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カンボジア森林>世界銀行が伐採の抜け穴承認へ
メコン河開発メールニュース 2004年1月7日

今年第1号のメコン河開発メールニュースでお送りしました「カンボジア森林>ゴム植林という伐採禁止の抜け穴」の続編です。以下は、カンボジアの森林セクターへの世界銀行の関与について、メコン・ウォッチの杉田玲奈の解説です。

世界銀行を始めとする援助国・機関は、違法伐採や汚職疑惑が絶えないカンボジアの森林セクターを改革するために取り組みを行ってきました。そのひとつは2000年に契約された世界銀行の構造調整融資に様々な条件を付け、この条件をカンボジア政府が満たすまで、その第2次支払いを行わないというものでした。

第2次支払いの条件のひとつは「森林伐採権のレビュー実施とその結果に基づく必要な措置をとること」でした。(カンボジアの森林部はいくつかの地域に区分されており、その森林伐採権は現在14の企業が所有しています。)また、この条件に関連して、(a)「適切に履行されていない」契約を解消すること、(b) 森林伐採権所有者に対し世界銀行の基準を満たす業務内容の再編成プログラムの提出を課すこと、(c) 森林伐採権管理に関する政令のなかで定められた範囲、規則、手続きを逸脱する、いかなる新規契約締結も認めないことがカンボジア政府に要求されていました。

このように世界銀行は、主に「森林伐採権制度」を通じた違法伐採の取り締まり、及び、林業運営・森林管理への取り組みを推進してきました。世界銀行は今まで1500万ドルの支払いを3度保留してきましたが、2003年12月末に条件が満たされたとして第2次支払いを決定しました。

現地のNGOはこれらの条件が満たされたという世界銀行の見解を批判してきました。特にNGOが問題としたのが、カンボジア政府が現在伐採が認められていない伐採権対象地を、「土地利用権」対象地に指定し直すことなどで、企業による大規模伐採の継続を可能にしていることです(前のメールニュース「カンボジア森林>ゴム植林という伐採禁止の抜け穴」参照)。これは明らかに上記の条件(c)の不履行であります。

しかし、今回の世界銀行の決定は、カンボジアのガバナンス及び森林セクターに深刻な問題が残っていることを認識しながらも、世界銀行が課した条件は土地利用権とは関係ないという、実質上「抜け道」を容認するものでした。このように、カンボジア政府と企業が手を取り合って森林伐採を進め、援助国・団体がそれを傍観し、正当化し、さらに金銭的にサポートし続けるならば、カンボジアの森林が消滅するのはそう遠い将来ではないのではないでしょうか。

この問題を報じたカンボジアの英字新聞の記事を、メコン・ウォッチボランティアの山田真司さんが翻訳しました。

NGOら、世界銀行の森林融資を非難

2003年12月16日

POTER BARRON, THE CAMBODIA DAILY

世界銀行は1500万ドルの融資の支払いを検討している。その支払いがなされるかどうかは、これまで18か月の間、カンボジア政府が林業改革の条件を満たすかどうかにかかっていたが、その条件は満たされてきていないという意見がある。

1500万ドルは、世界銀行による3000万ドルの構造調整融資(SAC)のうちの第ニ次支払い分である。最初の支払いは、契約がなされた2000年2月に行なわれた。

国際金融機関である世界銀行は、構造調整融資契約の中でも「カンボジアにとって開発を進める上で最も重要な資源」と言及されている森林が、違法伐採によって減少していることを認めた上で、前進もあったことを忘れてはならない、と主張している。

他方、一部のNGO代表らは、世界銀行による評価は不誠実であるか、もしくは根拠がないかのどちらかである、とみなしてきた。

この貸付金が支払われるかどうかは、ワシントンにいる世界銀行理事たち次第である。シンガポール駐在の世界銀行職員、Peter Stephens氏は、理事会がその問題をめぐっての会議を招集する予定はないが、もし水曜日(12月17日)までにどの理事も支払いに反対しなければ、実行に移されるであろう、と先週語っている。

木曜日に世界銀行宛てにEメールで出した質問に対する回答を、ワシントンの世界銀行職員、Melissa Fossberg氏から日曜日、受け取った。国別担当局長のIanPorter氏の話では、この回答は週末の間に、世界銀行のチームによってまとめられたということだ。

世界銀行のEメールによると、「政府は、現在の(森林)伐採権譲渡契約の履行状況の見直し作業を実施することを確約し、その結果にもとづき、カンボジア国内法と現在の契約の範囲内で行動をおこす予定である」とのことである。

それらの行動には、「適切に履行されていない」契約を解消すること、伐採権保有者に対し業務内容の再編成プログラムの提出を要求すること、および「森林伐採権管理に関する政令のなかで定められた範囲、規則、手続を逸脱する、いかなる新規契約締結」も認めないことが含まれる、とEメールは伝える。

さらにEメールには、政府は2000年に40の森林伐採権契約の見直し作業を終えた、とある。

その結果として、25の「適切に履行されていない契約」を打ち切ることとなった。

残る15の企業は伐採権契約の再編計画を起草し、政府はそれらの計画の評価をもとにして、さらに7つの契約廃止に乗り出した、ともEメールに記されている。

その上で、「明らかに適切に履行されていない、400万ヘクタール近い伐採権契約を取り消したことは、無視あるいは軽視してはならない成果である」と続けている。

「Granted Atlantic Timber社だけは例外ということはありえますが、いずれにせよ、その他の全ての伐採権契約は、単に経済的に見込みがないために取り消されたといってよいと思います。木材が残っていなかっただけの話なのです」と、ロンドンに本部を置くNGO、グローバル・ウィットネスのコーディネーターのMike Davis氏は主張した。

