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カンボジア森林>ゴム植林という伐採禁止の抜け穴
メコン河開発メールニュース 2004年1月6日

「メコン河開発メールニュース」読者の皆様、あけましておめでとうございます。

本年も、皆様からの情報提供等をお待ちしております。情報やご意見は、info@mekongwatch.orgまでお願い致します。

昨年は約80本のメールニュースをお送りしました。今年もタイムリーに、メコン河流域国で起きている開発と環境に関わる問題をお伝えしたいと思います。

2004年の第1号は、今年もカンボジアの森林問題についてのニュースです。以下は、メコン・ウォッチの福田健治による解説と翻訳記事です。

深刻化するカンボジアの森林破壊を食い止めるため、世界銀行等の援助機関は様々な支援を行ってきました。その結果、1990年代半ばから丸太の伐採・輸送は禁止され、新規伐採権も認められていません。伐採権を所有する業者も、森林管理計画提出まで伐採の一時停止を求められています。

こうした森林政策の大きな抜け穴の一つが、ゴム植林です。現在は木材伐採が認められていない伐採権対象地を、ゴム植林のための「土地利用権対象地」に指定し直すことで、「ゴム植林に必要だから」とカンボジア政府が森林伐採を正当化しているのです。

今回の世界熱帯雨林運動会報の記事は、政府が大々的に進めるカンボジア中部コンポントム県でのチュムリン・ゴム植林事業が、森林伐採の隠れ蓑となっている実態を指摘しています。伐採された木材は、日系企業の伐採地を経由して運搬されているという情報もあります。

伐採権の対象地外では伐採を認めないよう、カンボジア政府は世界銀行に約束していました。しかし、世界銀行は最近この抜け穴を認める決定を下してしまっています(次のニュースを参照)。伐採禁止が有効に守られるためには、援助機関の強い関与が必要だというのに。

カンボジア:ゴム植林と森林伐採と汚職と

世界熱帯雨林運動会報(WRM Bulletin)74号

2003年9月

1960年代から、カンボジアはゴム植林地の新規開発と既存植林地の再生を推進してきた。ゴム植林は大規模な土地利用を伴なうため、植林開発のために伝来の土地を失った人々も多く、生計手段を失った人はさらに多い(WRM会報59号を参照)。

2001年8月に設立されたコンポントム県サンダン郡チュムリン集合村のチュップゴム植林社は、6200ヘクタールの豊かな赤色土の土地を開発する予定だ。同社の副社長であるIn Horn氏は、「この事業はColeximとMieng Ly Hengという伐採企業のおかげです」と語っている。

しかし、植林地は境界を越え周囲の森林まで深く侵入している。実際に植林地の境界の外で皆伐が行われていることに気づいたのは、カンボジアで以前公式の伐採監視団を務めていたロンドンに本拠を置くGlobal Witnessの伐採監視員MarcusHardtke氏と前カンボジア代表Eva GalaPu氏だ。樹脂が取れる木の切り株を植林地の境界から550メートルも離れた場所で発見したため、二人はこの地域の調査を行うことに決めた。長い距離を歩き、日が暮れるまで皆伐地から牛車の跡、さらに重機の轍をもたどっていくと、二人はつい最近切られた伐採地を次々と発見した。20近くの切り株が残されており、ほとんどが火と樹液とで真っ黒になっていた。切られた樹脂の木の多くは、「トゥムアー精霊の森」の中で見つかった。

村人は、精霊の森で木を切ると病気になったり死人も出ると信じていた。村人は森林局事務所の役人が伐採ビジネスに関与しているはずだと言い、違法伐採を森林局事務所に報告するのを止めてしまっている。

伐採された木は、元々地元住民の主な収入源だった樹脂を産出していた。チャンでは、チュムリン集合村ロンター村のある住民が、樹脂の木が切られたことに腹を立てていた。彼によれば、彼の家族は木が切られる4,5年前まで、生計を樹脂の木に頼っていたという。樹脂採集者たちは、環境上持続可能な形で樹脂を生産できるよう木を守ることで、森林の保護に一役買っていた。しかし今や樹脂の木は伐採され、また他の例では村人は樹脂の木を売却するよう強要されている。

Hardtke氏とGalaPu氏は、伐採企業は植林地の境界の外で少なくとも15〜20ヘクタールの皆伐を行ったと見積もっている。この地帯は最近2ヶ月に伐採された。

カンボジアの森林法制上、村人が樹脂を集めるために傷をつけている木を伐採することは禁じられているが、これには一般的な抜け穴がある。伐採しようとする土地を、ゴム植林もその対象地となりうる「土地利用権対象地」と呼ぶことだ。

このようにして、(伐採企業と植林企業という)2つの業種が相互に補完することができる。(森林を土地利用権対象地とすることで、)インドシナでも豊かな低地常緑林をゴム林に転換することを合法化できるのだ。

6月30日に、伐採制度改革に取り組んできた援助国・機関の代表者たちからなる「自然資源管理ワーキンググループ」は農林水産大臣に手紙を送り、チュムリンの開発を「問題だ(troubling)」と指摘した。手紙は次のように述べている。

事前に十分な分析が行われなかったため、「再植林の前に土地開墾が行われ、広い面積が剥き出しとなり、浸食にさらされている。コミュニティは移住させられ、旧来からの生計手段を失った。(中略)他にも問題があり(中略)これらの問題はチュムリン開発という事業の実現性に疑問を投げかけていると考えている」。

さらに手紙には、「違法かつ規制されていない丸太の出荷が行われており、チュムリン及び周辺地域からも出荷されている」と記している。

森林局長のTy Sokhun氏は、丸太が輸送されたことを否定し、開墾の責任を農民に押し付けようとしている。皆伐について聞かれたIn Horn副社長は、この事業があまりに大規模であり、チュムリンで起きていること全てを把握することは困難だと説明した。「とは言うものの、あまりに多くのことを知る立場にないのだ」と彼は言う。

しかし、企業は無知なだけとは言えないだろう。首相一族とのつながりは、汚職事件の存在を意味している。地元の情報源によれば、2003年2月19日付けの森林野生生物局の文書にSeng Keang氏の名前が、チュムリンで没収された違法伐採木材の所有者として記されている。Seng Keang氏はDy Choch氏の妻であり、DyChoch氏はHun Choch氏としてより広く知られており、フンセン首相の従兄弟であり、またコンポントム県の憲兵隊の指令官であるDy Phen氏の兄弟である。またSeng Keang氏の兄弟であるKok Heang氏は、「ミスター95」として知られており、以前は伐採権所有者であるMieng Ly Heng社の下請けであった。彼はチュムリンで人々を脅していた有力者である。

カンボジア王国政府が同様のゴム植林プロジェクトをさらに3つの県で開発するつもりであるとの兆候がある。

この種の事業のチュムリンやカンボジアの開発への貢献は極めて疑わしい。事業に連なる既得権益を有する人々が木材から利益を得ていることは疑いようもないが、環境調査は行われず、森林資産に関する住民との協議や概要説明も行われていない。伐採と銃と汚職は、多くの場所で手を取り合って活躍している。そして今やカンボジアでは、「ゴム植林」もこのチームに加わったようである。

この記事は以下の新聞記事の情報に基づく。

"Borders Unclear at K Thom Rubber Plantation", by Porter Barron, The Cambodia Daily, September 2, 2003.

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