の推進と擁護は、国の持続的な発展と手を取り合って進めるべきである」と強調した。
アメリカもこうした意見に同調し、「意見の相違をより受け入れ、異なる見解をより受け入れることが、資金を投じる者の信頼を得るためには重要である」と述べた。
援助国・機関はまた、ベトナム政府に対して、蔓延っている汚職に取り組むこと、行政改革や問題を抱える国営企業の再編成を加速化することを求めた。