契約内容の再編という条件に関しても、議論がなされている。アジア開発銀行(ADB)は、前述した伐採権契約の見直し作業に資金供与し、その結果、伐採権システムに重大な欠陥があることが判明した。

そのためADBは、伐採権保有者はしっかりとした管理計画を作成し、政府と再交渉して、新たに契約し直すことを勧告した。

伐採業者は2001年9月30日までにこれを実行に移すか、さもなければ契約を失うことに同意したと、森林野生生物局のTy Sokun局長、ならびに当時のカンボジア材木業連合議長Henry Kong氏によって署名された2000年10月18日付の手紙に記されている。この手紙は、森林伐採権管理に関する合同作業グループで、当時調整役を務めていた、Andrew MacNaughton氏によって書かれた。

しかし、新たな契約は全く調印されなかった。現在のすべての契約が取り消されたわけではないのにもかかわらずである。

世界銀行はEメールで、「契約交渉は、伐採権契約の再編とは異なることに注意することが重要である」と述べた。

NGO ForumのAndrew Cock氏は「もし伐採権契約が再編されれば、伐採許可料が変更されて、投資体制が見直され、伐採可能区域が変わり、コミュニティ・フォレスト(地域共有林)の区域が線引きされることなどを意味する。それゆえ、契約を修正もしくは『再交渉』する必要が、必ずや生じるであろう」と意見を異にする。

Cock氏はEメールを書いて、「世界銀行の返答は言い逃れであり、再交渉・契約更新が行われなかったか、あるいはもし行われていたとしても、契約が公共の利益に寄与することを保証するために不可欠である透明性を欠いてなされたことを示すものである」と記した。

世界銀行は、伐採権をいまなお保持する15の企業から出された管理計画は、現在、政府による見直しに向けて改定中である、と続けて主張している。

グローバル・ウィットネスのDavis氏は、もしも(世界銀行の言う)なんらかの伐採権契約再編のプロセスが存在するとすれば、静かに、透明性を確保せずに行なわれている、と金曜日(12月12日)に語った。

「新規伐採権」の発行を禁止する条件について、世界銀行は声明のなかで、発行は一切なかった、と断言した。その上で、世界銀行は懸念の挙がった「土地利用権契約」をいくつか列挙したが、それらは構造調整融資が2000年に合意される前に与えられたものだったと述べた。

列挙された中にGreen Sea社があった。世界銀行は、Green Sea社の契約は1998年に与えられた、と話した。しかし、農林省のある文書には、Green Sea社はストゥントレン県の10万852ヘクタールの土地にチークを植えるために、2001年の10月にその契約を結んだ、とあったのだ。

現地の世界銀行職員、Bill Magrath氏は、世界銀行の日付が誤っていると認め、月曜日(12月15日)に手違いの責任をとった。

伐採権保有者は、自らの事業を単に「土地利用権契約」といった別の呼び方をするだけで政府の承認を得て、伐採を続け、そのことがしばしば環境保護論者の苦情の的となってきた。

Green Sea社についてDavis氏は、「この土地利用権地域は森林地に位置しており、木材伐採権の別名にすぎない。さらに、その一部はMacro-Panin社によって所有されていた、以前の森林伐採権地域と重なっている」と記した。

したがって、「この(Green Sea社との)契約は、森林伐採権管理に関する政令に反し、それゆえ構造調整融資に組み入れられている条件にも反するのみならず、1万ヘクタール以上の伐採許可を授けることはできないと規定する土地法にも反するものだ」とDavis氏は書いている。

森林伐採権管理に関する政令5.4条には「廃止もしくは権利が譲渡されたすべての森林伐採権地域は自然林保護区域とし、また、管理林はいかなる別の企業にも譲ってはならないとする」とある。

グローバル・ウィットネスの調査員、Marcus Hardtke氏も同様に、世界銀行はカンボジア政府の森林伐採を正当化する路線を採用しているとして批判している。

「世界銀行の伐採権譲渡事業が役に立たないことを示す、もう1つの例である」と。

さらにHardtke氏は、カンボジアにおける違法伐採は、契約が終了しているか否かにかかわらず、あらゆる森林伐採権地域、および全ての保護区域で行われている、と月曜日(12月15日)に述べた。

世界銀行はほとんどのカンボジア人に利益をもたらさない広範な違法伐採と、条件付きの融資の支払いをどうやって折り合いをつけるつもりなのか、と月曜日に電話で尋ねられて、Porter氏は、世界銀行は構造調整融資プログラムの実施をモニタリングし、一定の条件は満たされたと感じている、と述べた。

「このことは、大きな問題が存在していることを、我々が認識していないということでは決してない」と彼は付け加える。

世界銀行の職員はまた、カンボジア政府が最近SGS(スイスに本部をおく民間検査会社(Societe Generale de Surveillance))を雇用したことを、構造調整融資の条件―すなわちカンボジア政府が森林監視の職を常に補充しなければならないという条件―の充足と示している。4月にフンセン首相がグローバル・ウィットネスを解雇して以来この職がずっと空席で、SGSの業務が完全には執行されていないにもかかわらず、である。

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